スタイリッシュな少年たち 石田衣良「4TEEN」

直木賞を受賞したときから気になっていた本ですが、今頃やっと読みました。
石田衣良は本当に器用な作家だ…この作品は小説の内容よりも、作家の
手腕や技巧の方が心に残った不思議な読後感の一冊です。 決して悪くは
なかったんだけど。 中学生を主人公とした小説では重松清の「エイジ」
の方がリアルで、読後感に重い芯のようなものを残したように感じました。



近代的な高層住宅と路地裏に長屋が残る佃島を舞台に選んだこと、
不治の病を抱えた金持ちの少年、大柄で粗雑で貧乏な少年、チビだが頭脳明晰な
少年、何もかもが平均的な普通の少年…と、4人の主人公たちの「持っているもの」
「欠けているもの」をバランスよく配置した巧みな人物造形、自転車を駆る
スピード感のある描写。 どの点でも申し分ありません。 申し分なさ過ぎて
それがかえって欠点にさえ思えてくるのはなぜでしょう?

深刻な時代背景をサラリと洒脱に描いて、結末には淡く救いの光りを添えるのが
石田衣良らしさ。 今までに読んだ「池袋ウェストゲートパーク」とその続編、
神戸の連続児童殺傷事件を思わせる「美しい子ども」、どれも現代の社会背景を
スタイリッシュに描いています。 エンディングに救いを用意するところなど
決してキライではないのですが、でもフワフワと軽い読後感がいまひとつ
物足りないのです。 カッコよすぎるんですよ。 人間が生きることって
もっとドロドロとしてみっともないこともあるはずなのに。 でも、
石田衣良本人は、もちろんそんなこと百も承知で書いているのでしょうが。

ずいぶん前にNHKのインタビュー番組で、石田衣良は高校生から大学在学中、
さらに卒業後もひたすら本を読みまくっていたと言っていました。 たくさんの
小説を読むことで、小説の作りのパターンが自然に見えるようになったらしい。
そのあたりに独特の「器用さ」の源があるのかもしれません。 あの器用さは
一朝一夕で身につけたものではなかったんですね。
いまは小説をほとんど読まずに作家を目指す人が多いそうですが(なぜ?)
流行作家になりたいなら、せめて本はたくさん読んでからにしてほしいものです。
Theme: 読書メモ | Genre: 本・雑誌

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