不機嫌な30女がたどり着いたのは 絲山秋子「ラジ&ピース」

イッツ・オンリー・トーク」以来、ひさしぶりの絲山秋子です。 「イッツ・オンリー・トーク」がいまひとつだったから「読まなくてもいいや」という気になっていましたが、最新刊(?)の「ラジ&ピース」紹介文にひかれて図書館で借りました。

2.23ラジ&ピース

外見に強いコンプレックスを抱えている野枝は、30代前半のラジオ・パーソナリティ。 仙台で担当していた番組が打ち切りになり、契約社員として群馬へとやってきます。 誰とも接点を持たずに生きていこうとする頑な野枝が、縁もゆかりもない群馬で出会ったのは…。

自分がいかに人間関係に恵まれているのか気づこうとしない、気づいても目をそらそうとする主人公の頑なさにイライラしました。 しかし、常に不機嫌なイヤな女がほんの少しずつ、自分の居場所をみつけていく過程は不思議に心地よかったです。 ラジオのパーソナリティーという特殊な閉じた空間というか時間の中でだけ心が解放される感覚も、もともと人付き合いが苦手だったのに仕事を通して性格が変わった気がするワタシには理解できました。 主人公に苛立ちながらも、なぜだか後味はさらっと爽やかな小品。 絲山秋子の非常にとぎすまされた過不足のない文章のせいかな? 著者のアンチ東京中心主義の立ち位置にも共感して、読後の感想は少し甘めかも。

おまけのような超短編の中に、「男には替えがきくけど、友だちはそうはいかない」というくだりがあって、ホントにそうだなあと妙に納得したり。

2.24クリスマスローズ

母がどうしても欲しくなって買ったクリスマスローズ。 マグノリアという品種らしいです。 咲いたときは白っぽくて、だんだん深いチョコレートっぽい色に変化していくようです。 ずっと雨なので、買ってきた植物を植えられません。 でも、植物にとっては気持ちのいい雨なのかもしれませんね。 花粉症のワタシにとっても楽なはず…だったんですが、前日に出歩いてたっぷり花粉を浴びたせいか、今日になってくしゃみ連発。 それでも、予防薬がすごくよく効いていて助かります。 薬が効きやすいってことは、この薬を服用しているときに、お酒を飲んだら前財務大臣みたいになってしまうのかも。 そう思って、花粉症の季節はいつもアルコール断ちしてます。
Category: 絲山秋子

女と男の距離 絲山秋子「イッツ・オンリー・トーク」

昨夜はひさしぶりに眠れないまま夜明けを迎えました。 眠れないなんて
とても珍しいことなんだけど。 3時頃になって、熟睡できないなら本を読もう
と、昨日買い込んだ本の山をさぐって、一番短い「イッツ・オンリー・トーク」
を手にとりました。 文庫の新刊です。

6.1イッツ・オンリー・トーク

今年、「沖で待つ」で芥川賞を受賞した絲山秋子のデビュー作です。
以前に読んだ「袋小路の男」の印象が強くて、男女の関係を淡々と描く
女性作家なのだと思っていたのですが、この短編はドロドロしているようで
同時にサラサラしすぎているような男女の関係を描いていて、「いかにも
デビュー作」という感じの内容でした。 女性の視点で、こういう内容の
小説を書くと、出版社が喜びそうだな…そんな感じ(どんな感じか
わかりません?)。 あらすじを要約するとなんとも陳腐になりそうで、
うまくまとめることができませんが、非常に感覚的に生きている、ひとり
暮らしの女性と、彼女のまわりに集まり離れていく男たちとの(たとえ
肉体関係があっても)淡い関係を描いている…といえばいいのかな。
「袋小路の男」で堪能した絲山秋子らしい美しい文体はまだ見られず、
ワタシ個人としては納得いかないレベルでした。

女性的な感覚がワタシに欠如しているのか、どうも女オンナした小説は
苦手です。 この文庫に併録されている短編「第七障害」の方が、読んでいて
もう少し寄り添える世界でした。 こちらは淡い淡い男女の仲が主題なので。


6.1ステッチ雑誌

夜明けになっても眠くならなかったので、やはり昨日買った雑誌「ステッチ・
イデー」をめくって妄想をふくらませ…針が持ちたい、布用染料が欲しい、
アップリケも入れて…と、どこまでも広がる妄想が楽しかった(笑)

それでも眠れず、同じく昨日はずみで買ってしまった堀江敏幸「もののはずみ」
をパラパラと読みました。 ひさしぶりに良質のエッセイを読む気分。
でも、堀江敏幸の文章はものすごく好き!というのとは、ちょっと違う。
どちらかといえば、「仕事のためのお勉強」として読んでいたかも。
Theme: 読書メモ | Genre: 本・雑誌
Category: 絲山秋子

これは純愛ではなく 絲山秋子「袋小路の男」

昨日買った「本の雑誌増刊号/本屋大賞2005」をみて
絲山秋子の「袋小路の男」が第4位になっているのが意外でした。
そんなに一般ウケするような小説だったっけ?

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高校時代にダメ男に一目惚れして以来、12年にわたってズルズルと
片思いをひきずるお話しです。 つかず離れず、指一本触れないまま、
異性の友だちになるわけでもなく、忘れた頃にひょっこり連絡してくる男が
やっぱり好きな女も、立派なダメ女。

プラトニックなまま、ひとりの人を思い続けているけれど、
いわゆる純愛小説ではありません。 もっとダラダラと緊張感なく、
ウダウダ言いながら切れずにいるだけで。
あまり美しい関係には思えなかったのですが、
上記雑誌での書店員の推薦に「せつない」などの言葉が並んでいて
同じ本を読んでも、人によってこんなに違う受け取り方をするんだ
と今さらながら痛感しました。

小説として悪いわけではありません。 どこまでいっても結論が出ない恋を
ひきずってしまう女性を作者は美化せず、淡々と描写しています。
その淡々とした突き放し方にこそ、味わいがあるのでは。
川端康成文学賞を受賞した作品にふさわしく、美しい日本語が堪能できます。
ストーリーよりも日本語そのものを、ゆっくり味わって読みたい本です。
きわだって個性的な文体ではないはずなのに、句読点にいたるまで
じっくり練られたであろう文章は、言葉が心に流れこんでくる
独特のリズムをもっています。

昔むかし、コレによく似た恋をしていたワタシだから
お話しそのものに「アホらしい」と思っただけかもしれません。
どうせなら、ダメ男の言い分を書いた中途半端な続編より、
その10年後にダメ女が何を思うのか、個人的には書いてほしかった(笑)
Category: 絲山秋子