シュールな身辺雑記 岸本佐知子「ねにもつタイプ」

岸本佐知子「ねにもつタイプ」が文庫化されているのを本屋さんでみつけて即購入。 ちまたでかなり評判がよかったので内容がとても気になっていました。 とはいえ、初めて読む人のエッセイをいきなり単行本で買うのはためらわれて。 文庫なら気軽に買えます。 が、ちくま文庫だけあって、ごく薄い本なのに600円。 あまり売れなさそうな良書をたくさん出版している筑摩書房だから仕方ないか。

1.29ねにもつタイプ

帯には「笑いがこみあげる奇妙な世界」とありますが、ワタシの笑いのツボとは少し違っていて、読んでいる途中で吹きだすようなことはありませんでした。 それでも、著者独特の奇妙な味わいの随筆にひきこまれて、あっというまに読了。 少し遠くで外仕事があった一昨日、往復の電車の中で読みふけりました。 1編がとても短くて、細切れの時間に読むのにちょうどいい本です。 で、帰りの電車でついうっかり1駅手前で降りてしまって「なんかへんだなあ」と思いながらも改札口に行くまで気がつかず(ぼんやりしすぎ!)、キツネにつままれたような気分になりました。 それは、やっぱり岸本佐知子につままれたってことかな?

著者=翻訳家のエッセイだと思って買ったのですが、身近なものを通していつのまにかわけのわからない世界に強引に引きずりこまれる短文は、創作というかショートショートというか。 著者の変なところへの執拗なこだわり満載の本です。 他の人は気にしないようなことに目をとめて妄想がどこまでもふくらんでいくため、感覚的に好きか嫌いかがはっきり分かれそう。 ワタシは絶賛するほど感覚的にぴったり!ということはなかったものの、こういうシュールな文章は嫌いじゃないです。 クラフト・エヴィング商會の、奇妙な内容に寄り添ったカットが1編ごとに添えられていて、なかなか凝った作りなのも好印象です。

1.29シャコバサボテン

非常に個人的な感想としては、内容のシュールさよりも、翻訳者である著者が目の前の仕事から逃避しようと妄想に走る姿に共感&感情移入しました。 お昼ご飯に何を食べようかと考えだしたら、頭の中はお昼ご飯のことでいっぱいになってしまったり、PC画面に自分で打ちこんだ単語をじーっと見ているうちに違和感を覚えて語源が知りたくなって辞書で調べたり。 そうしたエピソードは、家でひとりでPCに向かって仕事をしているワタシにとっては「そうそう、そうなのよ!やっぱり他の人もこんな風なんだ」と妙に安心してしまいました。 いまもテープ起こしをしなくちゃいけないのはよーくわかっているのにブログ書いてるし。

常々「音楽は苦手」と強調しているのに、2日連続でまたクラシック関連の仕事。 お話をうかがった方に質問を投げかけても、シーン。 不思議で不気味な沈黙に、同席していたクライアントの方々ともども地面にめりこみそうになりました。 なにかいけないことを言ってしまったのだろうか?と心の中は滝の汗。 でも、インタビューを始めるにあたってごくごく普通の質問しかしていない(それが気に入らなかったのか?)。 最終的には、とてもステキな言葉が出てきたので仕事としては問題なかったようなんだけど。 あれはなんだったのか?? 翌日会った人に「昨日、あの人に会ったんだってね。怖かったでしょう(笑)」と言われたから、だれにでもああいう態度らしい。 そんなの知らなかったから、ホントに怖かったよ~(涙)。 で、その重い重い沈黙に耐えていたとき、ワタシの頭の中をぐるぐるしていたのは「これこそまさに『とりつくしまもない』『はなしのつぎほがみつからない』だな。ところで『しま』って『島』?とりつきたいなら、島じゃなくて岸の方がいいのにどうして島?『つぎほ』はなんの穂??そうえいば、いままで一度もこの表現は文字にしたことなかったなあ」って、そんなことばっかり。 ま、岸本さんほどには、こういう素朴な疑問に執着してないけど。

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