観光客が知らないタイの素顔 ラープチャルーンサップ「観光」

「ウォーターランド」を図書館で借りたときにみつけたラッタウット・ラープチャルーンサップ「観光」。 ネットでの評判がよかったので読んでみました。 著者はアメリカ生まれでタイのバンコク育ちのタイ人青年。 アメリカの大学の文芸創作科で学んだ後、英語で書いたこの短編小説集でデビューしたのだそうです。 それにしても長い名前…ワタシは絶対に覚えられないわ。

8.30観光

7編の短編すべて、舞台はタイ。 やがて失明する母親と一緒に最後の休暇としてリゾート地へと旅するひとり息子、闘鶏にのめりこんで破滅へ突き進む父親を案じるティーンエイジャーの娘、安ホテルの息子で白人観光客に心ひかれるタイ×アメリカのハーフの少年、ゴミの山の横で生活している兄弟、タイで働く息子にひきとられた半身不随の老アメリカ人、カンボジア難民の少女と知り合った貧しいタイ人少年、親が賄賂を使ったおかげで兵役を自分だけ免除される青年、と性別も年齢も立場もさまざまな主人公が登場します。

う~ん、この作家さん、うまい! 短編らしさを十二分にいかした、すごく巧みなストーリーテラーです。 ご本人は若い男性なのに、15歳の少女の激しく揺れ動く胸のうちも、体の自由がきかずタイ語もわからない外国の老人の苛立ちも不自然さをまったく感じさせません。 ただ、うますぎるからか、重いテーマを明るく乾いた文体で描く個性のせいなのか、ワタシが長編派だからか、心に食いこんでくる切実さがほんのちょっと足りないような感じがしました。 あるいは、ワタシがタイをまったく知らないから、内容がグッと迫ってこなかったのかな。

8.31葉陰の虫

この短編集で描かれているのは、観光客が知らない素顔のタイ。 いわゆる途上国の庶民の生活を卑下せず、ことさらに強調もせず、当たり前のこととしてさらりと表現しています。 タイに押し寄せる外国人観光客への辛辣な視線は、けっして意地悪ではなくカラッと冷めたスタンスです。 現地の人たちはこんな風に感じているのだなと思わせるものがありました。


8月最後の日とは思えないほど涼しくてビックリです。 ここはどこ? ホントに京都か?? 何度も修正させられた仕事のギャラが恐れていた通り、ありえないほど安くてガックーン。 石川啄木じゃないけど、じっと手をみてみる。 一日中、虚脱状態。 そろそろ本気で、自宅でできる校正の仕事でも探した方がいいのか…(て、それができるのかどうかも知らないけど)。

コメント

去年私も読んで、非常に巧みに書かれているし、タイ人であるアイデンティティもよく出ていて好印象を持ったのですが、その後新作とか出てないんでしょうかね。
なにか昔の日本を思わせるようなところもあって、東南アジアの文学ってもっと読みたいんですけど、残念ながらあまり紹介されてないですよね。

それにしても本当に今年は涼しいですね。これも地球温暖化の一端でしょうか。
選挙で幸福ナントカ党は全滅しましたが、だからといって地球の危機が去ったわけではありませんね。

2009/09/01 (Tue) 00:16 | piaa #- | URL | 編集

この本、piaaさんのところでみかけたのかも。
デビュー作とは思えないほど、語り方もストーリーも巧みで驚きました。
短編小説家として、すごくいろんな引き出しをもっていそう。
でも名前がどうしても覚えられないから、本屋さんでみつけられないな(汗)。
piaaさん、この人の新作を発見されたらブログでレビューしてくださいませ。

選挙はふたを開けたら、日本中が民主党一色でしたね。
果たしてこれが吉と出るか凶と出るか??
とりあえず、教祖さまが議員にならなくてよかったです。

涼しいのはうれしいけれど、いまの季節としては異様で不気味ですねえ。

2009/09/01 (Tue) 00:59 | vogel #9JN9NMwM | URL | 編集

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