芥川賞らしくない地味さ 津村記久子「ポトスライムの舟」

芥川賞受賞時から気になっていた津村記久子「ポトスライムの舟」が単行本化されているのを本屋さんでみつけて、早速購入。 先日読んだばかりの芥川賞受賞作、川上未映子「乳と卵」とはまったく違う世界のお話でした。 同じ関西弁系(?)なのにここまで違うということが、興味深かったです。

ポトスライムの舟 (講談社文庫)ポトスライムの舟 (講談社文庫)
(2011/04/15)
津村 記久子

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この小説をひとことで言えば「地味」。 芥川賞っぽい前衛的な表現法や内容を期待すると、たぶんガッカリします。 でも、リアルな重みをもつ作品でした。 かなり重いので、気持ちが落ちこんでいるときにはおすすめできません。 特に、壮絶なパワハラを描いた併録の「十二月の窓辺」が重くて。

バリバリのキャリアウーマンではなく、ひたすらコツコツささやかな仕事をしている30歳前後の平凡な女性が抱えている心の痛みがヒリヒリ伝わってきました。 とはいっても、筆致は軽やかで淡々としているので、サラッと読めます。 小説では詳しく描かれていないけれど、主人公がかつて仕事のことで心を病み、小さく小さく内向きになってしまっている状況と心情が非常に生々しく感じられました。 それが「ポトスライムの舟」の主題なのだけれど、いまの私には重かった…。

カフェを経営している友だちや、主人公の家に身を寄せる友だちの娘、主人公の母親といった、主人公のまわりの人たちがいい味を出していて、じとじとした私小説とはまったく違った乾いた空気感。 そして、奈良・大阪・神戸、それぞれの街の雰囲気も巧みに使われていて、小説としてはなかなかよかったです。

カソウスキの行方カソウスキの行方
(2008/02/02)
津村 記久子

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もっと乾いたユーモアのある「カソウスキの行方」の方が個人的には好きだけど。


6.1スカシユリ

雨降りの一日。 強い雨の中でぱっちり咲いたスカシユリは、まるで発光しているみたい。 眺めてると元気を分けてくれそう。

大学時代の仲間の飲み会に誘われて、返事のメールが書けないまま、ぼんやり過ごしてしまいました。 まだ、おおぜいでワイワイはダメな気分。 明日は仕事の飲み会…うまくやり過ごせますように。
Category: 津村記久子

アイディアはいいけど 高野秀行「神に頼って走れ」

近頃お気に入りの高野秀行の文庫本「神に頼って走れ」を本屋さんでみつけました。 旅の気分あふれる気楽な本みたいだし、ボーッと春霞がかかったような頭の状態にちょうどよさそうで吟味せずに買いました。 しかし…ちょっとでも立ち読みしてからにすれば良かった、と激しく後悔することに。

4.2神に頼って走れ

取材のためにインド入国したいのに、トラブルがあってなかなか許可が下りないという宙ぶらりんな状態の高野クン。 家で悶々としていても仕方ないと、道中のあらゆる神仏に祈りながら自転車で東京から沖縄までの旅に出ることに…。

う~、これ、ほんとにビックリするほど内容がない本でした。 ブログで掲載したものをそのまま本にしたそうです。 ブログだったら臨場感あったのかなあ?(懐疑的) もともと歩く旅=四国のお遍路に憧れているワタシは、自力で(自動車を使わず)進みつつ祈る「自転車でお遍路」というアイディアがおもしろいと思ったのです。 が、自転車旅のおもしろさが読者に伝わってこないし、道ばたの神仏が多すぎるからとほとんど神仏についての記述がなく(たまに神社などをあげて祈ったことを書いてますが)、内容が薄すぎ! 出会う人はほとんどが旧知の変人的お友だちというのも身内ネタで盛りあがっている感じ。 「幻獣ムベンベを追え」での懐かしいメンバーだとわかるワタシでもつまらん。 シロウトの人たちがブログで詳細に書いている実体験の四国お遍路旅記録の方が、読んでいてはるかにおもしろい。 沖縄では日本から無理やり輸入させられた神仏ではない、沖縄独自の祈りの場所について書かれていたりして、最後の方の島旅あたりでうっすらおもしろかったぐらいで物足りなさ充満。 どんな本でも高野本なら大好き!というよほどのファンでない限りは読まなくていいです。 と、安価な文庫本とはいえ、ちゃんと定価で買った読者として、言いたい放題書かせていただきました。

4.1スミレ

今日も風が強くて寒かったです。 ブルブル。 夜半の強い風雨で桜が散ってしまったかと心配しましたが、意外に大丈夫みたいです。 京都も寒い日が続いているのに、ついにそこいら中が満開になったようです。 明日あたり、ちょっと哲学の道へ行ってみようかな。
Category: 高野秀行

コンゴの密林へ荒唐無稽な旅 高野秀行「幻獣ムベンベを追え」

日常の雑事(仕事も含む)に追われているうちに本の感想がたまってきて、宿題を放置している小学生のような心境になってきました。 まずは、近頃すっかりお気に入りの高野秀行のデビュー作「幻獣ムベンベを追え」。 高野秀行は、普通の人が行かないような辺境に突入して、そこでの体験を赤裸々に綴るノンフィクション作家です(ワタシの認識では)。 もともとは早稲田大学探検部に在籍していて、部員として企画・実現させた最初の探検が、後に「幻獣ムベンベを追え」として書籍化されることになるコンゴへの旅だったようです。

コンゴって知ってますか? 普通の日本人は、コンゴといっても国名とアフリカにあることくらいしか知らないんじゃないでしょうか。 高野秀行たちが探検にいった当時(1980年代後半)、コンゴは社会主義体制+軍事独裁政権で外国人に対してほとんど門戸を閉ざしている状態で、日本とは国交どころか商業的なやりとりさえいっさいなし、事前の情報がほぼ皆無な国。 そんなアフリカの小国の、それも他者を寄せつけない土地柄に属する密林の奥に分け入って、「幻の怪獣ムベンベ」を探した探検部員たちの顛末記です。

3.2幻獣ムベンベ

予想以上に悪い現地の状況(湿地帯でキャンプをはる乾いた土地がない)、現地の人たち(超わがままな動物学者や密林の村の人たち、地元民ガイド)と意思の疎通をすることの難しさ、マラリアに倒れる後輩、食糧難、そして変化のない日々(怪獣が出てこないから)への飽き。 どうしてこんなにたいへんなことを…を、分別のある人ならあきれるばかりでしょうけど、ただ「旅」しただけではとうてい知ることができない濃密な体験に、ほんの少し嫉妬してしまいました。 若くて体力があって、気力と好奇心が充実していて、若さゆえの無謀さが残っているうちでないと、こんな経験はできないですから。 それにしても強烈なのが食事。 食料が足りなくなって、地元住民ガイドが狩りをしたカワウソ・猿・蛇…はてはゴリラまで解体して(!)食べたんですよ。 すごい。 猿を食べながら(猿を原形のまま焼いている写真に目が釘付け)、食べることで愛おしさが増すという感想を持つ一節が衝撃的でした。 人間に似た形のものをおいしいと思って頬張るんですからねえ、壮絶です。

もっと「おもしろおかしい」本かと思ったら、意外にまじめ。 高野青年は本気で怪獣がいると信じているわけではなくて、「いないにしても、どうして似たような目撃証言があるのか」を検証したいと考えていたのですね。 「本気で怪獣探し」だったら、「いい年をして子どもの探検ごっこして」とあきれて終わりだったでしょう。 必要な機材を企業に働きかけて調達したり、国交がない国への入国に手を尽くしたり、高野青年を筆頭とする探検隊員たちはなかなか現実的にしっかりしていますし。 探検から14年後の隊員たちの「その後」が文庫本の最後に追記されていて、それがまたとてもよかった。 みんなそれぞれ、大人になったのだなあとしみじみ。 デビュー作ということもあって著者の書き方は上手とはいえないのですが、おおげさに煽った表現をせず、淡々と事実を積み重ねて書いている姿勢がかえって「青春」を感じさせてすがすがしかったです。


3.1胡蝶侘助

しっかり雨が降って、異様に暖かい日が続いたため、庭の植物が一気に動き始めました。 小型の椿、胡蝶侘助が今年はいっぱい咲いています。 でも、どの花も咲く前にヒヨドリかメジロに蕾をつつかれて、花びらがきれいなのはほとんどありません。 植物にとっては受粉を助けてくれる鳥の方が、花を眺めて喜ぶ人間より有用?
Category: 高野秀行

アジア人のしぶとさ 高野秀行「アジア新聞屋台村」

ずいぶん前に本屋さんの文庫新刊コーナーでみつけた高野秀行「アジア新聞屋台村」を今頃になって読了しました。 ものすごく期待して読み始めたのに、最初でつまずいて放置していたんです。 アジア各国を旅したことがある人なら、もっと興味深く読めたのかな。

1.30アジア屋台村

東京で日本在住のアジア人のために各国語で新聞を発行している会社で、編集兼ライターの仕事を得た著者の駆け出し時代(たぶん)のことを書いた本です。 いろんな人の個人的な事情に差し障りがないように、一応「小説」という体裁をとっていますが、限りなくノンフィクションぽいです。 編集部は基本的な段取りさえ無視のアジア的な混沌の世界。 そこで、アジアのいろんな国から日本に来ている個性的な面々に囲まれて、ひとりで力んだり怒ったり、一緒に笑ったり。 ようやく落ち着いたと思ったら新たな脅威が現れて、高野青年ピンチ…。

全体を通してみると、孤軍奮闘しながらやがて自分のいるべき場所をみつけていく青春物語的な構成になっていますが、主眼はどちらかといえばアジアのいろんなお国柄というか、それぞれの強烈な個性に置かれているように感じました。 アジア人の(いい意味での)しぶとさが強烈に印象的でした。 日本人はひ弱ですねえ。 その中でもひ弱なワタシ、この本の女社長・劉さんの爪の垢を煎じて飲まなくてはいかんなあと反省したりして。 高野さん独特のユーモアあふれる文章を期待していたんですが、ちょっとパンチ不足で残念。 もっと笑わせて欲しかったなあ。

同じ著者の「異国トーキョー漂流記」「ワセダ三畳青春記」と合わせてトーキョー三部作だそうですが、「異国トーキョー漂流記」が断然おすすめです。 内容も表現もすばらしくて、一気に高野さんのファンになってしまった本です。 ユーモアとペーソス、そしてやや小説風味という点では「ワセダ三畳青春記」の方が「アジア新聞屋台村」よりよかったな。 なんだかんだいいながら、実はもう次の本「幻獣ムベンベを追え」を買ってしまいました。 かなり高野さんにハマってます。

土曜日はテープ起こしを放棄して、10数人のプチ同窓会に行ってきました。 行くまでは何となくおっくうだったけど、行ってよかった。 6時からワイワイしゃべって飲んで、あっと気づいたらもう夜中。 たいして内容のあることを話しているわけじゃないけど楽しかった。 たまには、おおぜいの人と話をすることも人間として大切ですね。 それにしても「vogelちゃんって、中1の頃とほんっとに変わってないねえ」と言われるのは、喜んでいいものなのかどうか…。 女としても人間としても成長ゼロ?

■おーりさん、こんばんは! 読書記録、楽しんでいただいてウレシイです。 ワタシの好みってどうも世間一般とかなりズレがあるようですが、参考になってます?
Category: 高野秀行

昭和の激動期を生きた人々 多島斗志之「離愁」

この本を手にとるまで、多島斗志之という作家をまったく知りませんでした。 ネットでうろうろしていて、いい評判をいくつもみかけたので文庫本を買いました。 単行本は「汚名」というタイトルで出版され、文庫化の際に「離愁」と改題されたそうです。 ひさびさに一気読み。 派手なストーリー展開ではないのに、先が気になってページを繰る手が止まりませんでした。

9.18離愁

美しいのに世の中のすべてに心を閉ざしたまま亡くなった叔母。 その叔母が他界してから30年後、生前にほとんど交流がなかった甥が叔母の謎めいた人生に興味を持ち、叔母の遺品にあった手紙をたどる中で、明らかになってくる叔母の知られざる青春の日々。 人を寄せつけなかった叔母にも、明るく輝く青春と恋愛があったのだ。 しかし、戦争へと突入する不穏な空気に叔母の恋愛は飲み込まれていく…。 そして、叔母の足跡をたどる甥は、思いもかけない事実を知ることになる。

第2次世界大戦前夜から戦中・戦後にかけての激動の時代とゾルゲ事件を背景に、昭和という時代をていねいにじっくり描いた長編小説です。 文庫本裏の紹介文には「渾身の純愛小説」と書かれていますが、そういう軽いノリの小説ではなくて、もっと大きな時代のうねりを描ききっていると感じました。 叔母の主観はまったくわからないまま、さまざまな人物が自分の視点からみた叔母を語っていく構成が秀逸で、ミステリではないけれどミステリっぽく先が気になって気になって。 思いがけない人が後半に登場することで、一方的に被害者・加害者と決めつけない多角的な視点になって、ストーリーに奥行きがぐっと増しています。 最後の最後までひきつけられました。 物語世界をたっぷり堪能して満足。

9.9スイレンボク

ただ…ただね、最後のページは、ワタシの感覚では違和感が残りました。 最後のページで感動できた人なら、別格扱いになるほど気に入ったかも。 最後のオチになんとなく釈然としなかったので、手放しで大絶賛!まであと一歩届かなかったなあ。 でも、叔母だけでなく時代に翻弄されたさまざま人の足跡をあぶりだし、時代の空気を描くのがこの小説の主眼だとワタシは思うので、読んでよかったです。

甥がよく知らなかったおばの人生を、おばの死後にたどる設定ということで、ずっと前に読んだ「嫌われ松子の一生」を思い出しました。 雰囲気はぜんぜん違うけど、あの小説も(生々しい描写があってもなお)結構よかったな。


今日の花は、母が買ってきたスイレンボク。 「茶花にもなる」と売っていたおばさんはいったらしいけれど、それほど風情のある花でもないです。 花の形はホトトギスに似ているんですが、名前の通り「木」なので全体をみると頑丈そうなイメージです。 ひさしぶりにまじめにサッカー日本代表の試合をみました。 ひさしぶりに勝てて、少しはいいイメージトレーニングができたんじゃないでしょうか。 前半はどうなるかと思ったけど。 GK下手だなあ。 シュンスケがさがってからの方がずっとチームとしてよくなってるようにみえましたが、岡ちゃんはどうしてシュンスケがそんなに好きなの? ずーっと前からシュンスケのプレーが嫌いなワタシはイライラしっぱなしだったわよ。

悲しいくらい平凡なのもよし 平安寿子「もっと、わたしを」

読み終わった本の感想がたまってくると、宿題をサボっている小学生みたいな気分になってきますね(笑)。 今日は短めにサクッといきましょう(できるのか?)。

ネットで感想を何度かみかけた平安寿子「もっと、わたしを」。 文庫をみつけたので買ってみました。

9.18もっとわたしを

もっさりしているのに二股をして板挟みになる男、顔がいいことに自信を持ちすぎて仕事ができない自分を客観視できない勘違い男、美人ゆえモテるのに本命になれない女、打算いっぱいで媚びを売るバツイチ子持ち女…など、どこにでもいそうな普通な人たちの格好悪いエピソードをカラッと明るく描いた短編集です。 登場人物がほかの短編にちょこっと顔を出して、全体の構成が緩やかなまとまりのある連作になっています。

恋愛小説のなかな、これ? 恋愛を描いているけど、恋愛を通してすけてみえる本質の方が印象に残りました。 登場人物それぞれのかなり格好悪いところが描かれているんですが、著者の視線が温かで、1冊読み終わると(特にハッピーエンドということでもないのに)心がほわんとしました。 これだけ普通な人を主人公に、たいした波乱もない物語を書いているのに読ませてしまうのは、平安寿子の筆力なんでしょうね。 ただ、読んでるときは楽しいけど、後に深く残るものはあんまりない。 そこが角田光代とは違う気がします。 重いものは読みたくない、楽しい読書をしたいときにおすすめです。

9.8アスパラガスの実

あれ、やっぱり長い? これでも短くしようと努力したんだけど(あー、仕事と同じだなあ)。 写真はアスパラガスの実です。 風に揺れてなかなか写真が撮れません。 仕事が終わった後の疲労困憊で(なぜこんなに疲れるのか?謎)今日(正確には昨日)はなにもしたくなくて、午後はどっぷり庭仕事。 長時間の草ひきで膝や股関節が痛くなってしまいました。 でも、草ひきって、なんにもしたくなくて無心になりたいときに最適ですね。 今日はじめてわかりました。

ボロアパートでの青春の日々 高野秀行「ワセダ三畳青春記」

異国トーキョー漂流記」で一気にハマった高野秀行。 次に読んだ「アヘン王国潜入記」は硬派のノンフィクション系で、飄々とした独特のユーモアが心地いい「異国トーキョー漂流記」とはテイストが違っていました。 今回は、ワタシ好みの「異国トーキョー漂流記」に似ていそうな「ワセダ三畳青春記」を選んで買ってきました。 この本、おもしろかった! ひさびさに好みにぴったりの作家に出会えてウレシイ。

8.21ワセダ三畳青春記

早稲田大学のすぐ近くにたつボロアパート野々村荘。 その3畳の狭い下宿で過ごした11年を、みずみずしく描いた高野クンの青春の記録です。 変人の住人たちと、早稲田大学探検部の個性的な面々が出入りする3畳間で、世の中のバブルなどまったく関係なく、バカバカしいことに明け暮れる毎日。 しかし、やがて友人や後輩は社会へ出て、身の回りは少しずつ寂しくなっていき…。

青春の無為な時間を共有する仲間たちとの交流、そしてついに訪れる青春との訣別。 みんなでバカなことばかりやっているようで、どこか寂しくて切なくて。 ああ、こういう感じ、大好き! 周囲より少し遅れてオトナになって、野々村荘を去っていく高野クン。 読んでいるワタシも一緒に、青春の日々を見送った心地になりました。 手元に置いて、またいつか読み直してみたい本です。 気に入りすぎて、いつものようにしつこく内容を分析できません(笑)。 次は、内容的にこの本の「その後」になっているらしい「アジア新聞屋台村」を買ってこよ。

ちなみに、「異国トーキョー漂流記」は父にすすめたら一気読み。 続いて、母も病院の待ち時間に読んで、すごく気に入ったようです。 「自由気ままにおもしろおかしく書いているようだけど、実は、こういう風にはなかなか書けないものよね」と言ってました。 軽い(かのようにみえる)文章の奥に、高野クンの生真面目さ、文章のセンスのよさが光ってます。 珍しく、ちょっと嫉妬。


8.21タマサンゴ

赤い真ん丸の実がかわいいこの草、何年も前からわが家の門口、歩道と石垣の間に勝手に生えています。 以前は庭に植えていたんですが、環境が気に入らなかったのか庭のはすぐに消えてしまい、いつのまにかずっと離れた場所に生えていました。 ずっと名前がわからず気になっていたのですが、今日ネットで調べてようやく判明。 ブラジル原産のタマサンゴ(玉珊瑚)、別名「冬珊瑚」「龍の珠」だそうです。 花はナスっぽいなと思ったら、やっぱりナス科。 実は緑から、熟すに従って黄色、赤へと変化していきます。 いまちょうど3色揃って、一番かわいい時期。 でも熟すと、すぐに鳥に食べられてしまいます。 鳥はプチトマトにはまったく興味がないようですが、トマトよりタマサンゴの方が甘いのかしら。
Category: 高野秀行

ケシ栽培地での滞在記 高野秀行「アヘン王国潜入記」

先日読んだ「異国トーキョー漂流記」がすこぶる楽しかったので、高野秀行の本を続けて読んでみたくなりました。 そこで思い出したのが、この本。 ちょっと話題になってたっけ…文庫本になっているのをみつけて買いました。

7.27アヘン王国潜入記

ミャンマーの山岳地帯にあるケシ栽培の「ゴールデン・トライアングル」。 ここは少数民族ワ人の居住している地域で反政府ゲリラの支配下にあり、ふつうには絶対に近づくことができないところ。 著者は闇ルートで国境を越えて、もとは首狩り族で武勇で知られるワ人の村に7ヶ月滞在し、ケシ栽培を体験しようと計画。 自分の目で見た、まったく外部に知られていないミャンマーの山岳地帯の現状を詳細に書き記しています。

ものすごくきまじめな内容で、「異国トーキョー漂流記」を読んで期待したテイストとはぜんぜん違っていました。 「ノンフィクションを書くぞ!」と肩に少し力が入りすぎて、この著者の個性が減じてしまっているのかも。 マラリアに倒れたりシラミまぶしになったり、村民にすすめられてネズミを食べたり、村民と一緒に吸っているうちにアヘンに溺れてしまったり。 村民と同じものを食べ酒を酌み交わし、すごい体験をしていて興味深く読みました。 ただ、なんとはなしに物足りない。 俯瞰的な視点ではなく、でも個の視点に徹したわけでもないからかな。 もっと著者らしいものが読みたい、次は何を読もうかなと考えているのだから、結構この人にハマっているみたいです。
 

7.27葉っぱ

HTLMのお勉強は根を詰めすぎるとイヤになりそうなので小休止。 毎日毎日、雨が降り続いて、庭はすっかりジャングル。 手のつけようがなくなりつつあります。 あっちこっちで見知らぬ葉っぱが勝手に芽吹いています。
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外国人の目で日本を眺めると 高野秀行「異国トーキョー漂流記」

この著者の名前さえも知らなかったのに、なんとなく本屋さんで目にとまって買った文庫本です。 たいして期待してなかったんですが、すごくワタシの好みにぴったり。 ひさびさに直感で選んだ本がおもしろくて、なんかウレシイ。 読みかけていた本がどうも肌に合わず、仕事やら親の体調不良やらで、読書は近頃すっかり停滞していたので、よけいにウレシイのかも。

7.17トーキョー漂流記

外国語を習うため、あるいはたまたま飛行機で隣に座ったからという理由だけで知り合った外国人と付き合い、話しをするうちに平凡な東京の風景が見慣れないガイコクに見えてきて…という、東京での外国人との交流を描いた8編からなるノンフィクションです。 登場するのは、ブトー(一時欧米で流行った白塗り半裸でパフォーマンスをする暗黒舞踏)にハマったフランス人、コンゴ探検のために言葉を習いたくて知り合ったコンゴ人やザイール人、日本への憧れが色あせていく中国人、孤独な出稼ぎのペルー人など。

ノンフィクションというと全体に(ワタシの頭には)かたすぎたり、そこで描かれる真実はすごいのに、それを描く文章がよくなくてイライラしたり、ふだんはあんまり読もうという気にならないんですが、この本は軽妙なようで著者独特の情緒があって、とにかくワタシは好き! 公私ともに忙しかったのに一気読みしました。 滑稽さとほろ苦さとほのぼの感のさじ加減がとてもよくて、文章のリズムや語り口も心地よくて。 書く対象に向かう著者の立ち位置がいいんでしょうね。 沢木耕太郎ほど「自分」を前面に押し出しすぎず、ベタベタしすぎず。 カラッとしたユーモアがワタシにはツボでした。 秀逸なのは、アフリカのスーダンからやってきた留学生と野球で盛りあがる最後の1編。 読んだ後に、心がポッと温かくなりました。 高野クンがすっかり気に入ったので、そういえば単行本が出たときに気になった「アヘン王国潜入記」の文庫本をさっそく買ってきました。


7.14鈴なりプチトマト

わが家のプチトマトもようやく収穫期。 とはいっても、3、4日に一度、数粒とれるだけなんですけどね。 とっても小粒なんですが、完熟しているから甘くて味がすごく濃い! 風通しが悪くて鉢の土が少ないから、たっぷり収穫はできませんが、プチトマト2種のほか、ヒョロヒョロのレタスっぽい葉っぱ、香り強烈なバジル、立派に実っているシシトウを今年はぼつぼつ味わっています。 目の前で育った無農薬野菜と思うだけで、どんなに小さくても満足です。
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働くひとへの深い共感 津村記久子「カソウスキの行方」

初めて読んだ「八番街カウンシル」がピンとこなかった津村記久子サン。 もともと「カソウスキの行方」が読みくて同時に図書館で予約したのに、こちらの方が圧倒的に人気でようやくワタシのところへ回ってきました。 すごくよくて一気読み! ああ、ワタシ好みだわ。 ひさびさに余韻に浸れる小説に出会いました。

6.22カソウスキの行方

仕事はそこそこ有能なのに社内での身の処し方が不器用なイリエは、後輩をかばったつもりが裏切られて倉庫へと左遷されてしまいます。 仕事もろくにない、あまりにも退屈な日々をやり過ごすために思いついたのが、職場の男性を「仮想で好きになる」こと。 その人に会っただけで無理やり「ときめいている」と仮想しようとするのだが…という表題作の中編「カソウスキの行方」のほか、短編2編が収められています。

3編ともに働くひとの心情がとてもリアルでした。 キャリアを追い求める上昇志向の強いタイプではなく、でもしっかりと仕事をこなせる普通の人たちが、会社で仕事をしていく中で苦しさや理不尽さに遭遇しながらも、なんとかやり過ごして働き続けよう、あるいはそうやってがんばっている恋人との関係を持続させようとしている姿に深く共感しました。 「働く」ということが、森絵都の「風に舞いあがるビニールシート」よりもずっと深い部分でとらえられているのではないかと感じられました。 かといって、「こんなに歯を食いしばってがんばっているのよ!」みたいな押しつけがましさはゼロ。 主人公たちはみな、いじましく、せこい生き方なんですが、自嘲的な視点での語りが独特のほんのりとしたユーモアとペーソスを醸しだしています。 「カソウスキの行方」も「Everyday I Write A Book」も恋愛はたいしたウェイトを占めず、自分の居場所をそれぞれが自分でみつけていく過程に重点が置かれているのだと感じました。 「カソウスキの行方」でのイリエと男性社員2人の人間関係が深まっていくところ、ほわっと心が温かくなって読後感もいいです。

でも、3編の中で一番心に響いたのは「Everyday I Write A Book」。 あこがれの男性と結婚した、時流に乗って注目を集めている女性のブログを読んで、自分が受け持っている平凡な仕事との差に落胆し、業務の煩雑さに押しつぶされそうになる野枝…ああ、わかるよ、わかるよ、その気持ち!と、ついホロッ。

6.23タイサンボク

「カソウスキの行方」も「Everyday I Write A Book」も、プロフィールを読むと津村サンの実体験がベースになっているようです。 かといって、私小説のようなウェット感もナルシストな視点もいっさいなく、カラッと乾いた上質な小説に昇華されています。 小説家として器用ではなさそうだけど、もっと読んでみたいと思わせる個性をもつ作家さんです。 それにしても作家として売れてきたら、日中は会社員、夜に仮眠してから執筆という兼業作家状態はさぞやたいへんでしょう。 会社はネタの宝庫だからですって。 すごいなあ。


月曜日にお中元の申し込みに付き添って、やっとお中元選びの大騒ぎから解放されました。 珍しく両親ともに出かけた静かな午後、雨上がりの庭をうろうろ。 下ばっかり眺めていたけど、何気なく雲間からちらっとのぞいた青空をみあげると、頭上はるか高いところでタイサンボクが1輪咲いているのに気がつきました。 「泰山木」なんていう名前だし、どことなく和っぽい雰囲気の木だから、てっきり日本か中国が原産だと思っていたら、実はアメリカ原産で明治の初めに渡来してきたそうです。 芳香があるそうですが、あまりにも高いところで咲いているので、一度も花の香りを感じたことがありません。 どんな香りなんだろう?
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