父と娘の物語であり作家の物語でもあり 朝井まかて「阿蘭陀西鶴」

原田マハ「太陽の棘」「キネマの神様」と一緒に、予備知識なしで本屋さんの店頭でみつけて買った朝井まかての「阿蘭陀西鶴」。 ふだん、まったく時代小説は読まないのですが、帯の「父娘小説」にひかれました。 それに、すっかり忘れていたけれど、朝井まかてといえば直木賞受賞作「恋歌」が思いの外、好みに合っていた(特に文章や表現)と思い出したのでした。

「キネマの神様」と「阿蘭陀西鶴」、はからずも連続して父娘小説を読んだワタシ。 どんだけ父親への葛藤を抱えているのか…(笑)。

10.08阿蘭陀西鶴


主人公のおあいは井原西鶴の娘。 幼い頃に視力を失ったが、母親にしっかり仕込まれて、料理が得意で家事はなんでも自分でこなせる、しっかり者だ。 母亡き後、俳諧師で勝手気ままな父親との二人暮らしでは、やることなすこと無神経な(と娘には思える)父親に対して強い反発を感じてばかり。 ある日、西鶴は強引におあいを淡路島への旅に連れだし、それまでになかった「ものがたり」を書き始める。 旅先で、おあいはずっと毛嫌いしてきた父親の別の一面に気づき…。

まったく期待せずに読み始めたけれど、おもしろかった! 

時代小説にも江戸時代にも西鶴にもまったく関心のないワタシでも、ひさしぶりに読む楽しみを味わえた小説でした。 朝井まかての文章が心地いいんです。 最近の小説ってストーリーの動かし方ばかりに腐心して、どうにも味わいに欠けているから文章を読む楽しさがなんですよ。 朝井まかては何気ない書き方みたいで、じっくり練って書いていると感じます。

とはいえ、実はこの小説、つかみはバッチリ!とはいかず、冒頭の「巻二」までは父親に対してやたらに不機嫌な娘の態度にモヤモヤ←自分のことは棚に上げて(汗)。 料理のシーンが多くて「ひょっとして、この小説はいま流行の美味しい手料理が売りものの”小川糸”系なのか?」と初めはなかなか小説に入りこめず。 淡路島へでかけたあたりから、西鶴の物書きとしての人生が動き始めてぐいぐいひきこまれました。

父娘の葛藤と和解の物語であり、西鶴が日本初の「小説家」となるまでの苦闘の物語であり、書くことにとりつかれた者の業を描いた物語でもあり。 いろいろな読み方ができる小説でした。

10.08秋海棠

西鶴って歴史的に高く評価されているけど、どういう意味で?とまるでわかっていなかったのですが、ようやく理解できました。 それにしても版元は売れれば儲かるけど、作者は買取原稿だから売れてもちっとも儲からなかったのね(浮世絵師もたぶん同じ)。 現代の編集プロダクションと同じシステムなんだなあ。

西鶴には盲目の娘が一人いたということしか記録に残っていないらしいのに、これだけの物語にできる想像力と創造力はすごいと思います。 それも、主人公が盲目だから情景描写がないのに、全然そう感じさせない筆力がすごい。 時代小説は苦手なんだけど、まかてさんのはまた読みたい。


夏に読んで感想を書きかけたまま放置していたのを、ようやく最後までかけてやれやれ。 ノーベル文学賞をとったカズオ・イシグロのことも書きたいけど、それはまた今度に。


Category: 朝井まかて

かわいいにもほどがある!? 「岩合光昭×ねこ旅」

ネット書店「honto」でおすすめされて、つい買ってしまいました「岩合光昭×ねこ旅」。 表紙の猫ちゃんがあまりにもかわいくて目が釘づけに。 目がすごくきれいで、おちょぼ口。 この子、ほんとうにかわいい。

3.6ねこ旅

中身も期待以上! 思っていた以上にたっぷり写真があって、見応えあります。 文庫本だと小さすぎるんだけど、この真四角の本の大きさが大きすぎず小さすぎずでちょうどいい。 これなら本を手にもって、猫みたいにごろんと寝転んでだらんとしながら眺めたりもできる。 満足しました。 岩合さんが撮る猫の写真は、猫がかわいくて(猫への愛情が画面からあふれてでてくる)、さらにその場の雰囲気や街の空気も伝わってきて(プロの写真家として冷静にきっちり計算された切り取り方)、猫の写真なのに不思議に旅情をそそられます。

眺めては一人でニコニコ。 父もつくづく眺めては何かぶつぶつ独り言いいながらニヤニヤしてましたよ(笑)。 理屈抜きに和みます。 家族3人が一番目にするところに飾って、みんなで表紙の猫ちゃんを眺めています。


本と一緒に写っているのは、郵便局で衝動買いした岩合さんのファイル。 ATMを待っている間にみつけてしまいました。 最近、仕事で紙類を持ち歩くことがずいぶん減ったけど、使おう♪ どんだけ猫好き…実は犬派なんだけど!(笑) でも、写真に撮ってかわいいのは猫だと思います。 犬は断然、個性のある雑種が好き。 でも、雑種の犬ってみかけなくなったなあ。


3.6ハコベ

植木鉢の中に芽吹いたハコベ。 まだまだ寒い日もあるのに健気に小さな小さな白い花を咲かせていて、抜けません。


今日、花粉症で耳鼻科へ行ったら、女医さんがつくづく「お兄さんのこととか、胸の病気のこととか、バセドウ病とか、あなたはずっと長い間本当にいろいろあったけど、元通りに元気になったわねえ。 今日はすごく肌の色つやがいいもの。 抗がん剤治療もしたのに髪の毛だってすっかり元通りで、ずいぶん伸びるのが早いんじゃんじゃない? 本当によかったわ」と言ってくださって、ちょっと泣きそうになった。 先生、ありがとう。

明日はひさびさにバセドウ病の通院日。 お正月に大好きな昆布系のものをつい食べてしまい、食べるとまた食べたくなって、たまーに昆布入りのだしを使ったりしてしまい…。 甲状腺ホルモンに影響ないといいんだけど。

■いろいろな記事に拍手をありがとうございます。

小鳥のように生きてもいいじゃない 小川洋子「ことり」

単行本を買おうかどうしようか、さんざん迷って買わなかった小川洋子の「ことり」が文庫本になっているのを本屋さんみつけて即購入しました。 

小川洋子の小説にしては珍しく設定はかなり普通。 先日感想を書いた「羊と鋼の森」同様に(あるいはそれ以上に)とても地味でほとんど起伏のない話なのですが、”生きる”ということに真正面から取り組んでいる点で、これはまぎれもなく文学。 読んだ後にじわじわといろんな感情が湧きでてきて、人生について深く考えさせられました。 「羊と鋼の森」はこの本の直後に読んだため、よけいに物足りなく感じたのかもしれません。

7.6小川洋子ことり

古い一軒家で孤独死しているのを発見された初老の男は、近所の子どもたちに「ことりのおじさん」と呼ばれていた。 ほとんど誰とも関わらずに一人で生きていた「おじさん」の人生とはいったいどんなものだったのか--。 愛情深い母親さえも理解できない謎の「ポーポー語」をある日突然話し始めた兄と、その兄の言葉を唯一理解できた弟。 小鳥を愛し、小鳥の言葉がわかる(と弟の目には映る)兄を弟は子どもの頃から大切に思い敬愛していた。 両親亡き後、兄との生活を支えるために弟は地味な仕事に就き、二人きりでひっそりと暮らし続けていた。 やがて兄が亡くなり、一人になったおじさんは…。 芸術選奨文部科学省賞受賞作品。

単純化していえば、障害者の兄とそれを一人で支え続ける弟=中年の兄弟の話であり、後半は孤独な初老の男に降りかかる理不尽な苦難や、他人とのごくごくかすかなふれあいの話です。 華々しいことなど一切なく、誰からもほとんど顧みられることもなく、何かを達成することもない一生。 世間の片隅で静かに生きて、一人静かに世を去った「ことりのおじさん」。 端から見れば、お兄さんは障害者施設に託して、弟は自分の人生を歩むべきと思われる状況ながら、兄との静かな生活を守ることが弟にとっては人生の第一義で、そのことにみじんの疑いも感じていない。

もどかしいほど受動的な生き方。 他人の目には何もいいことがないようにみえる「おじさん」の人生だけれども、本人は決して不幸ではなかった。 閉じた生活、昨日と今日と明日に何の変化もない単調な毎日を重ねていく、そのことに充足していて、人生にたくさんのものを求めていない。 そういう人生は無意味なのでしょうか?

7.31雷雲とツバメ

著者はおじさんの人生を小鳥の生き方に重ねていると感じました。 6月20日の「”いま”を生きる」で書いたように、人間も小鳥や動物のように”いま”という瞬間を積み重ねるようにして生きたっていいんじゃないかと思っていたところだったので、あまりにも自分に考えていたことに似たテーマだったことにちょっと驚いたりもして。 「ことりのおじさん」に優しく寄り添いつつも、修飾語などをあまり盛りこまずに淡々とした筆致で語られる人生に引きこまれ、たいした事件もないのに一気に読み終わりました。

「あなたはラストに必ず涙する」みたいな本が好きな人にはおすすめできませんが、安直でない、こんな小説もたまにはいいんじゃないでしょうか。


バセドウと乳腺の経過観察で週に2日も通院したり、その間に特急仕事が食いこんだり、兄の事件を思い出させるような陰惨な事件があって、ものすごく嫌な気分になったりして、先週はなかなかブログを書く時間も気持ちもありませんでした。 やっと落ち着いたので、ようやく読書記録をアップ。 他にも読了した本があるんだけれど、それはまたそのうちに。

Category: 小川洋子

維新前夜の激烈な日々 朝井まかて「恋歌」

何者」がピンとこなかったのに、またまた直木賞受賞作が文庫本化されているのをみつけて買ってしまいました。 年末に読み終わっていたけれど、年始にはあまりふさわしくないように思えて、感想のアップが今頃に。

朝井まかてという作者の名前も知らず、維新直前の水戸藩にもまったく興味なし。 ふだん時代小説をあまり読まないのに、それでも手にとったのは樋口一葉の師、中島歌子のことをついて最近テレビでちらっとみたから。 水戸藩の攘夷派の奥さんだった人が、維新後に歌人として華々しく活躍したのがとても意外で。

12.22恋歌

幕末の江戸、裕福な宿屋の娘・登世(のちの中島歌子)は、宿に出入りしていた水戸藩士=尊王攘夷の志士、林以徳(もちのり)に一目惚れし、ついに家柄の違いを乗り越えて林家に嫁ぐ。 しかし、水戸藩内の厳しい掟にしばられ、動乱の時代では夫と顔を合わせることもほとんどない。 やがて、登世は藩内の主導権争いに巻きこまれて、藩の牢獄につながれ…。

和歌が恋のきっかけになり、やがて歌人として成功した人が主人公と知って、和歌が苦手な私は店頭で買うかどうかずいぶん悩みました。 和歌が苦手な人、安心してください、和歌はほとんどでてきませんから。 題名からべたべたな恋物語かと想像したのですが、甘い恋は冒頭のみ。 実は、水戸藩の血で血を洗う凄惨なお家騒動が中心なのです。 水戸藩の内紛、知っていた以上に怖かった。 恋の話の間はそれほどおもしろいと思わなかったけれど、恐ろしい運命にさらされる登世から目が離せなくなって、後半は一気読みでした。

1.20雪化粧

時代小説独特のなんだか堅苦しい語り口ではなく、現代人が違和感なく読める文章が時代小説としてはとても新鮮でした。 しっかり練って書かれた文章、なぜ歌子が自分の前半生を書き記したのかという謎を提示した構成、そして壮絶な話でありながら読後感の良さがあって、さすが直木賞受賞作。 あまり歴史小説や時代小説を読まない人の方がいっそう楽しめるかも。 とても読みやすいですよ(内容はハードだけど)。

1.20白椿に雪


月曜日からバセドウ病の薬メルカゾールを飲み始めて4日目。 いまのところ、副作用の皮膚のかゆみや発熱はなし。 薬が効いている感じもいまのところなし。 心臓がバクバクして寝にくいです。

仕事の締め切りが迫っているのに、気分転換と自分に言い訳して(笑)美容院へ行ってきました。 薬の副作用でひょっとして皮膚が敏感になっているかもと思いつつも、カラーリング・ヘッドスパ・トリートメントまでしちゃいました。 髪の毛がさっぱりして、さ、仕事がんばろう…明日から(汗)。

美容院で鏡に映る自分の姿を眺めながら、1年前には赤ちゃんの産毛みたいだった髪の毛がこんなに普通になるなんて思いもしなかったなあと、思わずウルッとなりそうになりました。


■たくさんの拍手をありがとうございます。 薬の効果がまだでてきていないからか、別に普通。 集中力が欠如しているのを薬のせいにしてはいけませんね。
Category: 朝井まかて

年のせいなのか? 朝井リョウ「何者」

デビュー作から話題になって映画化までされた朝井リョウ。 まだ若いのに直木賞までとったのだから、よほどすごいのかもと気になっていました。 結構早く文庫化されているのを発見して迷わず購入しました。

12.5何者

過酷な就活に挑む男女の学生6人の群像劇。 みんなで傾向と対策を練ってエントリーシートを添削し合ったりしつつ、それぞれが内定を目指すが、なかなか就職先が決まらない。 焦りが募る中、口には出さないお互いの本音がツィッターを通してあぶりだされてくる…。

うーん、おばさんだからでしょうか、この小説世界にまったくもって共感できないまま読み終わってしまいました。 就活であまりにも落ち続けると自分を否定されたように感じることはよくよくわかっています。 でも、この本の本当のテーマは就活ではなくて、人間なら誰でもが多少はもっている建前と本音の二面性のようなのです。 それを際立たせるためにツイッターを小道具として使っているわけ。 でもね、ここで書かれているくらいの二面性って、まったく目新しくない。 ふーん、それで?という感じ。

帯に「××ページ、○行目、物語があなたに襲いかかる」っていうほどでは…。 ほんのちょっと叙述トリック的な仕掛けはあったし、あるところで変調したような急展開があるといえばあるけど。 でも、私にはおもしろくなかった。 これがどうして直木賞なのか?? 理解できないのは、私の感性がよほど老化しているのでしょうか。


12.5夕暮れの飛行機雲

仕事関係で出会った若くて優秀な女性が職場を去ることになったと先日聞かされて、予想以上に動揺してしまいました。 いつかこんな日が来るんだろうなとは思っていたけれど。 仕事人として事務処理能力が非常に優れていて、人当たりがよく、私が闘病中もとても自然に接してくれて、本当にやさしい人なんだなあと、一緒に仕事をしていていつも和ませてくれる人でした。 ああ、この人の笑顔をもう見られないのだなあ…そんなことを思うと、2、3日寂しくてシュンとなっていました。 職場での扱いが悪いのだから、転職するのは彼女にとっては新しい未来への一歩。 新しい門出を祝福してあげなくちゃね。 27歳の彼女、これからは友だち付き合いしてくれないかな、おばさんと(笑)。

何事も出会いがあれば、いつか別れの時が来るもの。 私自身もずいぶん長くお世話になった媒体とそろそろお別れの時かもね。

おつかいの帰り道、冬の夕空を見上げたら飛行機雲が光っていてきれい! 急いで家のベランダに上がってパチリ。 シュンとした気持ちにそろそろ区切りをつけようと思った土曜の夕方でした。

かすかなふれあいを切りとる 青山七恵「お別れの音」

青山七恵は芥川賞受賞作「ひとり日和」を以前に読んだきり。 気に入らなかったのにまた読んでみる気になったのは、「お別れの音」というタイトルになんとなくひかれたから。 この人は2009年に川端康成賞を史上最年少で受賞したんですね、知らなかったわ。



あまり相性がよくない職場の先輩が出産を機に退職することになり、先輩と2人きりの仕事部屋でギクシャクと過ごす最後の数日を描いた「新しいビルディング」、いつも必ず同じメニューを注文する女の子に勝手に感情移入する学食のおばちゃんを描いた「うちの子」など、記憶に埋もれていってしまうような日常でのかすかなふれあいを切りとった短編集。

小説になりそうもないような、ごくごくかすかな感情の揺れを小説にまとめている手腕は評価します。 最近の若い作家にしては、言葉の選び方もひとつひとつとてもよく吟味して、自分にしか書けないような表現を追究している姿勢にも好感を持ちました。 読んでくだらないとは思いませんでしたが、ではおもしろかったかというと…。 ストーリーの起伏を求める人には向きません。


9.25芙蓉

実はショッピングモールの書店で買いたい本がひとつもみつからず、仕方なく買った本でした。 現代の作家で誰か「すごくいい!」と思える人に出会いたいのだけれど、むずかしいですね。


最近、なんの理由もなく(ひょっとしたら9月半ばの義姉の命日あたりから?)急にまた悲哀感が増幅してきて眠れなくなってしまいました。 途中で4回も5回も目が覚めるのが苦痛。 どうなっちゃったんだろう? 今日の「ためしてガッテン」で「いますぐでも眠れそうなほど眠くなるまで寝室へ行くな」と言ってたから試してみようかな。 しかしなあ…月末は仕事が重なってるし、日中眠くなるのはヤバイんだよなあ。 8月が仕事なさ過ぎだったから、とにかく仕事があるのはありがたいのに、人の話を聞きながら眠くてボーッでは困るんだよなあ。

あわいに漂う茫漠とした感覚  朝吹真理子「きことわ」

芥川賞受賞作「きことわ」が文庫本になっていたので読んでみました。 文章を味わえる作品ということだったので、ちょっと期待しつつ読み始めたのですが…うーん、ビミョウ。



貴子と永遠子。 少女時代、葉山にある別荘で何年にもわたって夏休みをともに過ごした2人が、人手に渡ることになった別荘の整理のため25年ぶりに再会する。 互いの記憶にあるもの、記憶から抜け落ちたもの。 夢なのか幻なのか…現在の一瞬に、ふと現れる25年前の断片的な記憶とおぼろげな誰かの気配…。

この小説をひと言で表現するとすれば「あわい(間)」。 本来あった事実と記憶に刻まれたこと、夢と現実、25年前の少女時代と今。 その間で漂うような感覚が読みどころ…なのかな(←あまり自信なし)。 茫漠としてつかみどころのないものを文字として定着させようとした作品とでもいえばいいんでしょうか。

基本的にはストーリー性のある小説が好きですが、一筋縄でいかない小説も意外に好きなんですよ。 でもこの小説は…なんだろう…感想をまとめにくい小説なんですが、文体や表現においても内容においても特に目新しいわけでもなく、心に響くものがありませんでした。 小説の骨になっているのは意外に古くさいセンチメンタルでノスタルジックなモチーフだし。 その一方で、最近の小説で時々体験する「読んで損した!」と腹がたつほどヒドイわけでもない。 個人的な結論、この著者の作品をもう一度手にすることはないな、たぶん。


この夏の異様な暑さに負けて更新をサボっていましたが、夏バテでヨレヨレまではいかず、あまりバタバタせずに省エネな毎日を送っておりました。 酷暑に辟易しながらもストレッチと書道、そして日々のご飯作りだけはサボらずにやってました。 読書は集中力が完全に欠如してほとんど進まず。 でも、感想をアップしていないものがいつのまにか結構たまっているので、個人的な備忘録代わりにボチボチ書いていきますね。

■更新が滞っている間もいろいろな過去の記事にも拍手をありがとうございました。 

近くにいても遠い人 江國香織「犬とハモニカ」

日本語そのものを味わうような文章が読みたくなって、ものすごくひさしぶりに江國香織の新刊「犬とハモニカ」を買ってみました。 装丁がとてもキレイな本だし、期待して読み始めたのですが。



川端康成文学賞受賞作「犬とハモニカ」を収録した短編集。 表題作は空港ですれ違い離れていく、たくさんの人生の一瞬を鮮やかに切りとったスケッチ風。 ほかにも不倫の終わり、仲むつまじく公園でピクニックを楽しんでいるかのようにみえる夫婦の内面を描いた作品など。 どんなにそばにいても(夫婦や不倫中の恋人でも)結局互いにほんとうには理解しがたい他者との距離感、冷え冷えとした孤独感を淡々と乾いた筆致で描いた作品が並びます。

雑多な短編をかき集めたという印象で、短編集としてのまとまりが感じられません。 異様なものを眺めるように愛し合う妻を眺める夫の視点とか、江國香織独特の冷え冷えとした感じはますますパワーアップしているのですが、昔は大好きな作家だったんだけどなあ…ピンときませんでした。 これは私が歳をとったからなのか、江國香織の作風が変わったからなのか? そのうち、ごく初期の大好きだった作品を読み直して考えてみたいです。

2.9雪の万両

源氏物語の夕顔のエピソードを現代の言葉で語った短編もなんだかなあ…。 夕顔が光源氏に対して「フェアじゃない」と心のうちでつぶやくくだりで「え?」。 なんで急にイマドキの言葉になるんですか?(地の文章は普通なのに) 角田光代の「曽根崎心中」と比べるとひどく見劣りしてしまい、「江國さん、こんな半端なもの書かなきゃよかったのに」なんて思ってしまいました。 ひさびさに買った江國さんの単行本なのに残念。


写真は9日(土)の朝に撮ったもの。 今年は冷蔵庫の中より寒い日が多いのに、雪はほとんど降らない。 つまんないな。 土曜日の雪も朝日がさした途端にみるみるとけ始めて、ストレッチに行く前に大慌てでパチリ。 ストレッチ&呼吸法は股関節まわりを重点的にほぐすようなゆるーい動きで、ふだんはまったく動かさないところが動いた実感が。 翌日は気持ちよくだるくてだらんだらん。


■拍手をありがとうございます。
■まことんさん、おっしゃるように確定申告をすることで1年に1度税金と向き合うのも大切なことなんでしょうね。 日本の経済にも税収にもまったく貢献できていない自分を再認識させられて、毎年この時期は情けなくなるばかりなんですが。

Category: 江國香織

実は芥川賞っぽい 磯崎憲一郎「終の住処」

前の記事で西加奈子の「炎上する君」を「和風マジックリアリズム」と書いたら、昨年読んだ磯崎憲一郎「終の住処(ついのすみか)」を思い出しました。 芥川賞受賞で話題になっていた短編が文庫化されたので購入。



「妻はそれきり11年、口を利かなかった――。」なんていう帯のキャッチフレーズをみて、中年サラリーマンが主人公というから直木賞っぽい作品だと思いこんでいましたが、読んでびっくり。 正統派芥川賞作品。 ストーリーではなく、文体と文章表現にこだわった小説でした。 最初から最後まで改行がないまま、ごく短い短編の中で何十年ものときを描いているんですから。

短いからサッと読んでしまって、何日か経ってから「何かに似ているなあ」と後から気になって…考えてみたら、これってガルシア=マルケスの「族長の秋」へのオマージュなんだろうなと。 小説の長さはずいぶん違うけど、改行なしという文体のが同じだし、主人公の「俺様」目線で独りよがりに語られる話の滑稽さとその後に漂う哀しさや孤独感。 そんな風に「族長の秋」と対比させて考えると、読んでいたときよりも読み終わってから味わいがじわじわ増した感じ。 この作品にガルシア=マルケスのスケール感を期待してはいけませんけど。 好きかどうかといえば特に好きじゃないけど、それなりにおもしろかったです。

1.9南天の実


一昨日、本屋さんでみつけた柳広司「ジョーカー・ゲーム」の文庫本。 父が好きそうと思ってすすめたら、はまってます。 やっぱりね。 私が読み始めた「横道世之介」も、つかみはバッチリ。

仕事は集中力が欠如してなかなか進まず。 そんなときは、ちょっといつもと違う料理をつくるのが楽しい(単なる現実逃避)。

今日の晩ご飯は豚肉+ゴボウたっぷり+エリンギ+白菜+コンニャク(要するに冷蔵庫で余っていたもの)の豆乳鍋。 いつもは出汁+豆乳なんだけど、なんとなく味つけが物足りないので中華風にしたら美味しかった! 野菜を少量の水で炊いてから豆乳をたっぷり入れ、豚肉に火が通るまで加熱。 味つけは味噌(うちは山吹味噌だから)やや多め、豆板醤は隠し味にちょこっと入れて、醤油をほんの少し、胡麻油・すりごま・小口切りのネギを最後に加えてできあがり。 いままでつくった豆乳鍋よりずっと美味しくできました。 小さな満足♪

■拍手をありがとうございます。

ベストセラーは肌に合わないらしい 冲方丁「天地明察」

初めて手にとった作家。 冲方丁と書いて「うぶかた とう」と読むそうです。 単行本「天地明察」がでたときから「文庫化されたらすぐ買おう」と待ち構えてました。 しかし…読むのが辛かった…読み終わるまで4ヶ月くらいかかりました(それでもなんとか読み切った)。 本屋大賞のみならず吉川英治文学新人賞まで受賞して、直木賞にノミネートされたからと、私が勝手に期待しすぎました。

江戸前期に改暦という大事業を果たした渋川春海を描いた新しいタイプ(たぶん)の歴史小説です。 江戸城で将軍をはじめ幕府の重鎮たちの囲碁のお相手を務めていた棋士・渋川春海は、本業よりも数学・天文学に強い興味をもち、やがて日本独自の暦を導入するために奮闘することに…。

 

江戸時代の京都と江戸が舞台で、天文学・和算・囲碁をテーマにした時代小説と聞いて、そんな地味な素材をベストセラーになるほどワクワクした読みものにしたのかとすごく期待していたのですが…うーん、残念。 私には合いませんでした。

誰かの感想に「ト書きみたい」とありましたが、読んで納得。 「びっくり」とか「がっくり」とか「悲しかった」「うれし泣きした」みたいな地の文章を読み飛ばせる読者なら、楽しく読めるかもしれません。 ふだんから本をよく読んでいる人、味わいのある文章が好きな人、時代小説にこだわりがある人が読むとガックリきます、たぶん。 時代小説らしさを突き崩すような作風なら、それはそれでよかったんだけど。 全体の構成も前半に力が入りすぎて、肝心の改暦についてが尻すぼまりになったのもなんだかなあ…。 Amazonのレビューで評価が低い人は数学的あるいは天文学的な誤りを指摘しているんですが、それ以前に読みものとしてこれでいいのか?

映画化に合わせて再び話題になるんだろうけれど、本好きにはおすすめしません。 最近、「これはおもしろい!」という本に出会えていないのは、自分の体調のせいなのかなあ。


9.7黄色の花

雑草園のような庭で勝手に咲いている、この黄色の花。 今日いっせいに、庭のあっちこっちで揃って開花しました。 夕方にはしおれてしまう一日花。 名前がよくわかりません。 タマスダレ?


■拍手をいつもありがとうございます。