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父と娘の物語であり作家の物語でもあり 朝井まかて「阿蘭陀西鶴」

原田マハ「太陽の棘」「キネマの神様」と一緒に、予備知識なしで本屋さんの店頭でみつけて買った朝井まかての「阿蘭陀西鶴」。 ふだん、まったく時代小説は読まないのですが、帯の「父娘小説」にひかれました。 それに、すっかり忘れていたけれど、朝井まかてといえば直木賞受賞作「恋歌」が思いの外、好みに合っていた(特に文章や表現)と思い出したのでした。

「キネマの神様」と「阿蘭陀西鶴」、はからずも連続して父娘小説を読んだワタシ。 どんだけ父親への葛藤を抱えているのか…(笑)。

10.08阿蘭陀西鶴


主人公のおあいは井原西鶴の娘。 幼い頃に視力を失ったが、母親にしっかり仕込まれて、料理が得意で家事はなんでも自分でこなせる、しっかり者だ。 母亡き後、俳諧師で勝手気ままな父親との二人暮らしでは、やることなすこと無神経な(と娘には思える)父親に対して強い反発を感じてばかり。 ある日、西鶴は強引におあいを淡路島への旅に連れだし、それまでになかった「ものがたり」を書き始める。 旅先で、おあいはずっと毛嫌いしてきた父親の別の一面に気づき…。

まったく期待せずに読み始めたけれど、おもしろかった! 

時代小説にも江戸時代にも西鶴にもまったく関心のないワタシでも、ひさしぶりに読む楽しみを味わえた小説でした。 朝井まかての文章が心地いいんです。 最近の小説ってストーリーの動かし方ばかりに腐心して、どうにも味わいに欠けているから文章を読む楽しさがなんですよ。 朝井まかては何気ない書き方みたいで、じっくり練って書いていると感じます。

とはいえ、実はこの小説、つかみはバッチリ!とはいかず、冒頭の「巻二」までは父親に対してやたらに不機嫌な娘の態度にモヤモヤ←自分のことは棚に上げて(汗)。 料理のシーンが多くて「ひょっとして、この小説はいま流行の美味しい手料理が売りものの”小川糸”系なのか?」と初めはなかなか小説に入りこめず。 淡路島へでかけたあたりから、西鶴の物書きとしての人生が動き始めてぐいぐいひきこまれました。

父娘の葛藤と和解の物語であり、西鶴が日本初の「小説家」となるまでの苦闘の物語であり、書くことにとりつかれた者の業を描いた物語でもあり。 いろいろな読み方ができる小説でした。

10.08秋海棠

西鶴って歴史的に高く評価されているけど、どういう意味で?とまるでわかっていなかったのですが、ようやく理解できました。 それにしても版元は売れれば儲かるけど、作者は買取原稿だから売れてもちっとも儲からなかったのね(浮世絵師もたぶん同じ)。 現代の編集プロダクションと同じシステムなんだなあ。

西鶴には盲目の娘が一人いたということしか記録に残っていないらしいのに、これだけの物語にできる想像力と創造力はすごいと思います。 それも、主人公が盲目だから情景描写がないのに、全然そう感じさせない筆力がすごい。 時代小説は苦手なんだけど、まかてさんのはまた読みたい。


夏に読んで感想を書きかけたまま放置していたのを、ようやく最後までかけてやれやれ。 ノーベル文学賞をとったカズオ・イシグロのことも書きたいけど、それはまた今度に。


Category: 朝井まかて

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