長谷川等伯の生涯を淡々と 萩耿介「松林図屏風」

桃山時代を代表する画家・長谷川等伯の生涯を描いた小説「松林図屏風」を読了。 なんとか京都国立博物館で開催中の「長谷川等伯展」に行く前に読めました。 先日読んだ葉室麟「乾山晩愁」の長谷川等伯を描いた短編とほぼ同じく、狩野派と競り合った末に栄達をつかんだ老獪な絵師というとらえ方でした。 そういう点でちょっと既視感があって、新鮮味に欠けてしまいました。(書影は撮り忘れました。後日アップします)

2008年の日経小説大賞の受賞作だそうです(こういう賞があることさえ知りませんでしたが、2回だけ開催されたようです)。 日経にふさわしい(?)まじめで内容的に厚みのある歴史小説でした。 無理にドラマチックに仕立てず、じっくり読む大人向きに書いている著者の姿勢は好印象でした。 題名は「松林図屏風」ですが、そのわりにこの絵については意外にあっさり。 等伯の息子・久蔵が命を削って描いた桜の絵(現在は智積院にあるもの)の方がずっと印象的です。 おもしろく読みはしたけれど、全体的にはなんとはなしに物足りない。 等伯の芸術家としての葛藤みたいなものがほとんど伝わってこなかったからかな。 工房の主宰者としての苦労や挫折に重点を置いているように感じました。 辻邦生やオルハン・パムクのような、美をひたすらに追い求める芸術家の心情とか、破滅的なほど芸術にのめりこむ姿を描いた小説が個人的に好みだからかもしれません。

淡々とした筆致は癖がなく、いかにも歴史小説らしい感じ(というほど歴史小説を読んではいませんけど)。 ただ「も」が不必要に多いこと(「が」「は」と置き直せるところに)と、一ヶ所だけあった女性に「してあげる」という表現が歴史小説としては強烈な違和感。 細かいことにこだわりすぎかもしれませんが、せっかく読みやすい小説なのに、チクッとときどき小骨のような違和感が残ったのが残念でした。 悪くはないけれど…という気持ちをずっと最後まで引きずりながら読み、この著者の文章表現や小説の展開の仕方に乗り切れず。 脇役の人たちのエピソードや内面描写に冗長と感じるところがあったので、もう少し削ったらよかったのに(というワタシはいったい何様だ)。

この本を読むなら、長谷川等伯展をみてからがおすすめです。 小説中に登場する絵について、いずれもまったく現在の呼称が書かれていないので、ピンとこない部分がありました。 展覧会で作品をひと通りみていれば、たぶんもっと具体的に個々の絵を思い描きながら読めて興味深いと思います。

4.15ヒヨドリと桜

上の写真は4月初旬に撮ったもの。 スノードロップの写真を載せようかと思ったのですが、長谷川等伯っぽい「和の風景」の方が合っていそうなので。 ふだんは遠くからカメラを向けただけでサッと逃げるほど怖がりなのに、この日は珍しくずいぶん接近できました。 ファインダーをのぞいていたら「ここは僕の庭!」とキッとにらまれました。 どこか近くに巣があるのかもしれません。 それにしても、ヒヨドリを描いた絵はあまり見かけませんね。 ギャーギャーうるさいから? 黙っていれば、なかなか姿のいい鳥なのにね。

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■Tさん、お仕事お疲れさまです。 いろいろたいへんなんですね。 くれぐれも体にだけは気をつけてくださいね。 羊毛フェルトのカードをほめてもらってにんまり自己満足。 ありがとうございます! 趣味を仕事にできたら…と妄想するのが好きです(笑)。 でも、実際に趣味を仕事にすると、それはもう趣味ではなくなってしまうのかもしれません。 仕事になると必ず締切があって、気力が湧かなくても体調が悪くても家族が病気になっても、やらなきゃいけなくなりますからねえ…つらくなりそう。 写真の背景や光については、10年くらい写真を習っている母がいつも横からあれこれ激辛の批評を浴びせてくれるおかげです、たぶん。

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