トルーマン・カポーティ「冷血」

さわやかに晴れた秋の朝に、トルーマン・カポーティの「冷血」を読み終わり
ました。 1950年代にアメリカ・カンザス州の平和な田舎町で実際に起こった
一家4人惨殺事件を題材にしたノンフィクション・ノヴェルです。 ものすごく
読み応えがありました。 文庫本で600ページを超えるのに、長さを感じさせ
ない巧みな筆致は、さすがに時代の寵児だった作家。 

9.2冷血

町の人たちから愛されていた穏やかな一家が、非常にむごい形で殺された
衝撃的な事件なので、血なまぐさいのが苦手なワタシはずっと読むのを躊躇
していた本です。 確かに凄惨なシーンはあるのですが、センセーショナルな
効果を狙うことなく、とても抑制のきいた書き方なので、気分が悪くなる
ようなことはありませんでした。 事件や犯人など、書く対象との距離の
取り方が近すぎず、かつ突き放しすぎてもいない、絶妙な感覚です。

犯人や刑事、被害者や犯人周辺の人たちへの直接のインタビューだけでなく
新聞記事や裁判記録などを詳細に集めて、カポーティにしか語れない
ストーリーとして再構築した手腕は、半世紀を経ても色あせはしません。
特に視点の置き方は秀逸です。 多数の証言を直接話法で長く引用することで
それぞれのエピソードが非常に生き生きとしています。 ある時は刑事の視点、
ある時は犯人の一人、あるいは通りすがりにほんの少し犯人と接点のあった人
など、さまざまな視点で書かれているのに混乱することなく、そのつぎはぎの
文章をまったく不自然に感じさせない。 こんな風にノンフィクションが
書ける人って、ほかにいるのでしょうか? 未来にほんの少し光を感じさせる
ささやかなエピソードで締めくくっているところも、叙情的な作家らしくて
好感が持てました。 ワタシにとってはノンフィクションの教科書みたいで、
もう一度、視点の問題だけに絞って再読してみたいほどです。

今秋には、「冷血」を書きながら苦悩するカポーティを描いた映画
カポーティ」が公開されます。 「冷血」を読んだら、やっぱり観てみたい。
映画会社&出版社の思うツボだな~(笑)


さて、明日から3泊4日で遅めの夏休みに行ってきます(両親の付き添いとも
いえる)。 大好きな山を眺めて充電してきます! でも、目の前にある山に
登れないなんて…。 でもでも、単独行と冬山は絶対にやらないと決めて
いるので、山を眺めての散歩で我慢します。

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