知的な旅をともにする 池澤夏樹「パレオマニア」

昨日と今日は本当に気持ちのいい秋晴れでしたね。 お天気がいいから散歩したいなあ、と青空を見上げながら、グッと我慢して家で地道に仕事のためのテープ起こしに励みました。 合間に洗濯物を干したり、夏物のセーターをしまうために次々に手洗いしたり、ベランダへ出るだけでも気分が晴れ晴れ。 やっと布団も干せてうれしい。 今夜、お日さまのいい匂いに包まれて眠るのが楽しみです。

さて、ようやく池澤夏樹「パレオマニア 大英博物館からの13の旅」の感想です。

10.2パレオマニア

本の帯によると「パレオマニア」とは「誇大妄想狂」のことらしいです。 池澤夏樹が大英博物館で気に入った遺物を選び、それがもともとあった場所を世界各地に訪ね歩いて書いた随筆です。 遺跡を前にして深い洞察力で思索を重ねたり、あるいはさまざまな方向へと興味の幅を広げていったり、池澤夏樹らしい知的な世界がステキ。 古代の文明や遺跡・遺物に興味がある人なら楽しく読めると思います。 池澤夏樹らしい非常に知的な視線に導かれつつも、こむずかしくなったり格調高くなりすぎたりしない平易な文章、そして著者が立っている視点の高さが親しみやいレベルなのが魅力。

この本は池澤夏樹の分身を「男」と表記して、三人称で書かれているのですが、それはひょっとしたら池澤夏樹が「私」と書くともっと知的標準が上がってしまうところを、あえて下げるための工夫なのかなと思いました。 あんまり事前に勉強しすぎず、現地で「ガイドブック」を広げて知識を得たりしているところからして、あえて「普通っぽさ」をねらったのなと勘ぐったり(笑)。 だから、この本は「読むぞ」と構えるんじゃなくて、気が向いたらパラパラとページをめくるという感じがぴったりします。 この本を読んだら、カナダの太平洋岸に残る原住民が住んでいた地と、カンボジアのアンコールワットへ行ってみたくなりました。

最後に大英博物館の成り立ちに対する池澤夏樹なりの答えをきちんと書いているのもよかったです。 各地から略奪同然で運びだしてきたという博物館の成立過程と、それでも世界の貴重な文物を1ヶ所でみられることの利点について、真摯に向き合って書かれていました。 大英博物館は無料なのがすばらしいと思います。 ワタシもずっと以前、トランジットのついでにロンドンに泊まった際、丸2日しかなかったのに2回も大英博物館に行って、その内容のとんでもない価値にもかかわらず入場無料であることに感動しました。 ロンドン人がうらやましい! 日本とは文化に対する価値観がまったく違って、「負けた」と思いましたよ。

10.1白いホトトギス

今年は真っ白のホトトギスが増えました。 紫色のホトトギスと交じって、花心だけ薄紫の花も毎年咲くのですが、今年はなぜか純白しか見かけません。
Category: 池澤夏樹

東京青春漂流記 池澤夏樹「バビロンに行きて歌え」

12月中に読んでいたのに、体調不良で感想が書けなかった池澤夏樹の「バビロンに行きて歌え」。 実は、この小説を読むのは3回目です。 ずっと昔、池澤夏樹に夢中だった頃に新刊本で読んで、若かったワタシはいたく感動しました。 ところが、誰かに貸したまま返ってこなくて、文庫化されたときにまた買って、またその本もどこかへ行ってしまって。 同じ本を3冊も買ったのは、この小説と梨木香歩「家守綺譚」だけです。

戦闘が続くアラブの国から密航してきた若者がたどり着いたのは、縁もゆかりもない東京。 ほんの一瞬滞在するだけで、すぐに故国へ帰れるはずだったのに、思惑が外れて見知らぬ大都会に、たったひとりでパスポートもなしに放りだされてしまい…。 日本語も話せないアラブの青年が、さまざまな出会いを通して、やがて生まれて初めて「自分の居場所」をみつけていく過程を情感豊かに描いた作品です。

大都会・東京の人間模様と音楽をからめた、爽やかな青春小説です。 池澤夏樹にしてはちょっと珍しいほどストレートな青春もので、純文学系からはあんまり評価が高くない作品らしく、池澤夏樹もこれに似た作品は書いていないと思います。 でも、物語の語り手を次々に違う人物にリレーしながら、物語として先へ先へと進めていく構成はとても精緻。 半端な筆力では書けないと思います。 3度目だからストーリー展開は知っているし、昔のようなワクワクした感じはありませんでしたが、やっぱりかなり好きな小説です。 初めて読んだときは、老獣医さんのところで泣いた記憶が…若い読者だとより感覚的に近く感じられるのかもしれません。

20歳近くなって急に「読書っておもしろい」と言い出した姪に、お正月にあげてしまったので、また手元に残りませんでした(表紙も撮りそこねてしまった)。 こういう視点がずれるような小説をちゃんと読めるのかなあ…読んで楽しめて、また違った分野(ふだんは重松清か恋愛小説を読んでいるらしい)の本も読んでみようと思ってくれるといいな。

1.8花かんざし

今日は少し暖かくなって、日だまりで花かんざしも気持ちよさそう。

■Takakoさん、拍手をありがとうございます。
ふふふ…メジロにも、鈍くさくてシングルの子(ワタシみたい)もいるんですよ。 つがいのメジロは仲むつまじいけれど、食べるときは別ですね。 偉そうに連れ合いを追っ払って、まず食べ始めるのがメスなのではないか(…卵を産む方が栄養をつけなきゃいけないし)と、いつも思うのですが、実際はどっちが強いんでしょうね? 
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旅の一瞬を切りとる 池澤夏樹「きみのためのバラ」

ものすごくひさしぶりに池澤夏樹の新刊本を買いました。 旅をテーマにした短編集であることと、装丁の美しさにひかれて。 むかし、とても好きだった作家なので、期待と不安の入りまじった複雑な気持ちで本を開きました。

11.27きみのためのバラ

「きみのためのバラ」は、短編の中に旅の途上で出会う一瞬を閉じこめた静かな世界でした。 どれも一応は物語なのですが、ストーリーというほどの起伏や意外な結末などはありません。 淡い淡い記憶…普通の人なら忘れてしまうようなエピソードを、過剰な装飾を排した端正な文章で永遠の一瞬として定着させているのは、さすが池澤夏樹。 ただ、エッセイや評論がとてもすばらしい作家なので、これならエッセイにしてもよかったんじゃないかという気がしました。 短編としては、ちょっと物足りなかったです。 旅の一瞬を小説化した作品としては、多和田葉子「容疑者の夜行列車」の方が奇妙な味わいなんだけれどよかったような(ずいぶん前に読んだからあやふや…)。

11.27落ち葉

柿の葉がいつのまにか全部落ちていました。 今日は柿の木の下を重点的に掃除。 もっといろいろ書きたいけど、画面のちらつきがひどくて限界だ…。

■Tさん、いつも拍手をありがとうございます。 ワンちゃん、かわいいですよね。 抱きしめたい気持ちを必死で我慢しました(笑)。 三条通散策の参考になりましたか? 「松之助」は本当に手作りっぽいケーキですよね。 ああ、ワタシもひさしぶりでケーキを焼いてみたくなってきました。
Category: 池澤夏樹