自意識過剰から解き放たれるには 西加奈子「うつくしい人」

ひさしぶりに何の予備知識もなく、本屋さんの店頭で気になって買ったのは西加奈子の文庫本「うつくしい人」でした。 特に好きな作家なわけでもないし、西加奈子ならもっと有名な本もあったのですが、ただなんとなく。 そういえば西加奈子って直木賞をとったんだっけなどと思い出して。



背表紙の「他人の目を気にして、びくびくと生きている百合は、単純なミスがきっかけで会社をやめてしまう。発作的に旅立った離島のホテルで出会ったのはノーデリカシーなバーテン坂崎とドイツ人マティアス。…」という紹介文を読んで、自意識過剰な姪2号のことがパッと頭に浮かんだんです。 どうすれば自意識から逃れられるのか、姪2号のヒントになるような本かもしれないという期待もありました。

こんなにスラスラと本を読めたのは本当にひさしぶり。 ものすごくおもしろい!というのではないのだけれど、重くてどんよりした前半部分にもかかわらず、サクッと読了。 これは私が精神的に回復してきたからか、梨木香歩のすばらしいエッセイで読書に弾みがついたからなのか?

3.19雨のサンシュウユ

自意識過剰、そして自己嫌悪と自己愛でぐちゃぐちゃに悩んだ経験のある人なら興味深く読めると思います。 私も多感な時期から、大人になってもずいぶん長い間にわたって自意識過剰でウジウジしていたので、主人公のバカバカしいような心の動きが理解できるんですよ。 「自意識、何それ?」というタイプの人は読まない方がいいと思います、主人公についていけないでしょうから。

前半のもどかしいような展開はもう少し刈りこんで短くしたら、もっとすっきりした構成になったのではという気もしますが、この面倒くさい前半部があるからこそ、後半、主人公が旅先で自らを解き放っていく心地よさが強調されるのかもしれません。 終盤に、マティアスとカートに乗って夜風を切って走らせながら無邪気に笑った主人公に、思わずホロリとしそうになって電車の中だったので慌てて目をパチパチしてごまかしました(笑)。 自意識の沼から自らを解き放った主人公と一緒に、読んでいる私も意外なほど気持ちよくなれました。

3.19雪柳の雨粒

何かが解決するわけでもないのですが、希望の光を感じさせる旅の終わり。 私もひとり旅がしたいなあ。 舞台はひょっとして直島かな? ああ、直島のベネッセに泊まりたいなあ。 最低でも2泊はしたい…けど、高いのよねえ。

3.19雨の馬酔木


昨夜から本降りの一日でした。 それでも驚くほど暖かで、植物が一気に動き始めました。 草木にとっては慈雨なんでしょうね。 私にとっての慈雨は読書…だったはずが、兄のことがあってからめっきり活字が読めなくなっていました。 最近続けて2冊読了できて、ようやく少し元に戻ってきたのかも。

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