過剰なまでの語りの力 ウラジーミル・ナボコフ「ロリータ」

ウラジーミル・ナボコフ「ロリータ」を読み終わって数日、なかなかブログにアップできませんでした。 仕事もひとまず山を越えたので、書きにくい感想文に挑戦してみます。
 
ワタシが読んだのは新潮文庫から出た新訳(若島正訳)です。 単行本で新訳がでたとき、ネットで話題になっていたから気にはなっていたのですが、ようやく読みました。 前にも書いたように「ロリータ・コンプレックス」の語源になった本で、発表当時はかなりキワモノ扱いされたそうです。 40歳(くらい?)の主人公ハンバート・ハンバートが下宿の12歳の少女に恋をして、ついにはロリータを連れて広大なアメリカ内を逃避行…ストーリーを簡単にまとめると、こういうことです。 でも、この小説はストーリーなんてあんまり重要ではないように感じました。

7.11ロリータ

12歳の少女と肉体関係を結ぶ主人公の行為は、社会的には完全に「変態」。 でも、万が一ロリコン趣味の人が何かを期待してこの小説を手にとったとしたら、とてもガッカリするでしょう(笑) 直接的な描写はほとんどでてきませんし、ハンバート・ハンバートは(自分で自分の行動が異常なことだとわかっていながら)本気で一途にロリータを愛しているので、隠微な雰囲気は意外なほどナシ。 本当に、まっとうな「文学作品」なんですよ。

全編を通してハンバート・ハンバートの一人称で語られる顛末は、主人公の錯綜した精神状態を顕微鏡でのぞきこむように描写したり、瑣末な事実や風景まで詳細に書いたりして、けっして読みやすい文章ではない。 けれど、過剰なまでに溢れでる語りの文体こそが、この小説の味わいどころなのだと思います。 ロリータの立場からすれば、主人公の行為はやはり虐待なのではないかというワタシの心情とは裏腹に、饒舌で執拗な語りの力に圧倒されて、いつのまにか主人公の目線に立っている自分に気づいたり。 あまりにもロリータを愛しすぎて少しずつ狂気にからめとられていくさまは哀れさえ感じさせました。 ただ、男性の感想に「哄笑を誘う」とか「腹を抱えた笑った」というようなものがありましたが、女性が読むと(懸念したほど不快ではないけど)笑えないです。

(ロリータにすればはた迷惑な愛ながら)これは恋愛小説であり、逃避行部分はロードノベルでもあり、どういう結末を迎えるのかというサスペンスもしっかりあり、ヨーロッパとアメリカの対比もあり…いろんな要素を盛りこみすぎたようにも思えて、スッキリしない読後感が残りました。 ある程度、翻訳小説を読み慣れた人でないと楽しめなさそう。 訳者あとがきには「読み終えたら、訳注を参照しながらもう一度読み直してみるとおもしろい発見がいろいろあるはず」というようなことが書いてありましたが、ワタシは一度読んだら、もういいかな。 キライじゃないけど、好きでもない。 他に読みたい本がいっぱいあるから。
【追記】
文庫本をこれから読む方は、大江健三郎の解説を先に読んではいけません。 ストーリーを追う小説ではないとはいえ、全編について完全にネタバレしていて、初めて読む人の楽しみを奪うような内容ですのでご注意。

7.11ギボシ

雨に打たれてギボウシがうつむいて咲いていました。 漢字では「擬宝珠」だそうです。 強い台風が日本を直撃しそうですね。 雨が降り続いている九州に、これ以上甚大な被害が出ませんように。 

「ロリータ」を読み終えて、これで「テヘランでロリータを読む」が読める、やれやれ(笑)。 でも、その前に一昨日、本屋さんでサイモン・シンの「暗号解読」の文庫新刊をみつけたので、当面はそちらを優先。

コメント

う~んなるほど。。。そうだよね、だって「レオン」だっていわゆる「ロリータ」なわけでしょ。。。
んじゃ~、秋葉で「萌え~~」って言っている人達は。。。?!

ps  「青が散る」は20代で読みました^o^ 私にはダメだった~~つうかなんかムカついて途中でやめたのさっ  「泥の河」はリバイバル!今の方が染みるわ~~

2007/07/16 (Mon) 04:24 | Laica mama #- | URL | 編集

Laica mamaさん、こんばんは。
「ロリータ」はいやらしげなイメージを裏切って完全にブンガクでしたよ(笑)。 世間一般の倫理的基準とは関係なしに、小説として完成してるというか…ひとことで片付けたり要約したりできないようなスケールの大きさでした。 「レオン」は観てないからなんともいえないけど、ロリコンではないんじゃない?

「青が散る」は20代でもダメだったんですねえ。 ワタシは体育会系+目的を見いだせない大学生活を送っていたから、すごく感情移入してしまいました←ダメダメな大学生の典型。 

2007/07/17 (Tue) 01:26 | vogel #9JN9NMwM | URL | 編集

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