旅の予定がなくても 林丈二「オランダ歩けば…」

世の中はゴールデンウィーク。 みなさんはどう過ごされています? ワタシは昨日までびっちり仕事でした。 「16連休だ」とか「出国ラッシュだ」といったニュースを横目に仕事をするのは、集中力がなかなか出なくて困った環境です(と誰にともなくグズグズ仕事していた言い訳をしてみる)。 昨夕、先方にメールして解放されました。 やれやれ。 それにしても、ちょうどタイミング悪く新型インフルエンザ騒ぎが起こって、海外旅行の予定を立てていた方は気をもまれたでしょうねえ。 これ以上広がらないといいんですが。

さて、どこかへ行く予定はいっさいないワタシは、せめて気分だけはGW風味を味わってみたいと、図書館で借りた林丈二「オランダ歩けば…」をパラパラ眺めて楽しみました。

5.5オランダ歩けば

ついこの間読んだ同じ著者の「パリ歩けば」より、こっちの方がずっとおもしろかった! 「ゲーブルストーン」という石の絵の看板のようなもの(=番地制度導入前に各戸を識別するためについていた)と著者が収集している古絵はがきを探し歩いて、オランダ国内をユーレイルパスを片手にひたすら歩き回った24日間の旅について書かれています。 「パリ歩けば」よりカラー写真もイラストも多くて(著者はイラストレーター)、さらに知人に宛てて旅先から出したイラストとコラージュのお手製の絵はがきも掲載されていて、楽しさ倍増でした。

「オランダ歩けば…」は著者が奥さんと旅した記録を日を追って紹介しているスタイルなので、旅の気分が味わえる本です。 ツアー参加型ではなく、自由に自分たちで節約型の旅をするのが好きな人なら、オランダに旅する予定がなくても楽しめると思います。 ただ、この著者にグルメと買い物の情報を期待してはいけません。 食事はお昼に軽いものをカフェなどで食べて、夜はテイクアウトのお総菜を買って宿で食べるのが、このふたりの旅。 毎日毎日、昼間にものすごく歩いている(2万歩近く)から、日が暮れる頃には宿でバタンキューみたい。 泊まるホテルもお手頃なところばかり。 そんな旅の仕方を開けっぴろげに書いている点にも、節約型の旅ばかりしているワタシは親近感を持ちました。

5.3姫空木

数日前からヒメウツギが満開。 うつむきかげんに白い花をたっぷり咲かせています。 今日は陽ざしがなかったので、ここには2日前に撮ったものをアップ。 今日は仕事が終わった解放感で、母の手伝いで半日庭仕事にどっぷり。 ミニトマトやサラダ菜を鉢植えで育ててみることにしましたが、収穫できるかな。
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観光や買い物とは違うパリ 林丈二「パリ歩けば」

イラストレーターの林丈二は「犬はどこ?」が楽しくて、図書館でたまたまみつけた本「パリ歩けば」を借りてみました。 ちょうど友だちがパリを旅している頃だったので、ふだんはほとんど興味がないパリに反応したのかも。

4.22パリ歩けば

この本には、パリでの買い物や食事、おしゃれなカフェなんていう”ふつうの観光”に関わるものが潔いほど一切でてきません。 この本を読んでもなんの知識も得られません。 この本にそういうものを求めてはいけません。 ただぶらぶらパリを歩いてみつけた小さな小さな発見が写真と短いコメントで紹介されているだけです。 それが、なんとはなしに「パリの空気」を伝えていて、ワタシはパラパラと眺めて楽しめました。

建物の壁面にあいている目的不明の空気穴や小さな扉のデザイン、扉やドアノブ、マンホールのふた、番地の表示プレート…見過ごしてしまいそうな建物や街角の小さなデザインを採集してあります(この本をみていると昆虫採集を想起しました)。 意識されることはないけれど、こういう小さな古いものが街のいたるところに残っていることが、パリの街に独特の情緒と奥行きを添えているのかな。 ドイツ人だったら「風雨にさらされて汚くなっているから撤去あるいは塗り直し」となりそうなものがいっぱい残っている街角って、一見すると汚らしいようで佐伯祐三が絵に描いたようになんともいえない趣があるんですね。

4.23黒谷さんの猫

こちらは日本の趣。 「黒谷さん」と地元では呼ばれているお寺の境内で。 桜の季節に散歩していて、気持ちよさそうに日だまりで昼寝していたので近寄って写真に撮ったら、嫌われてしまいました。
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気持ちのいい旅エッセイ 土器典美「散歩のように旅、思い出しては料理。」

土器典美「散歩のように旅、思い出しては料理。」も年末年始に、ちょぼちょぼページをめくった本です。 どちからといえば「お勉強」として、ちょっと目を通してみたかった本なので、珍しく購入はせず図書館で借りました(なので表紙画像もありません)。

著者は、ふらりと訪れたロンドンに6年間滞在して、アンティークのバイヤーとなり、やがて帰国してアンティークショップを経営していた経歴の持ち主です。 よくある自己満足型エッセイかと勝手に決めつけ、なんの期待もなく読んだ本でしたが、意外にも(失礼!)かなり上質の旅エッセイでした。 作家でも、もっとワケのわかんないような駄文を書いたりしているのをよく目にしているので。 ごく個人的な旅の記憶でありながら、旅先で出会った人(日本人が多かったけど)の姿を静かな筆致で、ごくサラリと書いていて、独特の心地いい読後感が残りました。 著者が撮った写真もなかなかセンスが良くて、気楽な本が読みたいときにピッタリです。 ただ、意味不明の表紙が謎でした。 ご本人の写真を使えばよかったのに…制作上の制約があったのでしょうか?(印刷のコストとか)

それにしても、毎年1、2ヶ月の旅に出かけられて、それもパートナーである男性もいつも一緒だなんて…羨ましすぎます。 ああ、ワタシもいつかこんなご身分になりたいものです。 とはいえ、著者の旅は、高級リゾートホテルに泊まったり、ブランドものを買うようなことはいっさいしていない(ご本人は、そもそもそんな旅をしたくもない様子)ので、そういうところにも親近感を覚えました。


後輩の訃報をメールで受け取りました。 悪性リンパ腫だったそうです。 卒業してから会ったこともないし、それほど親しかったわけではないけれど、自分より年下の人が先に逝ってしまうのは本当に悲しいです。 寂しくて悲しくて、深夜にひとりでビールで献杯。
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旅の本いろいろ

ここのところ、仕事の資料として、手元にある旅に関する本をいろいろ読み直していました。 以下は個人的な備忘録として。

■沢木耕太郎「天涯/第一/鳥は舞い光は流れ」
(写真を撮り忘れ。後日アップします)
この本、高かったんですよお。 でも、発売当時は沢木耕太郎がお気に入りだったのでがんばって買いました。 で、この本を手にして沢木さんにお別れの気分になってしまったんだっけ。 ひさびさにページをめくってみました。 う~む、やっぱり素人写真を(たとえ著者本人が本の中でそう認めているとしても)いっぱい載せすぎでしょ。 写真がヘタって意味じゃないです。 プロのカメラマンでももっともっとヘタクソな人が世の中にはいっぱいいますから、それよりは数段マシ。 写真としていいものもあります。 でも、こんなにたくさん載せるほどのことはないと思います。 せめて5分の1くらいの量にしておけばよかったのに…という気がしてなりません。 同じアングルで同じ被写体を、被写体深度を変えて撮ってる写真を並べるとか、意味不明です。 沢木耕太郎は文筆家なんだから文章で勝負して欲しかった…手を抜いているのか?なんて、初めて読んだときは思ったんだっけ。 本人の文章だけでなく、さまざまな引用文を交えて「旅について」を沢木節で語っていて、結構いいな、と思う文章もありました。 全体にかなりメランコリックなトーンが強いですけど。 ただ、それが器用にまとまりすぎていて、広告のコピーみたい。 口当たりがいい分、どこか薄っぺらい感じがします。 そんなところが今も昔も不満。


■沢木耕太郎「象が空を」
4.27象が空を

上の本がいま読んでも「なんだかなあ」だったもので、以前好きだった全エッセイ集を読み直してみました(主に「書く」の章を)。 この人は、若いときの文章の方が「本気さ」「書くことの切実さ」が伝わってくる気がします。 うまい文章がいい文章とはかぎらないもんだなあ…と改めて認識しました。


■辻邦生「美しい夏の行方 イタリア、シチリアの旅」
4.27美しい夏の行方

辻邦生は大好きな作家だったのに、これも買っても読み通せなかった1冊。 あとがきに著者が書いているように、いつものような文学や文化的背景をからめず、ストレートに旅の気分を詳細に書いている。 そこがどうもピンと来なかった原因かもしれません。 イタリアが大好きで、何をみても手放しで大絶賛。 それなのに、なんで愛読者のワタシがついていけなかったのか? 編集部ですべて手配済み、お膳立ての整った旅なので意外性がなくて退屈なんですね、たぶん。 旅ってほんとうは予定がキチッとしすぎてない方が楽しいのでは。


■村上春樹「使いみちのない風景」
4.27使い道のない風景

ワタシが苦手なムラカミさんです。 10年近くワタシが放置した本。 チラッと中を見て、ワタシは読む気をなくし…なぜワタシがこの本を買ったのか、いまとなってはワタシにもわからない。 謎だ。 今回、旅の本を幅広く読もうということで、ワタシが読めなかったものも必死で読んでみた。 ワタシにとっては、そういう本の一冊。
……と、ここまで書いて疲れました。 著者のまねをして「ワタシ」(ムラカミさんはもちろん「僕」なわけですが)を不自然なほどいれてみました。 「僕が」「僕は」「僕の」「僕にとって」…1ページに8行しかないのに、8回「僕」がでてくることもあったりして「僕はもういいよ」とムラカミさんのファンじゃないワタシは心底ウンザリ。 内容はどうでもいいような意味のない風景が自分の中に蓄積されて、ふっとフラッシュバックすることがある、というようなことについて書かれているだけ。 そんなことは沢木耕太郎やスタイリストの岡尾美代子でも書いてるし、「特別な感覚」とはいえないと思います。 ファンじゃない人は読まなくていいです。 稲越功一というカメラマンの写真がふんだんに入っていて、それで救われてます。 特に好きな写真というわけではないけれど、さすがプロなので光のとらえ方や意識的なブレがいいです。


■岡尾美代子「Land Land Land 旅するA to Z」
4.27ランドランドランド

いきなり雑貨系に変化!(笑) この本はずっと以前に友だちが「こんな本あるよ」とみせてくれたんだけど、そのときは写真が全部ポラロイドのボヤ~ッとしたものばかりなので興味をひかれず。 中身は読んでいませんでした。 たまたま図書館にあったので、ついでに借りて今度はちゃんと読みました。 この著者は雑誌「オリーブ」で活躍した人気雑貨スタイリストなんですね。 旅についての断片を「A to Z」でまとめた本です。 じっくりみると、ページネーションやレイアウトデザインがなかなかいいセンス(さすがスタイリスト)。 文章も気楽にスラスラ書いてあるだけといったさり気なさなんだけど、雑貨の本によくある「ド素人文章」とは違う感性とセンスが感じられました。 最後についているスコットランド旅日記の中で「インド夜想曲」を読んで夢中になる…とあって、やっぱりねと思いました。 おぬし、なかなかやるな。 しかし、寒々しいところで読むのに適しているかどうかは、はなはだ疑問な選択だけどね。 ところで最近、この方が撮っているようなボヤ~ッとした写真が大流行ですねえ。 ちょっとした気分を写しこむのはわかるけど、こればっかりっていうのはどうでしょう? それもフィルムが焼けて変色していたりして。 ワタシは好きじゃないなあ。


■柳沢小実「スカンジナビア・ノスタルジア」
4.27スカンジナビア

えっと、この著者はエッセイストで、自称「乙女系」だそうです。 でも、近ごろ流行の乙女系ってなんなのだ? ミニマルなデザインの装丁や紙の質感などがよくて、「今の気分」を勉強しよう(?)と2年前くらいに買ったまま読み通せずに放置(あれ、ワタシってば放置してばっかりじゃないの?)。 この方、日大芸術学部の写真学科を出てられるので、雑貨の写真はそれなりにキレイです。 でも、ほとんどが買ってきたものを家で並べて撮っているようで「旅」の空気感がありません。 写真より文章が多いです(エッセイストと名乗るからには当然か?)が、その文章がどうも…「ですます調」で書かれているからよけいに鼻につくのかしら。 別に表現が稚拙なわけではないけれど、なんというのか「私の価値観だとこうよ」みたいなのを高らかに宣言されているのですが、それがちっとも独特じゃない。 オリジナリティがない。 買ってきたものや行った場所も北欧というだけで、まったく新鮮みがない。 こういう本ってどうなのかしら?


■伊勢華子「ひとつのせかいちず」
4.27ひとつのせかいちず

世界中を旅して、画用紙と24色の色ペンで子どもたちに思うままの世界地図を書いてもらった、その絵とエピソードが国ごとに載せられています。 子どもとのふれあいのエピソードひとつひとつに胸がキュンとさせられました。 言葉にセンスがあると思います。 この著者はアイドルの歌の作詞も手がけているとか。 やっぱりね。 でも、言葉が薄っぺらくないんですよ。 きっとこの人はほんとうに子どもが好きなんですね。 実際には、現地の言葉に堪能じゃないはずだから、これほどのコミュニケーションがどうとれたのか…なんて意地悪なことも考えましたが。 この本は絶版らしく買えなかったので図書館で借りました。 もう1冊の著書「たからものって何ですか?」は入手できそうなので、買おうか検討中。 余談ですが、これを読んだら現在形だけで文章が書きたくなりました。 


■「ゴーゴーフィンランド」
(これも写真を撮り忘れ)
フィンランドのお店紹介がほとんど。 とってもすてきなお店が載っているわけでもないけれど、上の「スカンジナビア・ノスタルジア」に欠けていた現地での空気感が詰まっていて、眺めているとなんとなく旅の気分が味わえます。 それ以上のものは特にありません。


■三枝克之「旅のカケラ パリ*コラージュ」
(これも写真撮ってない!)
この本もなぜ買ったのか謎。 映画「アメリ」をみた後で、帯にアメリの写真が載っていたからか? またまた素人写真ドッサリですが、ご本人もたいした写真ではない自覚があるためか、小さな写真をギッシリ詰めこんでいます。 とにかくギューギュー。 この混沌としたような書面から、大都会パリの猥雑な雰囲気が伝わるのかも。 とにかくパリが大好きで、何度も行っているリピーター向けの本ですね。 何度も行ってるんだからフランス語もちょっとくらいわかったら、もっと楽しいなと思っている人なら楽しめそうです。 それ以外のワタシのような人が手にしても仕方のない本でした。


と、あれこれ読んでみたのですが、なかなか「これはスゴイ!」という本に出会えませんでした。 なんとなく本棚をみていたら、ずっと前に買った詩集が目について読んでみたら、この方がずっと何か今のワタシの心に訴えかけるものがありました。

■岸田衿子「いそがなくてもいいんだよ」
4.27詩集

なんだか相田みつおみたいなタイトルですが、詩は全然そういう感じではありません。 もっとファンタジックで、でも詩としてはとても平易な言葉で表現されています。 この本は装丁もすてきなんですよ。 ところどころに野の花や実の美しい挿画があって、それが自然を感じさせる詩とよく合っています。 木とか鳥とか風とか星とか自然が好きなので。 ひさびさに読んでみてよかった。 心に響く表現ってつくづくむずかしい…(ため息)。

そして最後に、自分が10年足らず前に書いた文章を改めて読んでみました。 すごく仕事が楽しくて、憧れていた媒体での初仕事だったからものすごく気合いを入れて書いたんだっけなあ。 いまよりずっといい文章書いてたのね、昔のワタシは。 その直後に義姉が亡くなり、大混乱の日々の中で、なんだか大切なものをどこかに置き忘れてしまった感じ。 初心はどこへ行った?

4.27ウツギ

ウツギの花もそろそろ終わり。 薄紅色の花が散って、この数日の庭は白い花が目立ちます。
Category: 読書 旅本