山岳小説としての緊迫感が物足りない 笹本稜平「還るべき場所」

笹本稜平「還るべき場所」をようやく読み終わりました。 山岳小説の傑作ということでネットでは非常に評判がよく、読書家の児玉清さんが昨年のベスト本にあげているくらいだから、ものすごく期待してたんですが。 寝ても覚めても主人公はなかなかリベンジの登山にでかけない…異様に読むのに時間がかかりました。 最後の3分の1は緊迫感がある登攀シーンであっというまに読めたんですけどね。

12.25還るべき場所

主人公の矢代翔平は世界第2の山=K2の絶壁を登攀中に、ザイルで結ばれたパートナーであり恋人である栗本聖美を滑落で失って以来、山に向かうことができなくなっていた。 恋人の滑落死から4年、クライマーとしてともに山を目指してきた友人から、K2を望む高嶺ブロードピークへの公募登山隊にガイドとして同行することを求められ、因縁の場所へと旅立つ。

物語が動きだす前、序盤でつまづきました。 主人公のうだうだした心情とか、主人公の若かりし頃の超無謀な山行とか、まったくもってどこにも感情移入できませんでした。 先鋭的なクライマーという人種も征服欲とか名誉欲が強そうな人が多くて、個人的にあんまり好きじゃないからよけいです。 死んでしまった恋人・聖美の山に対する考え方には共感できたので、作者はいろんなタイプの山屋を描くことに成功しているのかもしれません。

公募登山や未踏ルートを目指すクライマーなど、現在の8000メートル級登山の実情が詳細に書かれていて、そのあたりはへぇ~と感心したんですが、なんか冗漫な印象。 いまひとつ物語に入りこめずに終わった一番の要因は、文章がワタシに合わなかったことかと思われます。 特に変なくせがある文章ではないんですが、語り方がくどい感じがしました。 作者にとってはこだわりのある主題なんでしょうがまったく同じフレーズが何度も出てきたり、似た表現が繰り返し出てきたり、そういうところが理屈ではなくワタシの肌に合わなかったようです(山岳小説にはもっとハードで乾いた文体の方が合ってる気がする)。 そんなところが気にならない人はかなり楽しめるのかも。 やっぱり井上靖の「氷壁」の方がずっと山屋っぽいな←ただ山の装備や社会状況などの時代背景が古すぎていま読んだら違和感ありそう。 というわけで、ひとりで勝手に期待しすぎて空振りしたということでした。 読むのがもったいないと半年近く熟成させたのがいけなかったな。 一年の最後に「これだ!」という本を読んで締めくくりたかったのに…と思っていたら、次に読み始めた本がすごくよくて、これで今年の読み納めにしようと考えています。

12.25チロリアンランプ

冬枯れの庭の真ん中で、ひとりだけ元気に真っ赤な花を咲かせているチロリアン・ランプ。 ブラジルの熱帯・亜熱帯地方が原産というのに、地植えしても冬の寒さにも負けず花をたくさんつけています。

やっと年賀状が書き終わった! やれやれ~。 これでやっと大掃除に着手できます。

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