社会からこぼれ落ちた青年に明日はあるのか 乃南アサ「ニサッタ、ニサッタ」

本屋さんでみかけて買おうかどうしようか、ずいぶん長いこと迷いました。 乃南アサ「ニサッタ、ニサッタ」。 文庫本の帯は「悪いことなんかしていないのに、どこまで転げ落ちるのだろう? 現代日本で働く若ものをリアルに描く長編小説」。 なんか重苦しくて暗そう。 でも、表紙の装丁は明るいし、乃南アサなら読後感が悪いということもないのではと考えて読んでみました。

 

大学卒業後に就職した会社を些細なことで辞め、転職した会社が倒産。 派遣会社に登録していろいろやってみるものの、自分が悪かったり運が悪かったりでどこも長続きせず、挙げ句の果てに派遣会社の担当者と喧嘩してクビになってしまった主人公・片貝耕平。 金欠でアパートの更新ができなくなり路頭に迷った末、パチンコで一発逆転を狙うが…。 サラ金に追われた耕平が流れ着いたのは、都会の片隅にある新聞配達所だった。 やっと腰を据えてまじめに働き始めた耕平だったが、思いがけないトラブルに巻きこまれ、再びあっさり勤めを辞めてしまい…。

要するに、考えが甘くて自分に甘い、そして何か起こると他人のせいにしてしまうようなイマドキの若者がどんどん坂道を転がり落ちていってしまう話です。 主人公にはまるで共感できないし、同情もまったくできません。 読んでいると、主人公を説教したくなってきます、世の中なめるなよって(笑)。 でも、おもしろかった! 上下巻を一気読みしました。 最後は主人公と一緒にホロッと泣きました。 おすすめです。

ホームレス寸前のギリギリまで落ちていく主人公。 日頃の心がけが悪いからとはいえ、一歩間違えば他人事ではないと切実に思わされました。 重いテーマなんですが、どこかカラッとした筆致なので深刻になりすぎず、最後にはちゃんと救いがあるので(解決にはなっていないのだけれど)安心して(?)読めます。 100歳近いお祖母ちゃんの言葉と手の温かさに主人公と一緒に癒されました。 やっぱり核家族より三世代同居の方がいいのかも。

4.2山吹

庭でいっせいにいろんな花が咲き始めて、東京での仕事のテープ起こしをするべきなのに気もそぞろ。 小雨の中、カメラをもってあっちでパチリ、こっちでパチリ。 最近、ファインダーをのぞきながら、長田弘の詩「世界はうつくしいと」の一節が何度も何度も心に浮かびます。 春の雨が降る午後にみる山吹の黄色はひときわうつくしい。


■拍手をありがとうございます。

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