近くにいても遠い人 江國香織「犬とハモニカ」

日本語そのものを味わうような文章が読みたくなって、ものすごくひさしぶりに江國香織の新刊「犬とハモニカ」を買ってみました。 装丁がとてもキレイな本だし、期待して読み始めたのですが。



川端康成文学賞受賞作「犬とハモニカ」を収録した短編集。 表題作は空港ですれ違い離れていく、たくさんの人生の一瞬を鮮やかに切りとったスケッチ風。 ほかにも不倫の終わり、仲むつまじく公園でピクニックを楽しんでいるかのようにみえる夫婦の内面を描いた作品など。 どんなにそばにいても(夫婦や不倫中の恋人でも)結局互いにほんとうには理解しがたい他者との距離感、冷え冷えとした孤独感を淡々と乾いた筆致で描いた作品が並びます。

雑多な短編をかき集めたという印象で、短編集としてのまとまりが感じられません。 異様なものを眺めるように愛し合う妻を眺める夫の視点とか、江國香織独特の冷え冷えとした感じはますますパワーアップしているのですが、昔は大好きな作家だったんだけどなあ…ピンときませんでした。 これは私が歳をとったからなのか、江國香織の作風が変わったからなのか? そのうち、ごく初期の大好きだった作品を読み直して考えてみたいです。

2.9雪の万両

源氏物語の夕顔のエピソードを現代の言葉で語った短編もなんだかなあ…。 夕顔が光源氏に対して「フェアじゃない」と心のうちでつぶやくくだりで「え?」。 なんで急にイマドキの言葉になるんですか?(地の文章は普通なのに) 角田光代の「曽根崎心中」と比べるとひどく見劣りしてしまい、「江國さん、こんな半端なもの書かなきゃよかったのに」なんて思ってしまいました。 ひさびさに買った江國さんの単行本なのに残念。


写真は9日(土)の朝に撮ったもの。 今年は冷蔵庫の中より寒い日が多いのに、雪はほとんど降らない。 つまんないな。 土曜日の雪も朝日がさした途端にみるみるとけ始めて、ストレッチに行く前に大慌てでパチリ。 ストレッチ&呼吸法は股関節まわりを重点的にほぐすようなゆるーい動きで、ふだんはまったく動かさないところが動いた実感が。 翌日は気持ちよくだるくてだらんだらん。


■拍手をありがとうございます。
■まことんさん、おっしゃるように確定申告をすることで1年に1度税金と向き合うのも大切なことなんでしょうね。 日本の経済にも税収にもまったく貢献できていない自分を再認識させられて、毎年この時期は情けなくなるばかりなんですが。

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犬と音楽と孤独と 江國香織「雨はコーラがのめない」

ものすごくひさしぶりに読んだ群ようこがピンとこなくて(内容よりも言葉そのものに)、お口直しに江國香織のエッセイ「雨はコーラがのめない」を開いてみました。

12.18雨はコーラが

意味不明に思えるタイトルですが、「雨」は著者の愛犬の名前。 大好きな「雨」と一緒に音楽を聴きながら過ごした時間について書かれたエッセイ集です。 音楽にまったく鈍感なワタシが読んでも楽しめる内容でした。 どちらかといえば「犬との生活」が主軸になっていて、ワンコ好きにおすすめです。 全編を通して濃厚に犬っぽい空気(?)が流れているので、「音楽は好き、犬は嫌い」という人にはおすすめしません(笑)。 一方、音楽知らずなワタシでも、読むと出てくる音楽を聴いてみたくなりました。 そうそう、Aricoさんの音楽についても書かれていて、それだけは「うんうん、そうなのよね」とうなずいて読めました。 確かにAricoさんのピアノ曲は文章を書くときに邪魔にならないし、なおかつ何か心の奥底の柔らかいところを揺り動かすような…そんな感じ。

それにしても。 ああ、なんていいんでしょう(ウットリ)。 この人の言葉の流れ、孤独の感覚、そして犬への思い、全部ひっくるめて、やっぱり好きだなあ。 犬との距離感がとても好き。 大好きだけれど、自分とは違う感覚で生きてるケモノとして「雨」をとらえている視点がいいです。 江國香織らしい「他者との距離感」。 どんなに好きでも、完全に理解し合えることはないのだという明るい諦観(けっして絶望ではなくて)がワタシには好ましい。 おいしい飴玉を口に含んだときのように、ゆっくりゆっくり味わいながら読みました。

12.18山茶花

相変わらずよそを向いて咲いている山茶花を、無理やりコチラに向かせてパチリ。

今日は着付け教室の最終回でした。 コートや草履まで持つと大荷物になるので、がんばって早起きして、きものを着て教室へ。 卒業記念にきものを着て友だちとランチに行って、神社でプチ撮影会して、朝から夕食の支度前まで1日きものを着て過ごしました。 新しい楽しみに出会えて、ホントに着付けを習ってよかった♪
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女子高生が可憐だって!? 江國香織「いつか記憶からこぼれおちるとしても」

しばらく読んでいなかった江國香織ですが、エッセイ「とるにたらないもの」
を読んだら、世間一般からはちょっとずれている江國サンらしい不思議な感覚が
なかなか心地よくて、ひさびさに小説が読んでみたくなりました。
で、本屋さんで恩田陸の「ユージニア」を一度は手にとったのに、結局買ったのは
江國香織の文庫本「いつか記憶からこぼれおちるとしても」。 「ユージニア」は
面白いと評判だけど、内容が暗そうなので躊躇してしまって…。

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この本は、ひとつの女子高校を舞台にした短編小説集です。 ひとつの物語では
単なる端役だった子が他の短編で主人公になる、といった具合に物語は互いに
リンクしています。 でも、それぞれの短編としての完成度はあまり高く
ありません。 それが、この本全体を中途半端なものにしているようです。
短編としての独立性と、連作としての連続性がうまくいっていないというか…。

江國サンに17歳の女子高生は合っていないのではないでしょうか。
江國香織はサラリとした表現の奥に毒を持った世界を描く人なのに、
題材にした「17歳の女子高生」というのはカノジョのフィルターを通さなくても
十二分に毒を持っている年齢。 ゆえに、江國香織らしい毒がこの短編集では
生きなかったように思います。 カバーの紹介文には「10人の女子高校生が
おりなす、残酷でせつない、とても可憐な6つの物語」とありますが、
絶対に可憐ではないですよ、物語に登場する子たちは(笑) ある意味、
不気味です。 自分の17歳を思い返してみても、なんともいえないお年頃
でしたよ、やっぱり。
江國香織は、芯では冷めきっている「オトナの女性」か、あるいは
「冷たい夜に」に出てくるような「少女の世界」を書いてほしいな。

さて、昨夜は仕事仲間の新年会でした。 ひさびさに深夜(あるいは早朝?)
まで、女4人で鍋を囲んでガンガン食べ、ワーワーおしゃべりして楽しかった!
声帯の弱いワタシは、今日は声の出が悪かったくらい。 よい仲間がいてくれて
ホントに幸せもんです、ワタシは。 でもでも…ブログ読んで「本を読むヒマが
あったら仕事してくださいよッ!」て怒らないで~、Nさん。
本はワタシの心の栄養剤なので、どうかお目こぼしを(笑)
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江國香織「とるにたらないもの」

江國香織の短いエッセイ集です。
病院で待たされている間に、ちょうど読み切れました。
ひさしぶりに読む江國香織サンですが、予想以上に良かったです。

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独特の感性は健在、言葉ひとつひとつにまで江國サンらしさがにじみ出ていて
一語一語味わいながら、ときには2回繰り返して読みました。
題名のとおり、どこにでもあるモノを江國サンならではの視点で料理してある。
たとえば雑貨屋さんとか手作り作家系の方が書いたエッセイを、最近よく
見かけるのですが、そういう文章とはまったく次元が違う(小説家といえば
文章のプロなんだから当然といえば当然ですが)。 まさにエッセイのお手本。
といっても、江國香織が好きでない人にはおすすめできませんが。 ワタシは
甘い砂糖でくるんだような女性的な言葉の中に、ヒヤッとするような
自分を取りまくすべてを突き放したような視線を感じさせる江國香織の個性が
昔から好きなもので。

良い文章を読んで、心に栄養補給できました。 病院で待たされるのも、
たまにはいいかも…いや、やっぱり良くないけど。

先日の忘年会で、同級生♂がポツリと「なぁ、本気で、本を書いたら? オレ、
vogelさんが書いたものやったら、金払っても読んでみたいよ」と仕事の話の途中で
言ってくれました。 ありがたくて涙が出そうになりました。 出版のことなど
まるで門外漢で、本なんて興味なさそうで、女性としてのワタシなんぞは
さらに興味がないことがハッキリしている人なのに、なぜそんなこと
言ってくれるの? 「ワタシが書いたもの、読んだことないのに?」と訊いたら
「う~ん、なんでって言われても…vogelさんが書いたものならって気がするだけ」て。
応援してくれる身近な人とは違う立場の人からも温かいエールを送ってもらって
本当に本当にワタシは幸せ者です。 ありがとう。 そろそろ本気にならないと
罰が当たりそうね。


ところで、腎臓の精密検査は無罪放免でした。 やれやれ~。
「気にしていない」といっても、なんとなく再検査は気が重かったのですが、
やっぱり体質らしいです。 女医さんがキッパリ「気にしなくていい」と
言い切ってくれたので安心しました。 でも一生、血尿気味は治らないらしい。
身辺整理をしていた母の精密検査も「ほぼ大丈夫」とのこと。 細胞を培養した
結果は年が明けてからでないと分からないそうですが。 二人とも血液検査の
腫瘍マーカーが正常値だったんだから大丈夫だとは思ってたけど。
でも、たとえば「余命あと1年」と宣言されたら、ワタシだったら
大切な時間をどう生きるだろう?
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江國香織と直木賞

どの作品で著名な賞をもらうかは、作家にとって大切なことだなと
つくづく思ったのが江國香織「号泣する準備はできていた」の直木賞受賞です。

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本屋さんで何気なく選んだ「落下する夕方」が気に入り、
続いて「つめたいよるに」を読んで衝撃を受けて以来、
江國香織はずっとワタシにとって”特別な作家”でした。
ところが直木賞をとった「号泣する準備はできていた」は
どうしても読み通せなかった。
短編集なので、ひとつの作品は20頁ほどなのに、
退屈で退屈で、寝る前に読むと必ず途中で寝てしまう。
自分でも不思議だったのですが、拒絶反応が起きるようでした。

本の整理をしていて、読みかけのまま処分するのはしのびなくて
もう一度読み直してみました。今度は気合いを入れて最後まで。
やっぱり江國香織の良さがみじんも感じられません。
江國香織らしい詩情にあふれた文章の美しさも、
張りつめたような孤独感もないのです。

そういえばテレビで聞いた直木賞選者のコメントが(誰だったかは?)
これまでの江國香織の作品は詩みたいだったが、ようやく散文に近づいた
というような内容でした。
ええっ、ワタシは詩的なのが江國さんの良さだと思っていたのに!
これからずっと、これが江國香織の代表作といわれるのでしょうか。
ちょっと違うな、と思ったのはワタシだけでしょうか?
賞をもらう立場では「コチラでお願いします」とも言えないでしょうけど(笑)

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「号泣する準備はできていた」を読んで、江國香織ってなんだかなぁ…
と思った人には他の作品も読んでみてほしいです。
「つめたいよるに」や「薔薇の木 枇杷の木、檸檬の木」の世界、
ワタシは好きです。

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特に「つめたいよるに」には、繊細で静かな物語を通して、
生と死という深くて根元的な問いに対する、
江國流の真摯な答えが、とても平明な言葉で書かれています。

「号泣する準備はできていた」で、江國さんの小説から
すっかり遠ざかってしまいました。
いまはどんなものを書いておられるのでしょう?


前回直木賞をとった角田光代も、ひょっとして江國香織と同じパターン?
他の作品も読んでみるべきでしょうか……う~む。
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冷静と情熱のあいだ

いまさらなんですが……本を整理していて書きたくなりました。
恋愛小説への興味がすっかり減退していたためか、
江國香織はかなりお気に入りだったのに、
読もうという気がまるで起きなかった本です。
もともとアマノジャクなので、
話題の本や映画化された小説は、かえって手にとらない。

ところが、友だちから「両方読んで、どちらが好きか教えて」と
強くすすめられました。
どちらが好きかで、その人のタイプがわかるんだとか。

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そんなわけで、苦手な辻仁成の恋愛小説を読んでみました。
過去の恋愛を、男と女、それぞれの視点から描いています。
結論、ワタシは江國香織のrosso(だっけ?)の方が好き。

辻仁成の方は、過去を非常に引きずってる男の視点で
描かれている。 純粋といえば、そうかもしれないけど、
引きずり方がくどくて感情移入できませんでした。

江國香織の方は、過去の恋愛を胸の奥に押しこんで、
淡々と新しい愛人(?)と生活している女の視点。
この女の人、自己中心的に生きてる野生動物みたいです。
「わがまま」と周囲から非難されることなんて恐れていない。
ものすごく深い孤独を抱えながらも、
背筋を真っ直ぐのばして生きている。
けっして好きなタイプではないけれど(笑)
その強さが潔い、と思えました。

ワタシは…というと、どちらかといえば
辻版のウダウダ引きずりタイプなんですが。
自分の嫌なところをみたようでイヤだったのかな。

でも、辻仁成の方が好き、という人が多いみたいですね。
この本をすすめた友だちも、そう言ってました。
ちなみに、ワタシが買った本の奥付をみたら、
辻版が20刷、江國版が15刷。
やっぱり辻版が人気らしい。
結局、すすめてくれた友だちにはなぜか感想を伝えないまま。
いつかココを読んでもらおう(笑)

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