コンゴの密林へ荒唐無稽な旅 高野秀行「幻獣ムベンベを追え」

日常の雑事(仕事も含む)に追われているうちに本の感想がたまってきて、宿題を放置している小学生のような心境になってきました。 まずは、近頃すっかりお気に入りの高野秀行のデビュー作「幻獣ムベンベを追え」。 高野秀行は、普通の人が行かないような辺境に突入して、そこでの体験を赤裸々に綴るノンフィクション作家です(ワタシの認識では)。 もともとは早稲田大学探検部に在籍していて、部員として企画・実現させた最初の探検が、後に「幻獣ムベンベを追え」として書籍化されることになるコンゴへの旅だったようです。

コンゴって知ってますか? 普通の日本人は、コンゴといっても国名とアフリカにあることくらいしか知らないんじゃないでしょうか。 高野秀行たちが探検にいった当時(1980年代後半)、コンゴは社会主義体制+軍事独裁政権で外国人に対してほとんど門戸を閉ざしている状態で、日本とは国交どころか商業的なやりとりさえいっさいなし、事前の情報がほぼ皆無な国。 そんなアフリカの小国の、それも他者を寄せつけない土地柄に属する密林の奥に分け入って、「幻の怪獣ムベンベ」を探した探検部員たちの顛末記です。

3.2幻獣ムベンベ

予想以上に悪い現地の状況(湿地帯でキャンプをはる乾いた土地がない)、現地の人たち(超わがままな動物学者や密林の村の人たち、地元民ガイド)と意思の疎通をすることの難しさ、マラリアに倒れる後輩、食糧難、そして変化のない日々(怪獣が出てこないから)への飽き。 どうしてこんなにたいへんなことを…を、分別のある人ならあきれるばかりでしょうけど、ただ「旅」しただけではとうてい知ることができない濃密な体験に、ほんの少し嫉妬してしまいました。 若くて体力があって、気力と好奇心が充実していて、若さゆえの無謀さが残っているうちでないと、こんな経験はできないですから。 それにしても強烈なのが食事。 食料が足りなくなって、地元住民ガイドが狩りをしたカワウソ・猿・蛇…はてはゴリラまで解体して(!)食べたんですよ。 すごい。 猿を食べながら(猿を原形のまま焼いている写真に目が釘付け)、食べることで愛おしさが増すという感想を持つ一節が衝撃的でした。 人間に似た形のものをおいしいと思って頬張るんですからねえ、壮絶です。

もっと「おもしろおかしい」本かと思ったら、意外にまじめ。 高野青年は本気で怪獣がいると信じているわけではなくて、「いないにしても、どうして似たような目撃証言があるのか」を検証したいと考えていたのですね。 「本気で怪獣探し」だったら、「いい年をして子どもの探検ごっこして」とあきれて終わりだったでしょう。 必要な機材を企業に働きかけて調達したり、国交がない国への入国に手を尽くしたり、高野青年を筆頭とする探検隊員たちはなかなか現実的にしっかりしていますし。 探検から14年後の隊員たちの「その後」が文庫本の最後に追記されていて、それがまたとてもよかった。 みんなそれぞれ、大人になったのだなあとしみじみ。 デビュー作ということもあって著者の書き方は上手とはいえないのですが、おおげさに煽った表現をせず、淡々と事実を積み重ねて書いている姿勢がかえって「青春」を感じさせてすがすがしかったです。


3.1胡蝶侘助

しっかり雨が降って、異様に暖かい日が続いたため、庭の植物が一気に動き始めました。 小型の椿、胡蝶侘助が今年はいっぱい咲いています。 でも、どの花も咲く前にヒヨドリかメジロに蕾をつつかれて、花びらがきれいなのはほとんどありません。 植物にとっては受粉を助けてくれる鳥の方が、花を眺めて喜ぶ人間より有用?
Category: 高野秀行

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