思いがけない痛み

「痛みに強いのか鈍いのか」と盲腸の時にお医者さんにすごく不思議がられた経験があります。 今回の乳がんの手術後も想像していたほど痛くありませんでした。 あまり痛がらないタイプらしい。 やっぱり鈍い??

手術室からでてきた直後だけ、全摘した左胸全体がズキズキ。 でも、点滴で一度痛み止めを入れてもらってからは耐えられないほどの痛みはなし。 それ以後は、術後18時間くらいで病室へ歩いて戻ってすぐに、手術した側のわきと胸を伸ばす体操をさせられたときだけ、傷が開きそうな恐怖心から急に患部が痛いような気がして痛み止めを一度飲んだだけ。 わきを伸ばすストレッチ運動も「いたた…」なんていいながら、はじめからわりと平気でできたし、痛みを訴えないから「痛みに強いのね」と看護師さんたちに何度も驚かれました。 このくらいの痛みなら、包丁で手を切った方が痛いと感じたんだけど、ヘン?


それなのに。 帰ってきてから、こんな痛みが待っていようとは。 「術後はブラジャーは無理だからタンクトップを着ておけばいい」と入院前に看護師さんからアドバイスされていたから、昨日退院して帰宅した後はタンクトップ+綿のタートルネック+ゆったりしたセーターを着て過ごしていました。 自分の中では元気いっぱいのつもりだから、ふだんと変わりなく雑誌を眺めたりして。 ところが寝る頃になると、傷とタンクトップがずっと擦れていた左腕のつけねがヒリヒリ。 激痛ではなくて、神経にさわるような痛み。 布がほんのちょっとでも皮膚に触れると痛い。 それが左胸の奥でズキズキまで呼び起こして、しまいに歯まで痛くなってきて…。

わきに布が触れない洋服ってあるの? いったい明日から何を着ればいいの? わきにも袖にも縫い目がない服なんてありえないし、乳がん全摘専用の下着でも私の痛い部分はやっぱり擦れそうな構造。 早く仕事に復帰しよう…なんて思っていたのに、ちゃんとした服装さえできない。 まあね、わきから胸まで20センチもズバッと切ったんだから焦っても仕方ないんでしょうけれど。 とりあえず、今日は肌に触れる一番下に長袖Tシャツを裏返して着て過ごしました。 ちょっとはマシ。

ぺちゃんこどころか凹んでしまうほど、えぐられた左胸と大きな傷をみるたび平常心でいられなくて涙ぐんでしまいます。 胸が女にとってこんなにも大切なものだったのかと、失って初めて知りました。 いつかこの胸に慣れられるのかな。

入院生活 元気の素

ご心配をおかけしました。 おかげさまで経過はすこぶる良好。 手術翌日から、女性がん患者ばっかりの病棟内で場違いなほどもりもり元気を取り戻し、術後7日目の19日午前中に退院できました。

2.20入院4

この味気なーい旧態然とした病院食とお別れできてうれしい。 最近は病院の食事もよくなったと聞いていたけれど、大病院だとこんなものなんでしょうか…管理栄養士さん、プロとしてもう少し工夫して欲しいな。 食欲ない人がこのトレーをみた時点で、食欲がもっとなくなるよなあ。 といいつつ、周囲のみんな(抗がん剤投与中)が食べ残している中、毎食ほとんど完食していたんですけど。 「病院の食事どう?」とよく聞かれるので、記念にアップしておきます。 ここの病院食って野菜が少なすぎない?? ちなみに家に帰ってまずお昼にラーメンを食べて、晩ご飯はお鍋。 ああ、おいしかった! 野菜がひさしぶりにいっぱい食べられて満足! 

病室での元気の素その1。

2.20入院2

お見舞の黄色い花に元気もらいました。 無味乾燥な病室が一気に華やかに。 従妹のHちゃん、ありがとう!


元気の素その2。

2.20入院3

かわいくて食べられなかったウサギ型の友チョコ、わざわざお参りに行って送ってくれた因幡薬師のがん封じのお守り(手前の薬壺型のもの)、東京から日帰りで手術に駆けつけてくれた姪のおみやげ(ひょっとこの包みがもったいなくて開けられない←こんなのばっかり)、愛用のスチームクリーム、世界のいろんなところを一緒に旅した小型の目覚まし時計。

元気の素その3は

2.20入院

自分で編んだ猫のペンケース。 この子に想像以上に和みました。 署名したりメモしたりすることが結構あったので、ずっとテーブルの上に。 入院中の便利グッズは、(写真にはないけど)書類をいろいろもらうから分類整理できるクリアケースが大活躍。 結構あれこれ覚えておかないといけないことや検査のスケジュールなどがあって忘れそうになるので、マスキングテープとメモ用紙。 滑り止め効果があるゴムのコースター。

もっていった本は多和田葉子「雪の練習生」と梨木香歩「冬虫夏草」。 退屈するほど長く入院していなかったので、結局読んだのは「雪の練習生」だけ。 この本をもっていってよかった! こういう小説、大好き。


■みなさま、励ましの拍手をたくさんありがとうございます! コメントもうれしく拝見しました。 無事に帰ってきました。

無事終了

昨夕、手術が無事に終わりました。昨夜一晩はいっぱい管につながれて、ナースステーション近くの部屋にお泊まり。今朝10時頃には点滴などの管は全部とれて、歩いて大部屋に帰れました。もう普通に病院内を歩けてますよ。自分でも驚いてます。

傷が大きい割に痛みはあまりありません。術後1日も経たないうちに、もう肩を動かす体操をさせられて、まわりのベッドのみんな(子宮がんや消化器系がん)に「見ている方が痛い」と怖がられてます。座って話をしていると、前日夕方にざっくり胸をえぐられた人にみえない。昼頃にお見舞いに来た母が「拍子抜けした」と帰りました。

術後、目が覚めた瞬間に手術台の上で、主治医から笑顔で腋への転移の可能性は低いと告げられて元気でたのかも。

みんな、心配してくれてありがとう(^_^)/

いってきます

明日の朝、入院します。 もう術前検査も済ませているのに(また1万円弱!)、手術の2日前から何かすることあるのかな??

姪1号が手術日に母に付き添ってくれることになってホッとしました。 父が手術に来ると(来なくていいといっているのに)、ただでさえ病気への恐怖心が強い人だから興奮してややこしいことになりそうで、本気で心配だったので。 手術室を出たところで不機嫌な声で出迎えられるのだけは勘弁して欲しい。

2.9深紅のミニシクラメン

いま、ちょっとドナドナな気分。 時間がゆっくりあると、切りたくないという気持ちが湧いてくる。 一度も特に好きだと思ったことがない貧弱な胸でも、お別れするのは悲しい。 ざっくり切られた大きな傷が2本あるだけの、肋骨が浮きでるほどえぐられた自分の胸をみるのが怖いです。

でも、一番大事なのは再発のリスクを避けること。 仕方ない…けど、悲しい。 理性とは別の部分の話。 と、入院前でちょっと落ちこみモードですが、入院してしまえばかえってすっぱりあきらめがつきそう。 もう早く切っちゃって欲しい。


では、いってきます。 主治医の見立て通りに早期がんであること、祈っててくださいね。
早くて1週間、長くて2週間で退院の予定です。 入院中に退屈したら、携帯から更新するかも。


■拍手をありがとうございます。 いってきます。

入院前にご馳走

「入院前においしいものを食べに行こう」と親がいってくれたので、ありがたくご馳走になりました。 一乗寺のフレンチ「ラ・ベルベーヌ」のランチへ。 今日もおいしかった。 満足♪

2.8ラベルベーヌ

2.8ラベルベーヌ2

2.8ラベルベーヌ3

お料理はいつもいろいろ違っておいしいし(まだ3回目だけど)、こぢんまりとした雰囲気で落ち着けるし、サービスもとても自然で、でもきちっとしていて、お店全体の感じがとても好き。 デザートもしっかりおいしい、ランチでもシミのない真っ白なテーブルクロス、小さいけれどおしゃれな花も私の中ではポイント高い。 退院したら、また行きたいな。

手術のストレス発散のため、ここのところケーキやらおいしものをやたらに食べ過ぎているような気がします。 親もかなりストレスかかっているから、みんなで甘いもの食べてしまって。 一家揃って血がドロドロかも(汗)。 おいしいものをおいしく食べられることに感謝。
Category: 日々の記録

自由な発想がステキ 「下田直子 ハンドクラフト」展

「下田直子」展の招待券をもらったので、木曜日に手芸好きのRちゃんを誘って行ってきました。 

2.6下田直子展

もう何度も本で鑑賞してきたバッグやポーチ・編みもの作品がずらりと揃っていました。 さまざまなテクニックを組み合わせた自由な創作、そして多色使いのセンスに思わずため息。 編みものに刺繍を施したり、パッチワーク風にいろんな編み方のピースを組み合わせたり、アップリケやスパンコール・刺繍のワンポイント使いとか、アイディアの豊かさに脱帽です。 けっしてむずかしい技法ばかりではなく、緻密にびっちり刺繍などを施しているわけでもない。 これなら私にでもできるかな…という気にさせるのが下田マジック! でも、下田さんの手芸本はいつも鑑賞するだけで終わる(笑)。 

2.6下田直子展スモック刺繍

Rちゃんと二人で興奮したのが上のスモック刺繍技法。 これがスモック刺繍!? 裏からのつまみ方で驚くほど立体的な陰影に富む形ができるのですね。 こんなのみたことなかった。 技法本を買ったRちゃん、いつかカッコいいスモック刺繍のバッグを作ってみせてね。

2.6タルトタタン

京都駅から離れて、静かな寺町通りをウロウロ。 でも、冷凍庫の中のような寒さ(最高気温が3℃!)。 ケーキ屋さんで巨大なタルトタタン+紅茶で、ひさびさにゆっくりおしゃべりしました。 家族のこと、病気のこと、なんでも話せて特に深刻になることもなくて。 こういう時間が私には必要だったんだなとよくわかりました。 中学2年生の時からずっと友だちのRちゃん、いつも変わらない友情をありがとう!
Category: 展覧会

闘病記とは一線を画するエッセイ 内澤旬子「身体のいいなり」

先日、マルタさんにおすすめされた内澤旬子「身体のいいなり」。 母が先に読み始めて、やっと私に回ってきました。 読み始めたら止まらず、あっというまに読了。 乳がん治療に対する個人的な興味という面も確かにあったのだけれど、それ以上に読みものとしてとてもおもしろかったです。 マルタさん、ありがとうございました!



「世界屠畜紀行」でブレイクする前、まだ無名のイラストレーターだった内澤旬子さんに早期の乳がんがみつかったのは38歳の時。 片胸ずつ温存手術→両胸全摘手術→乳房再建手術と計4回の全身麻酔手術を受けるという、壮絶な乳がん治療体験を淡々とした筆致と真正直な主観でルポしたノンフィクション作品です。 講談社エッセイ賞受賞。

身体と意志のバランスの不思議さ、治療現場の理不尽、フリーランスとしての仕事を失うことへの底なしの不安、乳房という女性性に思いがけず振り回される自分に戸惑いつつ決意した乳房再建のすったもんだ、亡くなった癌友への思いをひとりで抱えざるをえない切なさ…語られるのはヘビーな内容なのだが、湿っぽさは皆無。 著者独特の突き抜けた、とても乾いた視線で切りとられる病気の日常は、困難に打ち克って…という普通の闘病記とはまったく違うものでした。

なんなんでしょう、この引力は。 エッセイは一般には書き手をすでに知っていて、その人への興味で読ませるといった内容が多いのですが、この著者のことを全然知らない人が読んでも面白い。 内澤旬子さんの出世作「世界屠畜紀行」はかなり気になったんですが、小心者の私は手にとることはありませんでしたから。

ただ、著者の発想に全面的に共感したかというと、それはまたちょっと違うわけで。 自分でも書いておられる通り「面倒くさい考え方」をする人なんですね。 そして、とても意地を張っている。 病気なんだから、もう少し両親や配偶者(のちに離婚)に甘えてもよかったんじゃないの? 「助けて欲しい」とひと言もいわないことは強さなんだろうか? しょせん人間って自分一人だけで生きているわけじゃない。 配偶者が治療費を一銭も出そうともしてくれなかったと嘆いたりしているけれど、著書の中で一方的にさらし者にされてしまったご主人がちょっと気の毒になってしまいました。 聡明な彼女は自分でもよくわかっているようでしたが。 うちの母親は著者の頑なな考え方に反発を感じたようで、「この人、ちょっと協調性がなさ過ぎるんじゃない? だから、お医者さんともうまくいかなかったんじゃないの」という感想でした。

すでに夫婦関係が破綻していて、仕事もうまくいかず、どん詰まりな気分だった著者は、がんと宣告されてもやけっぱち。 「死ぬかも」ということにホッとしているなんていっていられるのは、やっぱり早期がんだったからじゃないかなあと、がんになって私は感じました。 もっと進行したがんだったら、いくらやけくそでもそうサバサバしていられないのではないかな。

激しい腰痛やアトピーに長年悩まされてきたのに、乳がんになってからどんどん健康になったとありましたが、そうではない気がしました。 たまたま乳がんになったときに、それまでにコツコツ自腹で世界各地を取材してようやく出版された「世界屠畜紀行」が売れて、ハイレベルな仕事の依頼も増え、生活が安定して将来への不安が軽減されたことで精神的にずっと楽になり、それが体調にプラスに作用したのだと思います。 モヤモヤしていたご主人との関係も離婚で精算されたし。

…なんていろいろ書いていると、ちっともおもしろくなさそうかもしれませんが(汗)、共感はしないけど、でもおもしろかった! 闘病記を「おもしろい」と評していいのかどうかわかりませんが。 乳がんなんてまるで関係のない人にも、男性にも、おすすめします。 一読の価値はあります。

1.31リュウノヒゲの青い実

抱えていた仕事は期日前に納品して、男性担当者にも乳がんで手術することを正直に伝えて。 それだけでひと仕事した気分でした。 あとは節分に母と一緒に吉田神社にお参りしたり、麻酔科の先生の説明を聞きに病院へ行ったり、入院用にタオルやパジャマ・下着を買いに行ったり。 毎日右往左往しています。 あ、美容院の予約もしておかなくちゃ!

■たくさんの拍手をありがとうございます。