テロリストの帰還 ベルンハルト・シュリンク「週末」

世界的なベストセラー小説「朗読者」の著者ベルンハルト・シュリンクの最新作です。 「朗読者」は小説としてあまり好きではなかったのですが、本屋さんに並んでいて、日本でいうところの全共闘世代をテーマにしているということで興味をひかれて、ひさびさに新刊本を購入。 新潮社のクレストブックスはついつい欲しくなるステキな装丁&文字組みですし。



赤軍派テロリストとして殺人を犯し服役していた男が恩赦により20年ぶりに帰ってくる。 母親代わりの姉は弟の出所を迎えるため、週末に弟の旧友たちを郊外のヴィラに招待してパーティーを企画。 しかし、20年の歳月はそれぞれの立場を大きく変えていて、友情、ねたみ、かつての淡い恋…互いに胸に秘めた思いが交錯していく。

裏表紙に書かれている「償うことができない行為をした人間は、その後、どうやって生きていけばいいのか。人は人生との折り合いを、どうつけていけばいいのか。…何より人生への深い洞察がある。」という言葉にひかれて買ったのですが、そうかなあ?? 読む前に「こういうオチだったら嫌だな」と思っていた通りの終わり方でした。 なんだかな。 文章がそれなりにいいから、読んで損した!とまではいいませんけど買わなくてもよかった。

9.23キンミズヒキソウ


この著者の語り口はとても洗練されているんだけれども、どれも「小説のネタにするためによさそうなテーマを探した」という感じがしてなりません。 この小説でも、結局テロリストの断罪はどうなったんだ?と突っこみを入れたくなりました。 テロリストの男がまるで反省の気持ちがないのは実際そんなものなのかもしれないけれど(日本に戻ってきた某・女テロリストもそんな風にみえます)、この小説の登場人物のほとんどが、男の過去の罪に対してほとんど何も気にしていない。 暴力を行使した全共闘世代に対して釈然としない感じを日頃からもっているから、このエンディングにイラッときたのかもしれません。 もしかしたら、著者は「赤軍派世代なんて、こんなものなんだよ」ということがいいたかったのかも。 だとしたら、作戦勝ちです。 とても演劇的で、そのうちこのまま舞台になりそう。 でもなあ…人の命の重さをどう考えているのか、著者なりの答えを示して欲しかったです(勧善懲悪じゃなくてもいいから)。


■拍手をありがとうございます。 みんな、いろいろたいへんなことを抱えているのですよね。 前の記事を書いた直後はあまりにどんより暗い内容だから消そうかと迷ったのですが、生きていればそんな日もあります。 暗い気持ちを書いてしまったけれど、そうすることで少しでも誰かに寄り添えたとしたら幸いです。

コメント

シュリンクの本

きもの手帖のFUSSAさんについて検索しているうちに、ここにたどりつきました。きものについてはともかくシュリンクの本についての洞察、なるほどと思いました。「朗読者」しか読んでいないのですが、「小説のネタになりそうなテーマを探している」とご指摘。「朗読者」も、ナチス、青春の日の初体験、主人公が文字が読めないなどなど、あざといテーマばかりを組み合わせているといわれれば、そうですよね。私は泣きましたけど(笑)、甘いなあ。勉強になります。また遊びにきます。

2012/09/24 (Mon) 18:46 | 紫苑 #- | URL | 編集

紫苑さん、はじめまして!
コメントをありがとうございます。

「朗読者」はもちろん(?)泣きながら読みましたよ(笑)。
シュリンクはウマイんだけれど、命の重さに対する真摯な気持ちというか、そのテーマを書かずにはいられないというような切実さがいまひとつ伝わってこない作家だな…というのが2作読んでみての率直な感想です。
ひねくれものなので、どうも世間一般の感想とずれているようなんですが。

紫苑さんは着物を楽しんでおられるのですね。 いいなあ、大和撫子。

更新が滞っていますが、たまってきた本の感想をぽつぽつアップしたいと思っています。
ぜひ、また遊びに来てくださいね。

2012/09/27 (Thu) 00:37 | vogel #9JN9NMwM | URL | 編集

>生きていればそんな日もあります。

本当に、そうですよね。
体も心も重い日があります。
消さないでくれてありがとうです。

2012/09/30 (Sun) 09:13 | まことん #ZKhxdi3Y | URL | 編集

まことんさん、こんばんは。

まことんさんの言葉でとても救われた思いです。
こちらこそ、心からありがとう。

2012/10/02 (Tue) 21:27 | vogel #9JN9NMwM | URL | 編集

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