プラハの迷宮にさまよう心地 ブルース・チャトウィン「ウッツ男爵」

ひさびさの読書感想は、最近読んで印象的だったブルース・チャトウィンの「ウッツ男爵」を。

ブルース・チャトウィンは「パタゴニア」がかっこよくて憧れていた作家。 それまで読んだことがない世界、そして乾いているけれど冷たくない文体にクラクラして、どんな風にしたらこんな文章が書けるのだろうとボーっとなりました。 オークションで有名なサザビーズで鑑定の仕事をした後、考古学を学んで、世界を旅して文章を書いた人。 これでもかというくらい深くて広い知識と、真実を見極める、まさに「目利き」でありながら、決して知識をひけらかすような軽さがない。 ああ、ステキ。

と、こんなに好きといっているわりには、読んだのは「パタゴニア」と「どうして僕はこんなところに」だけ。 そして「ウッツ男爵」がチャトウィンの小説だと、買ってから知ったのだけれど(汗)。

12.1ウッツ男爵

第2次大戦後のチェコのプラハ、東西の冷戦下という世情の中で、政治にも出世にも背を向けてひたすらマイセン磁器の人形蒐集だけに情熱を傾けたウッツ男爵が死んだ。 その膨大なコレクションはどこへ…。

帯には「マイセン磁器の蒐集にすべてを捧げた男が人生の最後に残したミステリーとは?」とありますが、ミステリーとして期待してはいけません。 明確な筋書きがないと嫌な人にもおすすめできません。 これはストーリーを追うような小説ではないので。

話があちこち脱線したりするし(ユダヤ教の師が作り出した人造人間ゴーレムの話がでてきたり、錬金術師の命運が語られたり)、語られる時間もあっちへ行ったりこっちへ来たり(これは「パタゴニア」も同じような感じ)。 ウッツ男爵の人生を単純に追うような構成ではなく、迷宮のような町=プラハを彷徨うような読み心地でした。 いったいどこへ連れていかれるんだろう?と思いつつ読み進め、読み終わってから心の奥で何かがこだましているような不思議な読後感。 ウッツを通して「プラハの春」に至るまでのチェコの社会に漂う空気と、壊れやすい磁器に人生のはかなさが重なって、読んだ後にじわじわきました。

12.1赤の山茶花

風邪は熱が出るほどではないのですが、かなりしつこいです。 先週後半は仕事をこなし、その間にストレッチにも行き、母のお歳暮申し込みに付き合ってデパートへでかけたりもしました。 すっきり治らなくてうっとうしい。 みなさまもくれぐれもお気を付けくださいね。


■たくさんの拍手をありがとうございます! 師走になっちゃいましたねえ…今年もあと1か月と思うと理由もなく焦ります。

コメント

No title

おおっ、これは面白そうですねえ。
チャトウィンはまだ読んでませんでした。今度読んでみよう。

でも最近本が高くて・・・
海外文学の場合文庫もあらかた1000円超えになってきたし、これもUブックスなのに1512円。
読書もお金のかかる趣味になってきましたね。

2015/12/02 (Wed) 11:28 | piaa #- | URL | 編集
No title

piaaさんはチャトウィン未体験でしたか。

ブルース・チャトウィンは話が行ったり来たり寄り道したり、という一筋縄ではいかない文章なので、好き嫌いが分かれそうなのですが、海外小説をよく読んでおられるpiaaさんなら気に入られるんじゃないかな。
機会があれば、ぜひ一度読んでみてください。

いまamazonをのぞいたら、「どうして僕はこんなところに」は文庫化されているんですね。 これまで読んだ3冊の中で、私はこれが一番好きです。 一番わかりやすい文章だから文庫化されたのかも??

最近、ホントに本が高いですねえ。
チャトウィンは特に高い! 読者が限定されてバカ売れする期待値ゼロだからかな。
一番最近翻訳が出た「黒ヶ丘の上で」なんて、ほぼ4000円! もう何度も何度も本屋さんで手にとっては、ため息交じりに棚に返しています。

2015/12/02 (Wed) 20:57 | vogel #9JN9NMwM | URL | 編集

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