水の気配に包まれたサーガ グレアム・スウィフト「ウォーターランド」

夏風邪やら兄一家の来襲やら夏バテのため、ゆっくりゆっくり読み進めていたグレアム・スウィフト「ウォーターランド」をついに読み終わりました。 ああ、ひさしぶりにヘビー級の本を読んだなあ、と本を閉じる瞬間が夏の終わり(ホントに?)とかさなって、しばし気持ちのいい放心状態。

奥付をみると、この本がクレストブックから出たのは2002年。 発売当時、表紙の装丁から受ける不思議に明るいからっぽさと、帯の「土を踏みしめていたはずの足元に、ひたひたと寄せる水の記憶――。」のフレーズがずっと心に残っていました。 500ページを超える長編に尻ごみしていたんですが、図書館の本棚にあるのをみつけて「運命」を感じました。 いま読まなくてはいけない気がして。

8.24ウォーターランド

妻が乳児を誘拐したことから、教職を辞めざるをえなくなった歴史教師が生徒たちを前に、授業を放棄して語り始めた故郷フェンズの歴史は…。 イングランド東部のフェンズは常に水と戦い続けなくては耕地を守ることができない真っ平らな沼沢地。 そこで繰り広げられたある一族の興隆から没落までの何世代にもわたる道のりと、歴史教師がティーンエイジャーの頃にのめりこんだ恋が引き起こした悲劇的な波紋、父母や祖父母の世代が犯した罪がもたらした子どもの世代への負の遺産といったエピソードが、フランス革命や2つの世界大戦を背景にして描かれている長編小説です。

非常に大きなスケールの話を、たったひとりの歴史教師の個人的な視点=完全なひとり語りで描いていて、重層的な内容と語り口が独特のバランスと味をもっている大河小説でした。 こういう何世代にもわたって続く物語って、日本の小説にはなかなかありませんよね。 翻訳ものらしい、とても読み応えのある作品でした。 歴史教師が語る話はあっちへいったりこっちで寄り道したりと(ウナギの謎めいた生態まで詳細に描写したりして)錯綜しているのですが、それがちっとも煩わしくなくて不思議。 一人称で生徒に淡々と話しかけているスタイルだからでしょうか。 長い長い話の末に待っているのは悲劇的な結末なんですが、読後感が重くないのも不思議です。

最後まで行き着いて心に深く残ったのは、フェンズの地平線まで真っ平らな風景。 そんな風景を見たこともないのに。 それはちょうど「嵐が丘」を読み終わって、ヒースという植物をみたことがなくてもヒースしか生えない荒れ野に吹く風を肌で感じたと思えたのに、とても似ています。 グレアム・スウィフトはほかに「最後の注文」がでているそうなので、それもいつか読んでみたいです。

8.24夕暮れ

澄みきった夕暮れが驚くほど秋めいていて、思わず夕食の支度の手を止めてベランダへ駆けあがってパチリ。 日が暮れるのも早くなって、すっかり秋ですね。

コメント

私も「ウォーターランド」好きなので嬉しいです!
もう大分前に読んだので、話忘れてますが、あの壮大さは翻訳ものならでは~って感じでした。再読したいです~。
「最後の注文」よりも私は「ウォーターランド」が好きです。翻訳好きでは、「ウォーター」「最後の~」派に分かれるんですよ。vogelさんはどっちになるでしょう??
あ、写真もあいかわらずとってもきれい!最近、私も一眼レフが欲しくなってきましたよ~。

2009/08/26 (Wed) 22:51 | ぎんこ #emXmKJzE | URL | 編集

ぎんこさんも「ウォーターランド」がお好きなんですね。
いいですよね、この小説。
ほかのなにとも似てない、堂々たる独立峰って感じで。
個人的な回顧と土地の歴史とヨーロッパ全体の歴史を全部ごっちゃに語っているのに、読んでいて混乱せず、イライラもせず、っていうことにすごく驚きました。

ぎんこさんは「最後の注文」より「ウォーターランド」派ですか。
二派に分かれるとは知りませんでした。
それだけ2つの小説が違うってことですね。
「最後の注文」の方が小説として普通っぽいつくりなのかな、と予想していますが??

一眼レフ生活、ご一緒にぜひ!!
楽しいですよお~(カメラメーカーの回し者か?)。
シャッターを切ってるって感じがいいです♪
画質は優秀なコンパクトデジカメの方がよかったりする場合も
多々あるんですけどね…(汗)。

2009/08/27 (Thu) 00:44 | vogel #9JN9NMwM | URL | 編集

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