こころ温まるお話?? 川上弘美「光ってみえるもの、あれは」

近頃まったく読書が進みません。 本を読むことに気持ちが向かわないときだってあるわけで、それはそれで別にかまわないのだけれど。 バイオリズム下降で感受性が鈍化しているのか、たまたま当たりが悪いのか、こういうときは読む本、読む本、なんだかおもしろくない。 軽いものを読みたいと思って、積ん読の山の中から発掘してきたのが川上弘美の「光ってみえるもの、あれは」でしたが…。

6.9ひかってみえるもの

16歳の男子高校生・江戸翠の目を通して、周囲の一風変わった人々を独特のゆるい空気感で描いた長編小説です。 シングルマザーで翠を産み、実家の母親に子育てをしてもらって自分はふわふわとライター稼業をしている母親、その家にぬけぬけと出入りする翠の遺伝子上の父親、相思相愛の恋人、友だち、学校の先生、そして育ての親である翠の祖母、みんながみんな変わり者で…。

ああ、またハズレ(あくまでもワタシの現在の感覚で)。 この本、ネットではかなり評判がよさそうだったけど、みんなはどのあたりがよかったんだろう。 どこか冷めた視線を持つ翠と変人たちとの温かでちょっと切ない日々、とかなんとか? なんだか最初から最後まで、この小説の世界になじむことができませんでした。 川上弘美の書き言葉は相変わらずするすると気持ちよく読めるのに、内容についてはわだかまりを抱えたまま読み終わりました。

6.11ドクダミ

特異な家庭環境に育って、早く大人っぽくなる子どもっていると思います。 でも、この翠という主人公はなんだか作り事めいたにおいがプンプンするんです。 周囲にいる大人たちもなんだかとても薄っぺらい感じがしました。 どこかで読んだような話だなと考えてみたら、長嶋有「猛スピードで母は」を読んだときの違和感とそっくり! 世の中の人はどうしてこういう話が好きなんだろう? このゆる~い空気感がひょっとしていいの?? すっごく不思議です。 古道具 中野商店を読んだときも釈然としない気持ちになったし、ホントに川上弘美はもう卒業します。 本屋さんで文庫本をみつけてももう買わないよ、ワタシは。 


実は突然、両親と一緒にミュンヘン&オーストリアのチロルへ行くことになりました。 父の検診結果をみてからということで延び延びになっていたんですが、数日前にお医者さんからOKがでて。 「チロルで花がいっぱい咲いてそうな6月末くらいに行きたい」と父、「80歳を過ぎて『また来年にでも』ということは考えられない」と母。 もう無理やりな感じで、プランナー兼手配師兼通訳兼添乗員兼荷物持ち!?(父は心臓病で重いものがまったくもてないため、最後のが特に重要な任務)に任命されました。 レギュラー仕事まで断って…大丈夫なんだろうか、ワタシの今後は。 大急ぎで航空券だけは予約できたものの、ホテルがぜんぜん決まってません。 用意なんにもできてません。 あと10日ほどしかないのに(焦)。 とかいいつつ、ブログをたらたら書いてますが。
Category: 川上弘美

ゆるゆるとした空気感 川上弘美「古道具 中野商店」

「神様」が大好きで一時はハマッていた川上弘美。 世間的には評価が高い「センセイの鞄」が好みに合わず、ご無沙汰していました。 昨年、「ニシノユキヒコの恋と冒険」がほどほどよかったから、再度読んでみる気になりました。 深刻な重いものは読みたくなかったので文庫本になっている「古道具 中野商店」を購入。

2.5古道具中野商店

「骨董」ではなく「古道具」を扱う中野商店を舞台にした、平凡な人たちのささやかな日々の営みを描いた小説です。 全編にわたって恋愛風味がまぶされてますが、川上弘美が描きたかったのは古道具屋という空間だったのかな、と感じました。

う~む…嫌いじゃないけど、どうということもない小説でした。 ゆるゆるとした空気が流れる古道具屋さんの佇まいはなかなか味わいがあるし、文章の流れや表現は昔よりも普通になりつつも、川上弘美らしい心地よさもあったんだけど、心に響くような内容がない。 落ちこみたくないときの読書としてはいいかも。 特に最後の章が蛇足っぽくて、全体をぶちこわしているように感じるのはワタシだけでしょうか? 安っぽい映画のラストシーンみたいに安易。 姫野カオルコの「ツ、イ、ラ、ク」だと、延々と重い重い恋愛話が続いた末なので、最後くらい救いがあってもいいかなと納得できましたが(それでも取って付けたような違和感が残りました)、この小説はそれほど濃密でもないのになんでこんな落ちをつけたんだろうなあ。 ゆるゆる~と生ぬるい空気のまま、明確な結末なんてなくてもよかったんじゃないかと思います。 普通の話を書こうとして無理しているのか、川上弘美は? デビュー作「神様」を読んだときの衝撃はもう昔のことなのねえ…と遠い目になってしまいました。


2.5猫の春

猫は寒さに負けず「春」ですね。 恋しくて恋しくてニャーニャー声がかれるほど鳴きながら、我が家の周囲を朝から晩までぐるぐる回っています。 どんなヤツが鳴いているのかと裏をのぞいたら、こんな子でした。 嫌がらせにカメラを向けたら、180℃回転してお尻をこちらに向けて座りこみ。 ニャ~ンと甘ったるい声をかけてみたら、「へ?」と驚いた顔で振り向き、「あ、こんなヤツか。見なきゃよかった」という顔をしました。 何度も何度もニャーと声をかけるたび、つい振り向きかけるんですよ。 上の写真は何度目かの「あ、しまった。振り向いちゃいけなかったんだ」と思っているのかどうか、途中で振り向くのを止めたときにパチリ。 もうかなり暗くなっているのに望遠だったから手ぶれしまくって、なんとか撮れたのはこれだけ。 恋路の邪魔してゴメンナサイ。
Category: 川上弘美

軽い恋愛小説の奥底に流れるニヒリズム 川上弘美「ニシノユキヒコの恋と冒険」

一時は川上弘美にどっぷりな時代もあったワタシ。 デビュー作にして最愛の「神様」から「物語が始まる」「椰子椰子」「おめでとう」あたりまでが大好きでした(「蛇を踏む」や「溺レる」はちょっと苦手)。 現実から少しはずれた奇妙な味と、ひらがなが多くて独特の形容詞や副詞を使った女性ならではの文体に惚れこんでいたのに、世間でブレイクした「センセイの鞄」から川上弘美らしさが薄まってしまったように思えて、以後疎遠に。 評判のよかったエッセイ「ゆっくりさよならをとなえる」を読んでも、やっぱりこの人はエッセイより短編小説が断然いいと思えて、それっきり。

先日、本屋さんの店頭でたまたま見かけて「ニシノユキヒコの恋と冒険」の文庫本を買ってきました。 ひさしぶりの川上弘美、どうかなあ…とドキドキしながら。 読後ちょっとたってから、ジワッと味の出てくる、なんとも不思議な余韻のある小説でした。

9.22ニシノユキヒコ

ニシノユキヒコの中学生時代から死後まで人生のひとこまを、10章の短編で切りとった小説です。 章ごとに語り手が違っていて、ニシノユキヒコと男女の関わりを持った女性ひとりひとりの目に映ったニシノユキヒコという男性が描かれています。 同時進行で複数の女性と付き合ったり、結婚してる女性に手をだしたり…一読すると、とんでもなくだらしないモテ男の一生。 するするっと読める軽い恋愛小説みたい。 なのに、読み終わって1日にくらいしてから、胸の奥からたちのぼってくる寂寥感はなんなのだ! 胸の底がしんとして、ひっそりとして、ちょっと寂しくて。 でもけっして嫌な後味ではないんです。

中学生だったり、ほどほどに仕事で成功したおじさんだったり、頼りない若手サラリーマンだったり、ぼんやりした学生だったり、登場するニシノユキヒコの年齢は時系列ではなくアトランダム。 しっかり者の先輩女性社員や子連れの不倫相手など、恋愛のパターンも相手もさまざまですが、共通するのはいつも女性から別れていくこと。 ドロドロした恨み言もなく、みんな別れた後もずっとニシノユキヒコを嫌いになったりはしません。 ただ、自分一人のものでいてくれないことがわかっているから、女性たちは自分からニシノユキヒコを切り捨てていく。 ワタシもたぶんニシノユキヒコを好きになると思う(笑)。 こういう男の人っているんですよねえ。 でも、ワタシなら「ちょっといいな」と思っても深い関係にならず、友だちづきあいのまま、泣きたくなったときにハグしてもらうくらいでいいです…なんて言ってるから結婚できないのね、あはは。

と、そんなつまらないことはどうでもいいんですが、この小説から感じたのは、人はしょせん一人。 どんなに恋しても愛しても、その人すべてを所有することはできないってこと。 ひどく女にだらしなくて、うかうか生きているように見えるニシノユキヒコだけれど、本当はすごく人間の本質的な寂しさを直感的に知っていたのかもしれないなあ…なんて思えました。 いやホントは、そんな深読みせずに「ダメな男だよね」ってだけでいい小説なのかもしれませんが。 ふらふらと女たちの間を生きた男も、「しょーもない男」と思いながらも好きになってしまった女たちも、滑稽でもの悲しくて愛おしい。 賢く生きるだけがすばらしい人生ではないですから。

9.22ミュンヘン猫

みごとに周囲とカラーコーディネイトができていたミュンヘンの箱入り猫。 「なんかね、ぺったんこな顔した変な人が来るよ」という顔つきで怪しまれました。

それにしても、中秋の名月が間近だというのに、33℃とか34℃とか毎日毎日どうしてこんなに暑いんでしょ! 長袖のブラウス1枚でぶらぶら散歩するのにちょうどいい季節に早くなって欲しいよお。

■Dさん、拍手とコメントをありがとうございます。 ドイツの木のおもちゃの作り方っておもしろいですよね。 確かにDさんがいわれるように、動物の下半身(?)が少し幅広になっていることで安定がいいということもありますね!
Category: 川上弘美