恐ろしい独善が現状に重なる 小説「帰ってきたヒトラー」

ひさしぶりの読書ネタで、おすすめでもない本を取りあげるのもどうかと思って、そのままになっていたティムール・ヴェルメシュ「帰ってきたヒトラー」。 読んだのはずいぶん前なのですが、ここのところのきな臭い世界情勢で思い出しました。 

4.18帰ってきたヒトラー

第2次世界大戦末期に自殺したはずのヒトラーが突然、現代のベルリンに甦った。 自殺した時のガソリン臭い制服を身につけ、記憶もしっかりもったままで。 自らを「ヒトラー」だと主張する彼を、周囲は新手の「そっくりさん」のお笑い芸人ととらえる。 徹頭徹尾ヒトラーであることを貫く姿勢を「売れる」と判断したテレビ番組制作会社は全社一丸となってヒトラーをお笑い芸人として売り出し、あっという間にテレビで人気者に…。 ヒトラーの視点で描いた問題作であり、ドイツで賛否両論を巻き起こしたベストセラー。

以前、この小説を映像化した映画が話題になっていたのでみにいこうと思っていたんです。 ところが、父が「その小説、読んだけど、つまらなかったよ。 読んでみる?」と単行本を貸してくれました。 確かに内面描写や独白が冗長で、ストーリーも動きが悪くてピンとこなくて、ダラダラと読んでいる間に映画の上映期間が終わってしまった(汗)。 写真は単行本ですが、文庫化されています。

設定はSFのようでありながら、別にSFでもなんでもありません。 なぜヒトラーが甦ったのかも、結局どうなるのかも、一切説明なし。 ヒトラーの内面を一人称で書いているけれど、本人の人間性を描くというよりは、主眼は社会風刺なのではないかと感じました。 例えばテレビ業界の若者たちがヒトラーを面白がってプロモーションしていくノリとか、パソコンやネット・携帯電話への素朴な懐疑とか。

4.18新芽の緑


小説としてはつまらなかったです。 ただ、ヒトラーを面白がるテレビ業界のあり方は、「独裁者ヒトラーは選挙で選ばれた」という事実と重なるところがあります。 大衆がボヤボヤしていると、自分たちが望んでもいないような、とんでもないところへ向かっていってしまうことがあるという危うさ。 まるで、いま現在の某国の大統領そのものではないか…と、ゾッとします。 作中でヒトラーが国父気取りで、自分が再び天下を取ったらこうして民衆を喜ばせてやろうと、あれこれ考えるシーンなんかも、●ランプの内面もこうなのではと思えてしまいます。

私が読んだ時点ではまだ●ランプは大統領になっていなかったんだけど、いま思いだしてみると、作中の一人称に重なるところがいっぱいあるような…。 あの自信満々の独善がほんとうに恐ろしい。 テレビに顔が映るだけでもアレルギー反応がでそうなほどイヤ。 不必要に怖がるのはどうかとは思いますが、いまの日本って戦争に巻きこまれる危険性がものすごく高まってますよね。 みんな、北のブヨブヨ太った独裁者がミサイルを撃ち込むのは韓国だと思っているのが不思議。 日本の方がずっとやられそうと思う私はペシミストでしょうか。 某大統領は米国第一主義なんですよ。 米国領土にミサイルが落ちるのでなければ、日本に核兵器が落ちても「気の毒に」で終わりなんじゃない? なんとか武力衝突を回避するためにこそ政治があるのに、これでいいのだろうか。 世界中がおかしくなってきていて本気でコワイです。 政治に無関心なのも、深く考えもせずに熱狂するのも、どちらもとても危険ということは、この小説からも伝わってくると思います。

と、珍しく熱くなってしまいました。 写真くらいは清涼なものを。 トイレの一輪挿しなんですけどね(笑)。 関西はいつまでも寒かったけれど、いつの間にか青葉の季節を迎えましたね。 明日は近場のパンダ小旅行。 愛らしい動物に癒やしてもらってきます。

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