大聖堂建立に賭けた群像 ケン・フォレット「大聖堂」

いや~長かった。 文庫本で上・中・下巻あわせて1800ページあります。
ぼんやりしていましたが、よくよく見ると3巻合計で約2700円也。
これでは単行本並みの出費…出版社にうまくしてやられた感じ(笑)



舞台は12世紀のイングランド。 教会と王権が民衆を支配していた時代です。
至上の権力と権威をかけて教会と王がしのぎを削り、さらに王位継承を巡って
各派閥に荷担する領主、教会内部でもさまざまな思惑を背景に対立が激化する
不安定な社会情勢。 こうした時代を背景に、大聖堂建立を一生の仕事と
願う大工の棟梁、その後妻で「魔女」と疑われる謎めいた女、神への信仰に
一生を捧げた敬虔な修道院長が出会い、大聖堂再建へ向けて田舎の修道院が
大きな歴史的うねりに乗りだしていきます。 この3人に棟梁の息子たち、
没落した家系を復活させるために奮闘する伯爵令嬢、野心満々の司教や
無慈悲で暴力的な伯爵などがからんで、3世代にわたる大聖堂建立の物語が
展開します。

ストーリーは「それからどうなるの?」というサスペンスが常にあって
退屈せずに読み進められました。 特に零落した伯爵令嬢が絶望から
立ち上がり、まったく実生活で無力だったお嬢様から力強い商人へと
変わっていくさまがおもしろかったです。 悪役は徹底した悪だったり、
大団円では勧善懲悪がすぎるかと思うほど、すべてが都合よくおさまって
しまうなど、まさに「ハリウッド映画」をみたような読後感。
大聖堂や時代背景、修道院内部までが緻密に描写され、中世の雰囲気が
生々しく伝わってくる非常に映像的な「娯楽歴史小説」です。

読み終わった後に深い余韻を残すほどではなく、少し物足りないのは
なぜなんだろう。 登場人物のひとりひとりはていねいに描かれているのに、
結局、そのうちの誰かひとりにしっかり寄り添うことがないから、表層的な
印象にとどまったのかな…う~む。 特に棟梁の義理の息子ジャックは
主役級でありながら、あまり魅力がない人物造形。 大聖堂に火を放った
罪の意識はまったくないのか? いくらジャックが信仰心がない設定でも
当時の一般人にとっては死刑にあたる大罪。 ぜんぜん平気で仕事をして
美しい妻をめとって幸せいっぱいで…いいのか、それで?? 納得いかない。

読んで損をしたとは思いませんが、養老センセイや児玉清サンが帯に書いて
いるように、手放しでおすすめ!とまではいえません。 外国を舞台にした
歴史小説なら、以前紹介した「ポンペイの四日間」の方がおもしろかったかも
(でも、古代ローマやギリシア史が好きなワタシにとって、おもしろかった
だけかな)。
Theme: 読書メモ | Genre: 本・雑誌

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