意外にも「普通」な素顔がかいまみえる 木村多江「かかと」

友だちが「さらっと気軽に読めて結構よかったよ」というので借りてきました。 芸能人(ご本人は「芸能人」という立場に大きな違和感を抱いてられるようですが)のエッセイというジャンルの本を読むのはたぶん初めて。 生な声がこちらにまで伝わってくるような、意外なほど率直な内容で、女優さんとは思えない飾らない人柄もかいまみえて、おもしろく読みました。

5.11かかと

外見へのコンプレックス(「しゃもじみたい」だの「プチ目」だの「怒り肩」「鳩胸」…初めは言われたい放題だったんですね)について書いていても、ひねくれた負の感覚がまったくないのはやっぱり人柄なんでしょう。 仕事柄とはいえ女優さんって本当に客観的に自分の顔をみてるんだなあ。 ホラー映画で注目されたことも、若い女性にとってはあまり触れたくない過去なのかと想像していたんですが、あっけらかんと客観的。 胸の奥にしまってある熱い役者魂もところどころに顔を出していて(舞台をやりたかったんですね)、自分のやりたい仕事と与えられる役割が違うことでの葛藤なんかは、仕事を持っている女性だと普通に共感できます。 芸能人に共感できると思ったことなかったんですが(世界が違いすぎて)。 女優という一般人にはうかがい知ることができない世界の実情も少しみえて、でも感覚は本当に普通の人に近くて。

この本を読むと、人はそれぞれの立ち位置で自分なりにがんばらないといけないんだなと少し励まされた気になりました。 きら星のような女優さんたちの中で独特の立ち位置にいる木村多江さん、これからもいろんな役でワタシたちを楽しませて欲しいです(個人的にはNHKの「上海タイフーン」がとても好きでした)。

5.11謎のベリー

喉が痛いのに連日でかけたのがいけなかったようで、ひどい風邪をひいてしまいました。 喉はひりひり、鼻はずるずる、集中力がまったくありません。 寒暖の差が激しいので、みなさんも風邪にはくれぐれもお気をつけて。

■いろんな記事に拍手をありがとうございます。 古い記事でも何かの参考になれば幸いです。

■おーりさん、こんにちは! 原種の一重のバラっていいですよね。 わが家は風通しがよくなくてバラがうまく育たないんですが、丈夫なナニワイバラはなんとか元気にしてくれています。 写真では地植えのようにみえますが、実は植木鉢。 背景がきれいな場所に運んで写しています。 垣根のそばに植えるとお隣さんに伸びて迷惑になるかも(トゲがキツイし)などと考えると、どこへ植えたらいいのか悩ましいところです。

これが売れるのか? みうらじゅん「いやげ物」

リンクさせていただいている「P&M Blog」のpiaaさんが以前にブログで紹介されていた、みうらじゅんの「いやげ物」。 くだらなさに興味津々でしたが、しばらく忘れていて…先日、図書館でみつけてようやく借りました。 想像以上にディープでした、「いやげ物」の世界は。 ちなみに「いやげ物」とは、もらったらイヤな土産物のこと。 なによりも、このネーミングが秀逸です。

4.28いやげ物

表紙に載っている椰子の実人形なんて、まだかわいいから許せます! ホントにね、何度も「イヤ~ッ」と言いたい衝動に駆られますよ、この本は。 誰がこんな物を作っているのか? この場所柄とまったく関係がない土産物→地名の部分だけ変えれば全国に同じパターンのものが出回っているなんて、土産物じゃないでしょ? だいたい、こんなものをイマドキ買う人いるか?と、いちいち誰にともなく突っこみたくなるものばかりが、これでもかこれでもかと紹介されています。 読みながらププッと何度も笑ってしまいました。 仕事のためとはいえ、こんなものばっかりよく買い集めたなあ、みうらじゅん。 偉いッ!となにやらほめたくなります。

ウチの近所にある有名観光寺院の参道にずらっと並んだ土産物屋を一度のぞいてみたくなりました。 あまり人気のない店の薄暗くよどんだ隅のあたりに、すごいものが眠っていそう。 でも、店に入る勇気ないけど(笑)。 ひとつだけ気になったのが、みうらじゅんは京都育ちなのに(←この本で初めて知った)頭に花を載せて売り歩くのが「大原女」と思っていること。 大原女は薪や柴、花を売るのは白川女なんだけどなあ。 といっても、もうどこにもそんな人はいないから仕方ないのか。 「は~な~、いらんかえ~」を生で聞いた最後の世代かもね、ワタシは。


4.28君子蘭

君子蘭もイヤ~って言いたくなるほど元気いっぱい。 あんまり手をかけなくてもどんどん立派になって、株分けしては立派になって、もうこれ以上増えて欲しくないんだけど。

旅の風を感じさせる写真集

積ん読本の消化を!と決意したものの、いま特に読みたいと思わないような本ばかり続けざまに読むのは楽しくないです(当然)。 そこで、ちょっとお口直しに買ってきた写真集を寝る前に眺めて、旅気分を楽しんでいます。

5.6車窓のことば

鉄道をテーマにした写真集ですが、列車の図鑑のような写真はまったくありません。 ページを繰るごとに抒情的な旅の気分があふれていて、何度も何度もジッと見入ってしまいます。 日本の美しい四季、人の営みの気配(たとえ画面に人が写っていなくても)…情感という形のないものが、しっかり伝わってくる写真の数々。 ややセンチメンタルな雰囲気もワタシはとても好きです。 カメラマンとして旅の風景を見つめてきた日々を振り返って、本人が書いた文章もなかなかいいんですよ。 空疎な美文とは真反対。 ひとつひとつの仕事をじっくり積み重ねてきた人だからこそ書ける重みと個性があります。 すてきな写真集なので、本屋さんか図書館でぜひ手にとってみてください。 この本で唯一気になったのはエディトリアルデザインのまずさ。 詩のように改行しても一文字下げないのは違和感があるし(散文なのに)、「る。」とか「た。」と一文字だけはみ出した行があちこちにあって目立つなど(ワタシはこれが字面的に大嫌い!)、文字組みがひどい。 デザイナーというよりオペレーターの仕事レベルだわ。

冒頭の一文字下げるかどうかにこだわっているくせに、自分のブログはどうなんだ?と突っこみを入れられそうですが、PC画面と本の書面はまったく別物だとワタシは考えています。 ワタシ個人の感覚では、PCでの記事やブログなどは一文字下げなくてもいいというか、下げない方がしっくりくるような気がして、意識的に一文字下げずに書いています。 もちろん仕事のときは(ワタシは紙媒体専門なので)普通に一文字下げて書き始めてますよ。 で、上記の本はなんで一文字下げていないのか…著者がこだわったとは到底思えません(そんなコケオドシをするような人じゃない)。 あとがきに担当編集者が詩人でもあると書いてあったから、たぶんその人のこだわりなんでしょうね。

5.6駅の記憶

上記の本は風景写真が中心で、こちらの本は駅を行き交うさまざまな人のスナップばかり。 表紙のような汽車がアップの写真、なかにはまったくありません。 小さなローカル線の駅、平凡などこにでもありそうな駅の風景に女子高生や子ども、お年寄り…さまざまな人の姿を重ねていて、こういう人の生活を感じさせる写真もステキです。 豪勢なホテルや旅館に泊まるだけが旅じゃない。 名前も知らない小さな駅で思い切って降りてみる、その一歩でも十分に旅なんだなあ…と思わせてくれます。 ただ、作詞家が書いた文章が写真に合ってないというか、かえって邪魔なんじゃないかな。 写真だけの方がよかったのにな。

検索にかかって欲しくないので、あえて著者名と書名は書きません。 ご本人がこの記事を読むのは全然かまわないけれど(パソコンで検索なんてしない人だけど)、面倒くさい担当者にこのブログがみつかるとイヤなので。 興味のある方はamazonのココココでどうぞ。

5.9オダマキ

庭ではいま、苧環(おだまき)が咲いてます。 濃い紫もあるけど、淡いピンクが好き。 最近は洋風の苧環をあちこちでみかけますが、うつむき加減に咲く地味な姿の方が和の花の風情があっていいな。

ひと味違った京都案内 木村衣有子「京都のこころA to Z」

なんとなく気になっていたけど買うのもどうかと思っていた本があったので、図書館でついでに借りました。 腐るほどある京都本の中でちょっと心ひかれた「京都のこころAtoZ」です。

2.13京都AtoZ

単なる物欲刺激型ガイドブックではなく、著者が京都の気になる場所やモノを、自分の思いや記憶をからめて紹介しています。 ただ主観的な印象や思い入れを書くのではなくて(そういう項目もあるけど)、きちんと取材して調べて書いてる姿勢が伝わってきて好感が持てました。 項目の立て方というか切り口がひと味違って、それもよかったです。 プロのカメラマンが撮った写真に雰囲気があって、基本的に見開きに写真1カットで1ページ+文章1ページというレイアウトや紙質・装丁がセンスいいです。 でもなあ、「文筆家」と名乗って、このレベルの文章なのか…。 別に悪くはないのですが、でもすばらしいこともないです。 軽くサラサラッと読める文章が、いまは受けるんですね。 う~む、やっぱり項目立てがいいんだな、この本は。 お勉強になりそうだし、貸出期間を延長してもう少し研究しようかな。 ちょこっと目先の変わった京都散策をしたい人にはおすすめです(穴場ってほどのものは載ってないけれど)。

個人的な備忘録として
「亀屋良永」の大原路…季節によって色を替えるこの和菓子は知らなかった。
「豊田愛山堂」の匂い袋…どんな香りなんだろう、きものに合いそうな感じ。


2.13雪の東山

今日の東山。 細い枝にまで雪が積もって、空はときどきパッと晴れわたり。 日本にいることを一瞬忘れそうな風景でした。 最高気温は4℃。 寒い寒いッ←同じ言葉(形容詞?)を2回繰り返すのって京都弁なんですってね。

モノクロの美しさ再発見 武田花「猫・大通り」

母が応募したことを忘れていたカメラ雑誌の懸賞で当選!(何かが当たるなんて、わが家では非常に珍しい) 武田花の写真集「猫・大通り」が届きました。

12.21猫大通り

東京の路地裏で出会った猫(野良っぽい猫が多い)の写真を集めたもので、美猫じゃない個性的な猫たちが風景を楽しく見せています。 猫のかわいらしさもあるけれど、なによりも写真集としてすばらしいと思いました。 武田花の写真はときどき雑誌に掲載されている2、3枚をみかける程度で、じっくり眺めたことはありませんでした。 だから適当に「武田花って、こういう作風なのね」と分かってもいないのに分かったような気になってました。 錆びたトタン板の前に野良猫がいれば武田花…みたいな感じで。 でも、やっぱりそれだけじゃなかった。

かわいい猫の写真集なら世の中にいくらでもあるけれど、この写真集は武田花にしか撮れない世界。 それもモノクロのフィルムでなくては表現できないものが、確かにココにはありました。 モノクロにすれば写真がプロっぽく見える、と誤解している人が結構いるけど、とんでもない! モノクロって本当にむずかしい。 武田花が撮った路地裏の風景には、光と影の対比から光りが感じられるし、構図に幾何学的なパターンのおもしろさがあったり、モノクロでなくては表せないようなモノの質感がある…とワタシは思う(写真の鑑賞法なんてまるで分かっていないのだけれど)。 たとえば段の上から猫がのぞいている写真は、雑草が生えた石段そのものがステキ。 朽ちかけたコンクリートと、その隙間から生い茂っているドクダミやナズナ、それぞれの質感が目で見る以上に迫ってくるのは、やはりモノクロならでは。 その上に猫が小さく写っていることで、フッと空気がゆるんでいる。 いいなあ、この空気感。 

それにしても、どうすれば猫を入れた構図で、ここまでシャープな画像が撮れるんだろう?と素人のワタシは考えてしまう(プロに対してなんて失礼な疑問だ)。 スナップのはずなのに、質感が出るほどしっかり絞れてるのが不思議。 美術や写真に関心がない父まで、この写真集をしげしげ眺めて、「猫は写真になるんだなあ。犬だと、なかなかこういう風にはならないよな」と、珍しくもまともな感想を述べていました。 犬が好きだけど、ワタシも写真にするには猫の方がおもしろい気がします。


12.21侘助

小さな椿、侘助(ワビスケ)が咲き始めました。 ふと外を見ると、独り者らしきメジロが侘助の花から花へ蜜を吸っていました。 ときどき、そばのつくばいの水を飲んで、その横の隠れ蓑という木の枝にとまって、風にゆらゆら。 おひとりさまでも楽しそうでした(笑)。 仕事のバカみたいな直しを終えた直後で、愛らしいメジロを眺めたら気持ちが和みました。 また、遊びに来てね。

今ごろ読んだ 雑誌「yom yom」第1号

しばらく仕事に集中したいので、このところ読書は我慢しています。 でも、なにも読まずに一日を終わるのはつまらないので、ここのところ新潮文庫から創刊された雑誌「yom yom」第1号をちびりちびり読んでいます。 創刊されたのは知っていたのですが、本屋さんのどこに置いてあったのか…ぜんぜんみかけなかったもので、今ごろになって文庫コーナーでみつけて買いました。

3.24yom yom

文芸誌の新しいスタイルを作ろうとしているようですね。 読者ターゲットは活字中毒気味の若い女性なのかな? 確かにワタシも(特に若くはないけど…)文芸誌なんて買ったことないのですが、新潮文庫が好きなので抵抗なく手にとりました。 最近ワタシの中ではひさびさの大ヒットだった梨木香歩「家守綺譚」の続編が載っているのが、購入の最大の動機。 でも、ほんの少し読んでみたところでは「あれ…ちょっと違うかも」と違和感がありました。 読むのがもったいなくて、まだ全部読んでいません。 執筆陣は江國香織・角田光代・重松清・三浦しをん・いしいしんじなどなど。 こんなに最初に売れっ子作家を並べてしまったら、あとが続かないんじゃないかとコチラが心配になるほど(大きなお世話でしょうが)すごい顔ぶれです。 細切れのものを読むのはあまり好きではないのだけれど、読書にのめりこんではいけない今のような状況ではちょうどいいみたい。 

3.24アレクサンドロス本

寝る前はこの本をぼつぼつ読んでいます。 歴史の本ですが、読み物として楽しめる内容です。

ずいぶん前に買った小川洋子「ミーナの行進」は読みたくて仕方ないのを必死で我慢しています。 装丁もすてきなので、この本は迷わず「買い」でした。

3.24ミーナ

パラパラとページを繰っていたら、下のような挿画があってうれしくなりました。

3.24ミーナ2

ワタシのブログ名とリンクしてる! 鳥=Vogel+Kirsche ドイツ語をデザインに使っているんですね。 このマッチ箱、欲しい(笑)。

 3.24花かんざし

これはキク科の「花かんざし」。 春の雨が降り続いてぼんやり薄暗い玄関で、小さな花が群れ咲いていました。 今夜はスポーツ中継三昧。 安藤美姫の金メダルに思わず涙しました。 オリンピック前後の追い詰められた状況から復活できてよかったね!

女の視点で恋愛を書くと 「最後の恋」

今日も恋愛小説週間は続行中。 今日読んだのは、またまた恋愛小説の
アンソロジー「最後の恋」です。 昨日の「I Love You」が男性作家ばかり
だったのに対して、「最後の恋」は最近活躍している女性作家の小説ばかり
集めた本です。

6.10最後の恋

執筆陣は阿川佐和子、角田光代、沢村凜、柴田よしき、谷村志穂、乃南アサ、
松尾由美、三浦しをんの8人。 読んだことがあったのは角田光代と乃南アサ、
柴田よしき、谷村志穂のみ。 それもほとんどは1冊だけで、流行作家に
ほんとうに疎くなっていることを思い知りました。 テーマは題名の通り、
女性にとっての最後の恋。 読み終わってから気がついたのですが、YEBISUの
サイトに連載されたものらしく、どの作品もビールやウィスキーなどが小道具
として登場します。 三浦しをん「春太の毎日」は10ページ程度ならいいけど
つまらない仕掛けで引っぱるほどの内容ではなく×。 谷村志穂「ヒトリシズカ」
も、主題が最後の恋だからといって、ありがちで安直すぎる設定で興ざめ。 
阿川佐和子「海辺食堂の姉妹」と沢村凜「スケジュール」もインパクトに
欠けています。 一番おもしろいと感じたのは柴田よしき「LAST LOVE」。
こんなことあるよなあ、と結婚について普遍的なテーマを過剰に演出せず
さらりと描いていて共感できました。 松尾由美「わたしは鏡」はミステリ
仕立てで、ひとひねりが効いています。 乃南アサ「キープ」は15歳の失恋
以来、誰も愛せなくなった女性が最後の恋を見つけるまでを独白で描写。
平凡な話しながら、読ませるだけの筆力を持っているのだなと乃南アサを
見直しました(直木賞受賞の「凍える牙」があまり楽しめなかったので)。
角田光代はいつものネッチリ重い空気がなくて、ワタシは読みやすかった。

沢村凜と柴田よしき、角田光代の作品からは、女性が抱いている結婚観が
かいま見えます。 昨日読んだ「I Love You」で感じた男性の、よくいえば
ピュア、悪くいえば単純な恋愛観とは真反対に、女性が恋愛するときに
あるいは結婚を決めるときに、いかに計算しているかを暴露しているとも
いえます。 男性が読んだら「女の人って、こんなこと考えてるの?」と
ちょっと引くかも(笑)。 でも、男性はそういう計算高い女性を「かわいい」
と感じるんだよなあ…独身女性としては残念。

3日連続で恋愛小説のアンソロジーを読んで飽きてきたのか、3冊の中で
この「最後の恋」が一番印象薄いです。 読む順番によって感じ方が違った
かな? 明日は石田衣良の最新作の恋愛小説を読む予定。 これは主人公の
年齢設定にワタシが近いから、個人的には一番興味あります(今までのは
仕事がらみの読書)。

男性からみた恋愛 アンソロジー「I LOVE YOU」

昨夜は雨音に目が覚めるほど激しい雨でしたが、日中は曇り。 家の中は
少し肌寒いくらい。 梅雨入りしたというけれど、明日からしばらくは晴れる
のだとか。 ホントかな。

昨日に引き続き、恋愛小説月間のワタシ。 急いで読まなくていけないから
恋愛小説週間というべきか。 今日も恋愛小説のアンソロジーです。

6.9 I Love You

「I LOVE YOU」は人気を集めている男性作家による短編小説集。
伊坂幸太郎、石田衣良、市川拓司、中田永一、中村航、本多孝好と、若手の
人気作家がずらり…といっても、ワタシが読んだことがあるのは前半3人だけ。
伊坂幸太郎「透明ポーラーベア」、中田永一「百瀬、こっちを向いて」、
中村航「突きぬけろ」は純粋な意味での恋愛小説というよりは、良質の
青春小説という感じ。 6編すべてがほのぼのとしていて、ドロドロした愛憎は
影も形もありません。 懐かしい中・高生の頃を思い出すような淡い恋愛
ばかり。 意外なほど健康的でほほえましい恋が次々に登場します。
男性からみた恋愛は、こんな感じなのかなあ。 男の人って、かわいい(笑)

伊坂幸太郎は独特の雰囲気を醸し出してはいるけれど「へぇ、こういう作品を
書くこともあるんだ」といい意味で裏切られました。 石田衣良「魔法の
ボタン」は、少し男っぽくて恋愛から遠ざかっている女性が読んだら、
励まされそう。 石田衣良にしては珍しくおしゃれでない恋愛をしゃれた
小道具で手慣れた筆致でまとめています。 「いま、会いにいきます」の
市川拓司が書いた「卒業写真」は、予想に反してコミカル。 顔も名前も
思い出せない同窓生から街で声をかけられたら…。 ぼんやりもののワタシも
気をつけないと。 中田永一はぜんぜん知らない作家でした。 読み始めた
ときは特に好みに合うとは思えなかったけれど、結局一番よかった。 根暗で
女の子と縁がないとあきらめきっている平凡な男子高校生が巻き込まれる
三角関係を背景に、切なく温かくて平凡な恋がみずみずしい感性で描かれて
います。 中村航の作品は、恋愛よりも男子大学生同士のちょっと不思議な
友情がテーマ。 期待してなかったわりに、いい感じでした。 本多孝好の
「Sidewalt Talk」は過ぎ去った恋を静かに見送るオトナの物語。 この
本の中では唯一、主人公がオトナでした。

今までアンソロジーを読んだことはほとんどなかったのですが、昨日・今日と
アンソロジーを読んでみると、作家の個性が際だって、なかなかおもしろい
ものです。 恋愛をテーマにまとめた短編は、少ないページ数の中に、
それぞれのオリジナリティが凝縮していて、ページを繰るのが楽しい。
実はまだ読む予定の恋愛小説が2冊スタンバイしてます。 恋愛小説を
読むのはすごく久しぶりですが、たまにこういうのを読むと心が柔らかく
なるみたい(笑)

6.9カタツムリ

雨上がりはカタツムリも元気。 カタツムリにとっては超高速(たぶん)で
這ってました。 パソコンでイライラの何日間かの中で、唯一なごめたのは
NHKのBSで放送していた中国映画「山の郵便配達」を観ていた時間。 昔、
映画館で観たことがあるんですが、何度観てもいいです。 地味な映画だけど
しみじみとした親子の情愛や人情、人生のほろ苦さが言葉少なに描かれて
とってもおすすめです。 あまり映画を観ない両親も「いい映画やねえ」
と喜んでました。 道案内をする犬の「次男坊」もいい味出してます。
でも、あの名前は「次郎」と訳した方がいいよね、と母が鋭い指摘。

恋愛小説における作家の競作 「空を飛ぶ恋」「Love Letter」

ここ数日、新しいパソコンが届いたのにネットにつながらず悶々というか
七転八倒、もがき苦しんでおりました。 疲れ果てて、ついにはまぶたが
お岩みたいに腫れ上がって、気分だけでなく体調までどんより。 パソコンの
知識皆無でどこをどうしたらいいのかどころか、どこがどのように問題なのか
さえ把握できず、イライラのあまり倒れてしまうのでは…と自分で自分を
心配してました。 2台のパソコンを並列に無線LANでネットに接続するのが
これほどまでにたいへんだとは思いもしませんでした。 隣にコンピュータ
専門学校卒業生が住んでいるのを思い出して、助けを求めたのに結局
4時間かかって成果なし。 このままでは仕事に支障がでるから、と
最後は自力でつなぎました。 でも、なぜつながったのか、あまりよく
わからない(笑) もう二度と、こんな思いしたくない。 疲れました。
ま、パソコンのイライラ話はこれくらいにして。

ここのところ恋愛小説のアンソロジーがいろいろでていますね。 文庫の
最新刊「空を飛ぶ恋」を本屋さんで見かけて、さっそく読んでみました。

6.8空を飛ぶ恋

「ケータイがつなぐ28の物語」という副題がついています。 島田雅彦、
小池真理子、重松清、堀江敏幸、唯川恵、石田衣良、椎名誠、平野啓一郎、
町田康、柳美里、金原ひとみ、高村薫、北村薫など28人の超豪華な顔ぶれに
つい買ってしまったのですが、1編の長さがあまりにも短くて、何も語らない
うちに紙面がつきた、という感じの作品ばかり。 ショートショート並みの
短さという制約の中で、まとまりのある世界を構築できた作家はひとりも
いませんでした。 文字数の少なさとともに、ケータイが小説の主題となるには
まだ歴史が浅すぎるのかもしれません。 ケータイを小道具にしてだと、
手腕のある作家でも話に深みが出ないようです。 この本はおすすめしません。

6.9Love Letter

訳あって恋愛小説月間と化しているため、次も恋愛小説アンソロジー
「Love Letter」。 こちらは石田衣良、島村洋子、井上荒野、三浦しをんなど
11人の作家が「ラブレター」にかかわる作品をそれぞれのスタイルで紡いで
います。 短編ながら「空を飛ぶ恋」ほど短くなくて、作家ごとの個性や
物語性がでていて、それなりに楽しめました。 装丁が凝っていて美しく、
内容もあまりドロドロした作品がなくてサラリと気持ちよく読めます。

名前は最近よく耳にしていても、石田衣良以外読んだことのない作家ばかり
でしたが、それぞれ個性豊か。 浅田次郎になってしまったのか…と思うほど
あざとい気もしながらホロリとさせられた石田衣良「ありがとう」。 同系列の
桐生典子「竜が舞うとき」にも、わかっていながらウルッ(ちょっと悔しい)。
2人称で語りかける着想は、池澤夏樹の「骨は珊瑚、目は真珠」そっくりでは
あるけど、嫌いじゃないです、こういう切ないトーン。 川端裕人「ラブレター
なんてもらわない人生」と井上荒野「虫歯の薬みたいなもの」は、昔の淡い
思い出が、30歳近い主人公の心を温かく包む心地よさ。 しっかり者の
お姉ちゃんが妹ののびやかな恋と生き方に初めて共感する島村洋子「空」。
重い内容の作品を読む気力がないときでも楽しめる小説ばかりでした。
そのぶん、魂にドスンとくるような作品はなかったともいえますが。

6.8アジサイ

関西も梅雨入りしました。 ほんの少し花びらがほころんで色が出てきた
アジサイ。 満開の真っ青もきれいだけど、薄緑と淡い水色の今ぐらいも
みずみずしくていいな。