読後感さわやかな自転車レース小説 近藤史恵「サクリファイス」

近藤史恵「サクリファイス」は本屋大賞2位になり、大藪晴彦賞を受賞した作品。 ネットでもおもしろいと評判で興味をひかれたものの、ミステリにはあまり食指が動かず、結局読まずにいました。 ところが最近、「P&M Blog」のpiaaさんの感想を読んだら、これはやっぱり読まなくちゃ!という気に。 いつのまにか文庫になっていたので、早速購入しました。 ああ、この本に出会えてよかった! ひさびさに読む楽しさを満喫させてくれる本でした。

5.4サクリファイス

自転車ロードレースのプロチームに所属するチカこと白石誓は、チームのエース石尾を優勝させるために全力を尽くすアシストを自らの役割として引き受けている若者。 エースのように脚光を浴びることはないが、チーム内でのそのポジションに満足していた。 ところが、各地を転戦する中でチカの耳に入ってきたのは、石尾が過去に起こした「事故」の噂だった…。

ミステリというよりもサスペンス風味の青春小説として、とても楽しく読めました。 歯切れのいい文章やテンポのいい展開が、自転車のロードレースの疾走感と合っていて、爽快なスポーツ小説でもあります。 脇役であることに居心地のよさを感じる主人公の内面にも共感できて、読後感がすごくよかった。 唯一「む~」となったところをあげるとしたら、チカのかつての恋人がねえ…美人かどうか知らないけどさ、なんなんだ、この女!って感じ。 ほかの人物造形はとても優れていたのに。 著者は美人が嫌いなのかな(笑)。 いろんな思いを抱えながら自転車で疾走するチカにまた会いたいなと思ったら、今春、続編の「エデン」が出たのですね。 いつか読みたいな。

5.4藪蛇苺

自転車競技にいままで興味を持ったことがなくて、自転車のロードレースがこんなにこみいった不思議な世界だとはまったく知りませんでした。 個人競技だと思っていたのですが、エースを優勝させるためにアシストたちが捨て石となって複雑な駆け引きを繰り広げる団体競技なんですね。 複雑で特殊な自転車ロードレースの世界が、読んでいく中で自然に理解できるように非常にうまく説明されていて、自転車に興味ゼロの人でもまったく問題なく読めます。 ワタシは無性にツール・ド・フランスがみたくなりました。 ということで、老若男女におすすめの1冊です。 読めば気分すっきり。 お試しあれ。

【5月5日追記】
近藤史恵さんがインタビューで「サクリファイス」に触れています。 コチラの最後のあたり。 自転車競技に詳しくないのに書けてしまったところが驚き。 トリックではなく「なぜそうしたのか?」を書きたいという言葉に深く納得です。


みなさん、GWはいかがお過ごしですか? ワタシは友だちの家に押しかけて手作り料理でささやかな出版お祝いパーティーをしたり、母のおつきあいででかけたスポーツウェアのバーゲンでジム用ウェアを手頃な値段で手に入れて「ひさびさにジム通いを復活させようかな」と考えたり、庭で草ひきに没頭したりとのんびりしています。

■いろんな記事に拍手をありがとうございます!
Category: 近藤史恵

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2010/05/05 (Wed) 19:22 | # | | 編集

おお、読まれましたね。気に入ってもらえたようで私も嬉しいです。

確かにあのヒロインはちょっとあんまりなような(笑)。
でも結構現実にもいますよね、ああいう女って。

私が気になったのは、「××××」という事ですね。
そういう細かい事はさておき、全体にはとてもうまく書かれたいい作品でした。続編もそのうち読もうと思います。

2010/05/05 (Wed) 21:31 | piaa #9JN9NMwM | URL | 編集

piaaさん、楽しい本を紹介していただいて感謝です!

> そういう細かい事はさておき、全体にはとてもうまく書かれたいい作品でした。続編もそのうち読もうと思います。

そうそう、近藤史恵ってホントに憎らしいほど小説を書くのがうまい作家なんですねえ。
初めて読んだんですけど、また何か読んでみたくなりました。

2010/05/05 (Wed) 21:32 | vogel #9JN9NMwM | URL | 編集

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