読めば必ず文楽がみたくなる 三浦しをん「仏果を得ず」

三浦しをんの「仏果を得ず」が文庫化されている…でもなあ、この表紙の感じからして、いつも以上に漫画チックなんだろうな、私には合わなさそう…。 本屋さんで平積みされていて、買うか買わないか何度も迷った末に「文楽を題材にした青春小説ってどんなものなんだろう?」という好奇心に負けて買いました。



30歳の健は文楽の養成所出身の若手義太夫。 文楽とは無縁だった不良高校生の健は修学旅行で文楽を嫌々ながら鑑賞することになり、師匠となる銀太夫の語りに雷に打たれたように魅入られ、それ以来寝ても覚めても頭の中は文楽でいっぱい。 ある日、銀太夫から三味線弾きの兎一とコンビを組むことを厳命される。 気むずかしくて心を開かない兎一との関係や、語るべき登場人物に思いを重ねられない文楽修業の悩みは尽きなず、さらに突然目の前に恋まで降ってきて…。

伝統芸能・文楽の異色で、かつ王道の青春小説です。 文学としての深みはないけれどスラスラと読みやすくて、読後感もさわやか。 各章が有名な演目にからんだ設定なので、読み進むうちに自然にまったく知らない文楽の世界に触れることができて、読めば必ず文楽をみたくなります。 文楽の予備知識ゼロだったせいか、ちょっと出だしに戸惑いましたが、あとは三浦しをんらしく読みやすさ抜群(キャラが漫画っぽいのが少し気になるけれど)。 肩が凝らないおもしろい小説が読みたい人におすすめです。

主人公が突如、自分でもおかしいと思うほど義太夫で頭がいっぱいになってしまうという心境、なんとなく分かる気がします。 いま、私は書道で頭がいっぱい…て単純なだけ?(笑)

6.17紫陽花

土曜日はほんとうにひさしぶりに一日しっとり雨降り。 連日の猛暑日とカラカラ天気でグッタリしていた植物も人も少し息を吹き返せたけれど。 今年の紫陽花はせっかく一番きれいなときに雨がまったく降らないまま満開を過ぎてちょっとかわいそう。

今朝は4時起きでコンフェデレーションカップ観戦。 ああ、なんか以前の日本に戻ってしまってる…。 守備と攻撃をつなぐ人がいないのね。 遠藤も香川も何もできなかった。 ぐったりして、また寝直したら一日が短かった。

■いつも拍手をありがとうございます。
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青春小説の王道 三浦しをん「風が強く吹いている」

三浦しをんは好みではないのだけれど「まほろば駅前多田便利軒」が意外におもしろく読めたので、話題作だった「風が強く吹いている」を続けて読みました。



箱根駅伝を目指す弱小陸上部のユニークな面々。 ボロアパートの合宿所を舞台にして、元旦の駅伝出場へ向けて切磋琢磨し、ときにいらだったりケンカしたり、お酒を飲んでバカ騒ぎをしたり恋をしたり。 そして、運命の元旦。 はたして弱小チームはゴールにたどり着けるのか。

箱根駅伝を真正面から描ききった正統派の青春小説です。 すがすがしい読後感のお約束はきっちり守ってもらえますので、安心して読めます。 それだけに波瀾万丈なようで予定調和でもあるのですが、こういう小説は四の五の言わずに読んで楽しければそれでいい。

登場人物が多くて、著者独特のノリについていけないところがあって、前半はだるくて眠くて。 そして最後まで、誰にも感情移入できないまま。 しかし、後半の駅伝の描写は疾走感がびしびし伝わってくるテンポの良さで、とてもよかったです。 走っているときの、それぞれの選手の視点がリアルに感じられて、実際に駅伝を観戦しているような爽快感がありました。 確かに、駅伝の選手たちの顔に当たる風が体感できたような気分に。 運動音痴で走るのが何よりも苦手な私にとっては、それだけでも読む価値はありました。 ああ、いいなあ、走る人ってこんな感覚なんだって。
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映像的な表現がうまい 三浦しをん「まほろ駅前多田便利軒」

三浦しをんにはあまり心ひかれなかったのですが、直木賞受賞作が文庫化されていたので一応読んでみようと購入。 しかし、長期にわたって積ん読状態でした。 いつのまにか表紙が変わってました。 このふたりで映画化されたんですね。 それぞれイメージに合っていると思うけれど、小説を読む前にイメージが固定されてしまって邪魔な気もします。


まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)
(2009/01/09)
三浦 しをん

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東京近郊の架空の街・まほろば市駅前で多田便利軒を営んでいる多田啓介は、日々の細かい雑用を請け負ってただ流されるように生きていた。 ところが、彼の元に高校の同級生・行天春彦が転がりこんできたことから、退屈な毎日がにわかに動き始めて…。 小さな取るに足らないような依頼をこなすうち、それぞれが抱える闇があぶりだされていく。

ぜんぜん期待せずに読み始めたんですが、意外にも(失礼!)おもしろく読めました。 まるで映像をみているような、ノリのいいスピード感あふれる文章で、グイグイと最後までひっぱられました。 設定も展開も「うまい」と思いました。 ただし、読みながら「うまい」と感じるということは、どこか小説世界に没入できず醒めたままってことかも。 ノリがいいってことは軽いってことでもあります。 読みながら、このノリの良さは「傷だらけの天使」のショーケンと水谷豊だなあ(古いなあ)…なんて思い出したり。

直木賞受賞作だからといって、この小説に高村薫「マークスの山」とか熊谷達也「邂逅の森」みたいな重厚感を求めてはいけません。 ずしんと心に何かが残るのではなく、あっさり読めて結構拾いものという感じ。 とりあえず読んでも損はないと思いますよ。

■いつも拍手をありがとうございます。
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だからなんなのだ! 三浦しをん「私が語りはじめた彼は」

三浦しをんって直木賞もとったし、いま人気の作家なんですよね。 ワタシは格闘する者に○(まる)」を読んだだけで、そのときは「若い子ががんばって書いた小説」という以上の感想は持ちませんでした。 姪がやっている今どきのシュウカツ(就職活動)の雰囲気はわかったので不満はなかったけれど、満足もしませんでした。 でも、最近あんまり「おっ!」と気に入る日本の現代作家に出会えていないので、三浦しをんをもう一作読んでみようと、単行本が出た頃やたら評判がよかった「私が語りはじめた彼は」の文庫本を手にとりました。

9.23私が語り始めた

正直に言うと、全然おもしろくなかったです。 「あざとさ全開」って感じがして好きになれません。 著者がほんとうに書きたくて書いたのだという切実さがまったく伝わってこない小説です。「私だってこれくらいは書けるのよ」と示したくて書いたんじゃないか、とまで言ったら意地悪でしょうか。

なぜだか女にモテて、まったく倫理観が欠如した村川という大学教授をめぐって、妻や不倫相手、息子、娘の婚約者、村川の助手らが織りなす葛藤を、それぞれの章ごとに視点をかえつつ多面的に紡いでいく…という連作小説です。 村上の魅力がまったくわからないので(著者はあえてモヤモヤとはっきりさせなかったのでしょうが)、村上にこだわってドロドロしている女たちもまったく理解できませんでした。 チラッと出てきた人物が、あとの章で主役になっていたり、リンクしていく手法などは確かにうまいです。 でも…物語る人物が若くなると共感できる部分もあったのですが、中年のおばさんやおじさんの気持ちは若い著者にとってはしょせん絵空事。 冒頭の中年女の心象風景描写がおおげさで不自然で、読んでいて生理的に気持ち悪い日本語でした(これは好みの問題でしょうが)。 読み終わって「だから何?」と、えらくしらけた気分になりました。

この小説で描かれているのは、真実は見る人によって違うのだということ。 でも、そういう小説はもうすでにたくさん書かれています。 偶然、本屋さんでみかけて一緒に買った川上弘美の「ニシノユキヒコの恋と冒険」も構成はとても似ていました(雰囲気も味わいも全然違うけれど)。 ミステリにもよくあるパターンじゃないでしょうか。 この構成は、有吉佐和子の「悪女について」とも非常によく似ているけれど、その足元にも及ばない。 学生時代に「悪女について」を読んだときは、頭をガーンとどつかれたくらいの衝撃があったんですが、いま読んだらどんな風に感じるんだろう?
 
かつては池澤夏樹とか高村薫とか江國香織とか川上弘美のデビュー作を読んで「おおっ、なんだかスゴイぞ!」と反応したんですけどね…歳をとって琴線が鈍化しているんでしょうか。 三浦しをんはもう買わないかも。
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漫画的な小説 三浦しをん「格闘する者に○」

「格闘する者に○」は変わったタイトルだったので印象に残っていましたが、タイトル通り奇をてらった小説なんだろうと、内容について知りたいとも思わず素通りしておりました。 が、本屋さんの文庫新刊コーナーに並んでいるのをみてみると、予想していたほど奇妙な話ではなさそう。 直木賞作家なので、ちょっと「お試し」に買ってみました。 三浦しをんのデビュー作なんだそうです。

大学4年生の可南子が直面する就職活動の荒波に、家族の再生や、ずっと年上の書道家との恋をからめて、さっくりあっさりテンポよく描いた作品です。 ストーリーの中心は大学生の就職活動…と知って、「ふざけてるのか?」と思った変なタイトルの意味が読む前にわかりました。 ふざけているのは面接をする会社の方なんですよね、いつの時代も。

主人公は漫画が好きだから漫画雑誌の編集者になろうと考える程度で、就職活動にあまり積極的ではありません。 その冷めた視点はなかなかシビアで、就職試験や面接官をばっさり断ずるところはおもしろかったです(ぜんぜん期待せずに読みはじめたわりに)。 いろんな要素を詰めこんで破綻せずにまとめた手腕はなかなかだと思います。 ちょうど就職活動をしている、あるいは経験したばかりといった年齢層が読めば、ストーリーに引きこまれるかもしれません。 ただ、どこか深みが足りなくて読後感が少し物足りなく感じました。 ストーリーのテンポをよくするために叙情性を切り捨てたのかもしれません。 「ガックリした」というような口語的な表現が多くて、漫画を字にしたような印象でした。 もう少し繊細な日本語だったら、もっと気に入っただろうなあ。 こういう日本語表現の荒さは、同じく直木賞を受賞した佐藤賢一の小説を読んでいるときも何度も感じたことなのですが。 「傭兵ピエール」なんて漫画そのものでヘキエキして途中で放りだしてしまいました。 漫画なら漫画でいいんですけど、小説なのに漫画そのものなのはイヤ。 三浦しをんが直木賞をとった「まほろ駅前多田便利軒」はどうなんでしょうね? 多作な人みたいだから、うまくなったのかな。


3.8ツバキの蕾

今日もとても寒くて、ときおり雪がひらひら舞っていました。 人間でも体の調子が狂いそうなんだから、気温や日光に左右される植物はダメージが大きいのではないかしら。 庭では真っ赤な椿がいっせいに咲き出して目に鮮やか。 ヒヨドリが蜜を吸いにきてギャーギャー縄張りを主張して、冬枯れの庭から春へ向かってどんどん賑やかになってきています。

今日は一日中ひたすら自分の部屋の掃除掃除掃除…床を何回も何回も拭いて…それでも歩くとジャリジャリ。 気持ちが悪くて拭きまくっているうちに、ベッドの下や棚に堆積したホコリが気になって、這いつくばってそこいら中拭きまくりました。 おかげで手はぼろぼろ、腰が痛い。 後回しになっている仕事が気になる…。
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