東京の下町情緒をしみじみ味わう 小川糸「喋々喃々」

どこかの書評でみかけた小川糸「喋々喃々(ちょうちょうなんなん)」。 図書館の予約でしばらく待たされているうちに、なぜ読みたかったのか忘れてしまいました(汗)。 新しい作家を開拓しようとしたんだっけ?  タイトルは「小声で親しげに話し合うさま。男女がむつまじく語り合うさま」を意味するそうです。 こんな言葉、初めて聞きました。

8.17喋々なんなん

東京・谷中の長屋に暮らし、その1階でアンティーク着物店を開いている栞。 両親が離婚して父親に引き取られ、その父親が再婚したことで寄る辺ないような寂しさを抱えている女性です。 東京の下町(正しくは寺町だそうですが)の風情が色濃く残る界隈で、静かにひっそりと暮らしていた栞は、ある日、店を訪れた妻子ある男性と恋に落ちて…。

ひとことでいえば、大人の男女の不倫小説です。 でも、不倫のドロドロを描いた小説ではありません。 この小説のメインは、祭りや伝統行事・桜といった谷中の四季折々の風情と、四季の移ろいとともに肌で感じる日本情緒。 栞が手早く作る手料理、小料理屋や蕎麦屋の料理など、おいしいご飯(←贅沢にお金をかけたという意味ではなくて)を食べるシーンも印象的です。 あと、近所の江戸っ子の粋なおじいさんとのデートもステキでした。 不倫などしたくないと思っている栞が、少しずつ妻子持ちの男性にひかれていく切なさを、そうした細部を絡めて丁寧に(ときどき丁寧すぎる気もしましたが)描いているので、話の展開はきわめてゆっくり。 波瀾万丈なストーリーが好きな人には向きません。 ワタシはこの小説のゆるゆるした空気感が嫌いではありませんでした。 ときどき微妙な言い回し(大げさすぎたり)があったりするので、ものすごく好き!というのでもないけれど。 読み終わってから知ったのですが、作詞家としての活動もされていた方だからかな。

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