これがベストセラー? 和田竜「村上海賊の娘」

本の感想をひさしぶりに書くのに、それも年頭に。 こんなに否定的なのもどうかとは思います。 でも、本屋さんで文庫本全4巻を定価で買って(2500円以上!)途中で放りだしたいのを我慢して、読み飛ばしもせずに最後まで読んだから言わせてください。 つまんないです!! 

図書館で借りたのなら、ここまで否定的に思わなかったかもしれませんが、文庫本化されて2500円って、私にとってはずいぶんな値段。 本屋大賞はもう読まない方がいいかも。 しかも、吉川英治文学新人賞まで受賞したってどういうこと?(この賞は信じていたのに)

1.10村上海賊の娘

織田信長に攻められ、陸海からの兵糧を止められた大坂本願寺。 多数の信徒たちが立てこもる本願寺から支援の要請を受け、兵糧を運ぶ毛利家・村上海賊の連合軍を待ち受けるのは、信長方についた大坂泉州の海賊たち。 村上海賊の首領である能島村上家の姫・景(きょう)を主人公に、現在の大阪湾岸で両雄が激突した海戦=木津川合戦を描く歴史小説。 気性が荒く海賊働きが大好き、瓜実顔が美人だった時代には醜女(しこめ)で嫁のもらい手もないような景は、自ら無謀な戦いに身を投じていく。 景が血みどろの戦場で目にしたのは…。

村上水軍に興味があったので、文庫化を楽しみにしていました。 でも、この小説のどこがおもしろいんでしょう? なぜこんなにも売れたのか?? Amazonの感想をみると、好きか嫌いの真っ二つ。 私と似た読書傾向の人には向かないと思います。

いつもだらだら長文の感想を書く私がいうことではないかもしれませんが、「村上海賊の娘」は冗長すぎます。 おもしろく読めた人は斜め読みができる人、どうでもよさそうなところはサッと読み飛ばせる人なんだと思います。 著者は史料へのこだわりがよほどあるらしく、どうでもいい細かいところでもいちいち原文まで引用して本文中で解説していて、それがものすごく邪魔なんです。 特に冒頭の1巻はたくさんの人物の紹介と、当時の大阪湾岸の地形のくどくどしい解説(ブラタモリかッ!)ばかりで、話がほとんど進まずイライラ。 3巻からやっと少し話が動きだすという異様なスローテンポ。 ものすごくたくさんの史料を読みこんだとしても、それを感じさせずに、現代人が違和感なく読めるようにするのが小説家の仕事なのでは? 著者の経歴をみて、もともと脚本でデビューしたと知って納得。 調べたことをもっとバッサリ捨てるべき。

1.11テイカカズラ

主人公の景にもまったく魅力が感じられませんでした。 女ながら戦闘本能全開の直情型という設定が悪いとは思いませんが(「エイリアン2」のバスケスは結構好き)、読んでいると景は単なる世間知らずのおバカさんにしかみえません。 話をおもしろくするために無理やり女を主人公にしたという感じ。 第2巻の鉄砲衆・雑賀党を率いる鈴木孫市とか、敵方の眞鍋海賊を率いる眞鍋七五三兵衛の方がずっと生き生きしていて、主人公が登場しないシーンの方がおもしろいってどういうこと?(笑)

もう一つ、無駄に残酷な描写がイヤ。 モリで百姓数人を串刺しとか、首が飛ぶとか、手首を切り落とすとか、縦に真っ二つとか。 その合間に妙にコミカルな描写が混じって、生理的にダメでした。 海賊ってそれくらい残酷だったのかもしれないし、著者は血みどろの戦いの無意味さを描きたかったのだろうとは思うけれども、でもなんだかなあ。

唯一、後味が悪くないエンディングが救いでした。 でも、この最後のシーンってハリウッド映画によくあるよねえ。 一番嫌なヤツを殴り倒して、一人黙って去って行く…映画のように映像が目に浮かびました。 さすが脚本出身だ。

エンターテインメントに徹した小説は決して嫌いではないんですけどね。 例えば、歴史をベースにしたケン・フォレットの「大聖堂」はとてもおもしろかったです。 2500円あれば、もっと良質な読書ができたはずと思うと悔しい(笑)。 話題作だからやっぱり読んでおきたいという方には、図書館で借りることをおすすめします。

と、著者に長々と文句をいうような冗長な感想ですみません。 この小説を楽しく読める人もいるんでしょうけれど、私には合いませんでした。 村上水軍という素材は良かったのにな、残念。


写真の赤い実はテイカカズラ。 秋は葉っぱの陰で、きれいなまん丸だったのが、冬枯れの季節になって、あっという間に全部ヒヨドリのお腹に収まってしまいました。 リビングの真ん前にある実を、臆病なヒヨドリが決死の覚悟で(?)何度も飛んできてはついばんでいたから、よっぽど美味しいみたい。


■いろいろな過去記事にも、たくさんの拍手をありがとうございます。