静かに語られる人生の苦み ウィリアム・トレヴァー「聖母の贈り物」

夏以来、あれこれ読み散らかしている本の感想を書いている時間的、あるいは精神的な余裕がなくて、でも放置していると何を読んだのかすら忘れてしまいそう。 ということで、個人的な備忘録として簡単にサラッと(いつもはダラダラ長々書いてクドクドしいけど)書くことにします。

まずは春先からずっと気になっていたウィリアム・トレヴァーの短編集「聖母の贈り物」。

9.14聖母の贈り物

表紙の写真というか、装丁がなんか好きになれない本だったんですが、帯の惹句「普通の人々の人生におとずれる特別な一瞬、運命にあらがえない人々を照らす光」にひかれて2400円という値段にもかかわらず購入しました。 ネットのあちこちで評判がよかったので、すごく期待してたんですけど、ワタシには合いませんでした。 とっておきにして、なかなか読みはじめなかったくらい期待してたのに…ガックリ。 決してつまらなかったわけじゃないんですよ。 ただワタシの好みじゃなかったんです。 抑制のきいた淡々とした語り口、精緻な筆致は好きなはずなんだけど…なぜだろう?

読む人の年齢によっても受け止め方が全然違うのではないかと思います。 30歳くらいまでの人が読むと、人生の深淵をのぞくようでジンとくるかもしれませんが、中年真っ盛りのワタシにとっては、どの話もちょっとビターすぎました。 「人生って、結局こんなものだよ」と目の前に突きつけられたみたいで、もうすでにリアルに「そんなものだ」と肌で感じている年齢の人間にとっては、読んだ後に何やら砂のようなものが胸につまったみたいな感覚。 たとえば「こわれた家庭」と「マティルダのイングランド」はどちらも主人公が老女で、その「老後の孤独な生活」が生々しく想像できる年齢になってしまったワタシにはちょっと…。 読者を絶望に置き去りにするような後味の悪さはないんですよ。 でも、絶望よりももっと空しいような、突きぬけた無音の真空状態に放りこまれたような、そんな感じ。 こんな風に感じたのは、現在のワタシが精神的に元気でないからかもしれません。 読むなら、心身が元気なときにどうぞ。

辛い現実を描きつつも、長い人生の中のキラッとした美しい一瞬を切りとったアリステア・マクラウド「冬の犬」やアリス・マンロー「イラクサ」、シュテファン・ツヴァイグ「人類の星の時間」のような叙情性がある短編集の方がワタシの好みです。

あ…またグダグダ書いちゃった(汗)。 さて今夜は村上龍の「半島を出よ」を抱えて寝るとします。

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