直球の恋愛小説 石田衣良「眠れぬ真珠」

もうずいぶん前に読んでいたのですが、連日のサッカー観戦でなかなか
感想をアップできませんでした。 人気作家・石田衣良の最新刊で、
45歳の女性版画家と28歳のウェイターの恋を描いた恋愛小説です。
主人公の年齢が自分に近かったので「17歳年下の男性との恋なんて
ありえない!」と思いつつも、恋の顛末に興味津々。 器用な石田衣良に
いつものごとく、いいように読まさせられた(?)悔しさもちらり(笑)

冒頭に、いきなり妻帯者の恋人との濃厚な逢瀬シーンや、「え~更年期って
こんなになっちゃうの?」というほどキツイ更年期障害の描写が出てきて
はじめはあんまり楽しくないのですが、「運命の恋」に落ちたところから
一気に疑似恋愛体験の世界へ引っぱりこまれて、最後まで「それで?
それでどうなるの?」とページを繰る手が止まりませんでした。
 
6.20眠れぬ真珠

この装丁、へんですよねえ。 もう少し何とかならなかったのかな。
ボワ~ッとして意味不明なんですが、最後まで読むと意図はわかります。
主人公が版画家なんだから、表紙は版画風にでもした方が都会的で
小説の雰囲気とも合ったんじゃないかな。

主人公・咲世子が出会った17歳年下クンは、実は新進気鋭の映像作家で
デビュー作制作での金銭トラブルから逃れ、葉山に身を潜めているという
設定です。 ジャンルは違うけれど創造的な仕事にたずさわっている共通点が
あってこそ、17歳の年齢差カップルは成立するのでしょうね。 それぞれの
元カレや元カノジョ、ストーカーまでからんできて、ドロドロな愛憎劇に
なりそうな要素がいっぱいあるのですが、そこは石田衣良。 全体にとても
サラッとした感覚で、後味もいいです。 最後のシーンなんて「映画化する
ことを考えてるのか?」と意地悪な勘ぐりをしたくなるほど、舞台もステキ。
主人公の服装や家、車、シーズンオフのリゾート地の雰囲気など、周囲の
描写が非常に映像的で、美しくまとまってます。

特に印象的なのが、咲世子の生き方。 両親はすでに亡くなってひとり暮らし、
家でひとりで版画の仕事をしている。 芸術作品よりも本や新聞の挿絵を
制作する商業美術の仕事を主にしていて、プロとして職人的に納期に合わせて
着実に仕事をしている。 老いへの不安を感じて、ひとりおののきながらも
凜とした姿勢を崩さないところが魅力的でした。 版画制作のシーンは
特に印象的。 恋に落ちた2人が恋を通して、それぞれに新しい仕事を創造する
そういうところも悪くありません。 ほとんどの登場人物が「いい人過ぎる」
ところが少し気になりましたが。 まあ、これはファンタジーですから(笑)。
28歳で仕事ができて、精神的にこれほど大人な男性がこの世にいたら、
ワタシもきっと恋に落ちるでしょうよ←やけくそ(笑)

良くも悪くも石田衣良らしい、おしゃれでサラッとした小説です。
あんまりヘビーな本は読みたくない、ちょっと気分転換したい、そんなときに
読むのに最適です。 

コメント

例の本ですね(笑)

感想,アップしてたんだね~
なるほど。
映像を意識したかのような描写ってわかる気がするなあ。
わたしも読んでいて,これって映画になればキャスティングは誰と誰で,このラストに流れる曲はこれだなあなんて思い浮かんじゃう作品ってあるもの。
でも,あまりまとまりすぎてさらっと読めちゃう本もね・・・,絵空事すぎてねぇ。
でも,次図書館行ったら予約してこよっかな^^

2006/06/28 (Wed) 04:38 | のんちゃん #- | URL | 編集

のんちゃん、そうです「例の本」です(笑)。

江國香織原作の映画「東京タワー」をテレビでやっていたときは、15分でバカらしくなってみるのをやめたんだけど、それよりは絵空事っぽくない感じです。
この2人の関係は不倫ではないし、「芸術家」というよりも職人的な感覚で仕事をこなしていく主人公の生き方が潔くて、イヤな感じはしないはず。 恋に落ちて若い男から目が離せなくなる描写なんかは、男性作家なのによく女性心理が分かるなあ、と感心しました。

図書館で借りて読むのがちょうどいいくらいの本だと思うよ。

2006/06/29 (Thu) 00:25 | vogel #9JN9NMwM | URL | 編集

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