あるアイルランド移民の記録 フランク・マコート「アンジェラの祈り」

フランク・マコートの自伝「アンジェラの灰」の続編である「アンジェラの祈り」。 前から読みたかった本ですが、重度慢性金欠病でなかなか単行本購入に踏み切れませんでした。 図書館へ調べものをしに行ったついでに書架に「アンジェラの祈り」をみつけ、やっと読めました。 まとまって本を読む時間がとれず、600ページ足らずの長編を毎晩練る前に少しずつ少しずつ読んだため、ずいぶん時間がかかりました。 そして読み終わっても、仕事が忙しくてなかなか感想が書けず。 図書館へ返却してしまったので、内容はうろ覚えだし。 読むのに時間がかかったということは、文庫本「アンジェラの灰」の下巻を息もつかずに読んだときほどには、作品の世界にのめり込めなかったということかもしれません。 実際、この続編の売れ行きは爆発的ヒットとなった「アンジェラの灰」ほどではなかったようです。

2.10アンジェラの祈り

靴さえ買えない極貧のアイルランド少年フランキーが、希望を胸に単身アメリカへ渡り、さまざまな職業と苦労を乗り越えて憧れの職業である教師になり、家庭を持つまでが描かれています。 アメリカのニューヨークへ移り住んでも、フランキーは相変わらずどん底の貧乏にあえぎ続け、最低の生活レベルからなかなか這い上がれません。 現代の日本でぬくぬく生きているワタシには想像もできないほど、とにかくお金がない生活について延々と書いているわけですが、語り口がカラッとしていて、どことなくユーモラスな味わいもあるため、暗い悲壮感とは無縁です。

主人公の純朴な視線そのままの、とつとつとした文体が独特の小気味いいリズム感さえ漂わせています。 「アンジェラの灰」同様、地の文と会話文が「 」なしに、ずらずらと続いていくのに読みにくさを感じさせないのは、ひょっとしたら訳文がすばらしいからではないでしょうか。 かなり工夫して訳されていることが端々からにじみ出ていました。 それに比べると、いま読んでいる「アルネの遺品」は訳文がこなれていないようで、読んでいてなんだか気持ち悪いです。

ストーリーとしては前半の方がしまっていて、後半はだれ気味。 屈辱的な仕事に耐え、肉体労働でへとへとになり、アメリカ兵として従軍し…さまざまな困難を経て、高校卒業をしてないのになんとか大学へ潜りこむフランキー。 少年時代同様の無垢で不器用な生き方に心をひかれましたが、後半になると金銭的には多少安定してきているのに、人生としてあまりうまくいかなくなったからか、あるいはアイルランド人らしくグデングデンになるまで痛飲する悪癖から抜け出せないからなのか、だんだん主人公に共感できなくなりました。 軍隊でいじめられながらもがんばる姿、ドイツ・ダッハウのユダヤ人強制収容所でのこと、黒人出稼ぎ労働者とのエピソードなどは胸にじんときたんですけど。

アイルランド移民はアメリカで一段低く見られているですね。 以前に聞いたことはあったのですが、アメリカのことは全然わからなくて。 「アンジェラの祈り」はあくまでも続編なので、主人公フランキーを知らない人は「アンジェラの灰」から読んでください。 「アンジェラの灰」の方はものすごくおすすめです!

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