物語性+日本語表現の妙 久生十蘭「十蘭万華鏡」

久生十蘭…字面でなんとなく名前を知っているだけで、この本を読むまで「ひさお じゅうらん」と読めなかった私(汗)。 ずいぶん昔の作家なのに、ここ何年か再出版されていて話題になっていましたね。 流行っているものにあまり興味をひかれない天の邪鬼なんですが、「P&M Blog」のpiaaさんのレビューで読んでみる気に。 本屋さんにあった唯一の久生十蘭の文庫本「十蘭万華鏡」を買ってみました。

なんなの、これ…江戸川乱歩や夢野久作系の推理小説家のイメージが強かったのに、想像していたのと全然違う! ひさびさに「小説を読む」ことを堪能しました もっと早く読めばよかったと後悔。 



戦前にパリに留学した”お嬢さん”たちの無軌道な生活を描いた「花束町一番地」、幕末に国後島にロシア艦船が寄港したゴローニン事件を題材にした「ヒコスケと艦長」、謎めいた女を巡るミステリ風味の「贖罪」、戦時中の男女の淡い交流を描いた「花合せ」、遣唐使一行の帰国船がたどった運命「三笠の月」、第二次世界大戦に巻きこまれた在外邦人のカップルを淡々と描いた「川波」など、12編を収めた短編集。

どれも本当におもしろかった。 その中でも、カラッと明るく乾いた文章で戦争の悲惨さを切りとった「少年」と、「ヒコスケと艦長」で描かれた日本人に不慣れなロシア人艦長の目を通してユーモラスに語られる(でも実は悲惨な)抑留生活、恋愛風味の「花合せ」が特に心に残りました。

9.19キノコ

とにかくジャンルも舞台も味わいも文体も、これでもかというほど幅広いことに度肝を抜かれました。 変幻自在、まさに万華鏡のような短編集です。 12編全てが違う切り口と味わいなんですよ。 それなのに、通して読むと、そこにあるのは誰にも真似ができない「久生十蘭らしさ」。 物語が唐突なほどスパッと終わっても、そこがまたなんともいえず独特でいい。 すごいよ、十蘭! あまりにも多彩すぎて「十蘭というのはこういう作家ですよ」とはいえないのがもどかしいです。

ちょっとクラシックというかレトロな語り口も独特なんですが、文章がすばらしくて、ひさびさに読むことそのものが楽しめる小説家に出会えてウキウキ。 今日も本屋さんで久生十蘭の文庫本を探したもののみつからず残念でした。

9.19ネコジャラシ


わが家の庭は夏の暑さと蚊の大群に恐れをなして、まったく手入れをしていなかったのですっかりジャングル状態。 ネコジャラシもわんさか…恥ずかしい。 ようやく蚊が少し減ってきたから(でもまだまだ健在)、そろそろ草ひきできるかな。

■いろんな記事にいっぱい拍手をありがとうございます!

コメント

十蘭すごいですよね。(他に表現する語彙が見つからない…)

近くの本屋さんで見つかりませんでしたか?
河出書房から7冊くらいと岩波から一冊出てて今は比較的手に入りやすいかと思うんですが。

傑作の呼び声高い「湖畔」と「ハムレット」がバカ高い講談社文芸文庫でしか読めないのがムカつきますが、私は古本で創元社文庫「日本探偵小説全集第8巻・久生十蘭集」を見つけて読みました。
これには「万華鏡」に入ってなかった時代物が多数収録されていて、特に「顎十郎捕物帳」は大変楽しく読みました。ぜひ探してみてください。

2013/09/22 (Sun) 22:39 | piaa #- | URL | 編集

piaaさんに触発されて初・久生十蘭。
いや-、なんかどう言ったらいいのかわからないんですけど、スゴイですね(笑)。
半月ほど前に読み終わっていたのに、どういうおもしろさがあるのかを言葉にしようとすると、とらえどころがなくてなかなか感想が書けずにいました。

>河出書房から7冊くらいと岩波から一冊出てて今は比較的手に入りやすいかと思うんですが。

冊数だけ多くても読みたい本がみつかったためしがないという、頼りにならない本屋さんしか近くにはなくて…とほほ。

「湖畔」と「ハムレット」、それに「顎十郎捕物帖」がおもしろいんですね。 探してみます。
情報ありがとうございました!
これからも、piaaさんの本のレビューを楽しみにしています。

2013/09/22 (Sun) 23:13 | vogel #9JN9NMwM | URL | 編集

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