芥川賞ブンガク 川上未映子「乳と卵」

100ページほどの短編なのに、文庫本化された直後に買ったものの、数ページ読んでは挫折の繰り返し。 大島真寿美「ピエタ」の後に、薄いからと手にとって大失敗! 世界観もテイストも違いすぎで読む気がなくなってしまいました。 今日は遠方まで電車で行く仕事があったので、川上未映子の芥川賞受賞作「乳と卵」をやっと読了しました。 宿題をひとつ片づけたような気持ちです。

乳と卵(らん) (文春文庫)乳と卵(らん) (文春文庫)
(2010/09/03)
川上 未映子

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豊胸手術を受けるために上京してきた姉とその娘を迎えた「わたし」。 姉はホステスをして生計をなんとかたてているシングルマザーで、不可解なほど豊胸手術にこだわり、その娘は母親とも叔母ともまったく口をきかず筆談で受け答えをするのみ。 「わたし」のアパートで過ごす3日間が終わるとき、母と娘の葛藤が露わになって…。

もうなんといったらいいのか、これが現代の純文学ってやつなんでしょうね、きっとね。 月経だとか排卵だとか受精だとか、生々しい。 こういうことは今までもブンガクですでに何度も表現されているような既視感があって。 こういうどろどろは苦手。 しかし、女性の産む性としてのどろどろと胸の奥でとぐろを巻いているものを吐きだしたかのようにみえて、実は最後まで読むと結構、小説の骨格はまっとうというか古めかしい印象なのでした。

大阪弁の完全な口語調で、改行もなくズルズルと進むさまは、本当に目新しいのかどうかについてはちょっと懐疑的。 大阪弁なら田辺聖子がいるし、ズラズラと息の長い文章の積み重ねは「がんばりません」頃の初期の佐野洋子を彷彿とさせます。 ひとり語りで展開していく女性同士の話であるのにもかかわらず、「ピエタ」とは対極にある感じ。 ただ言葉のセンスがいいし、勢いのある長い文章も私は苦痛ではなかったです。 これしか読んでなかったら、今後、川上未映子に食指を伸ばすことはなさそうでしたが…

ヘヴン」を読んで、胸の奥にずしんと直球で作者の思いが伝わったので、今後も注目していきたい作家ではあります。



ヘヴンヘヴン
(2009/09/02)
川上 未映子

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強烈で残酷ないじめをテーマにした「へヴン」は、作家が魂を削って書いた小説だろうと思います。 未映子チャンって、前衛みたいにみえて、実は根の部分では意外にクラシック。 そういうスタンス、嫌いじゃないです。 「ヘヴン」を超える大作を待ってます!

■ブログ拍手をありがとうございます。 「まほろば駅前多田便利軒」みたいな、過去に読んだ本もぼちぼちアップしていきます(たいした量ではありませんが)。
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