失われゆく農村風景への愛惜 彭見明「山の郵便配達」

下に書いた内田樹の「街場の中国論」の影響というわけではないのですが、珍しく中国の短編集を読んでみました。 中国本土の人が書いたものを読むのは、ずっと昔に「ワイルド・スワン」以来です。 

9.14山の郵便配達

この文庫本を手にとったのは、表題作「山の郵便配達」の映画が大好きだから。 中国の美しい山村の映像、説明的な台詞がまったくない寡黙な脚本のすばらしさ、しみじみとした情感、そして犬。 犬が犬として存在しているすばらしさ…ああ、いま思い出してもウットリしてしまうくらい。 ワタシの中ではベスト映画かも(別に映画に関して詳しくはないですけど)。 原作は思いがけないほど短くて、でも原作の持ち味を損なうことなく美しく映像化した監督の手腕に再び脱帽しました。 原作と映画をくらべると、「原作の方がいい」と感じることが多いのですが、「山の郵便配達」は映画の勝ち…って、勝ち負けの問題じゃないんですけどね。

この本に収録されている短編は、いずれも時代の波にいまにも飲みこまれそうな中国の農村を舞台にしています。 文化大革命の苦難を乗り越えた農村部の人たちの貧しくも心豊かな生活。 そのひっそりとした我慢強い営みが、改革開放政策によって子どもたちが都会へ出て行くなどして少しずつ失われていく様子を淡々と描いています。 語り口が淡々としていることで、かえって悲しみや寂しさの色が深くなっているようです。 読んでいたときはピンと来なかったのに、全部読み終わってみると、大きな湖の畔に暮らす農民の生活を詩情豊かに描いた「沢国」がたいしたストーリーもないのに一番心に残っています。


9.16イタリア犬2

「あんまり暑いから、ちょっと一人で水浴びしてきたんだよ」という目つきで走り去ったワンコ。 ワタシも犬になって、噴水で水浴びしたい。

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