「ツ、イ、ラ、ク」が好きな人向き 姫野カオルコ「桃」

姫野カオルコ「桃」はずいぶん前に読んでいながら、旅行のどたばたで感想が書けないままになっていました。 ようやく書く時間ができた頃には、細かいことは忘れちゃって…(笑)。 サブタイトル「もうひとつのツ、イ、ラ、ク」とある通り、長編小説「ツ、イ、ラ、ク」の周辺を描いた短編小説集です。

10.1桃

この表紙…なんかイヤです。 脱ぎ散らかしたズック靴に汚らしい色をかけて、全体的に汚らしい感じがして、内容とぜんぜん合っていません。 産毛までみえるほどの桃のアップ写真だった単行本の方が装丁がずっと素敵でした。 交歓シーンの生々しい描写がありながらも、まっすぐで清冽な恋に落ちたからこその痛々しさが伝わってきた小説にふさわしくないです、この表紙は。

滋賀県の田舎の中学校で起こった「ある事件」に関わった6人を主人公にした6編を収録しています。 当事者のその当時の内面を吐露するものだったり、「ツ、イ、ラ、ク」では脇役だった子が事件をどう感じて、その後をどう生きたのか…など、視点も時間の構成もバラバラ。 「あ、そうそう、この子はどう思ってたのかな」なんて、脇役の子たちに再会するのを楽しむような本です。 あくまでも「ツ、イ、ラ、ク」のサイドストーリーだと感じました。 短編としてこの本だけを読むと、それぞれの短編に断片的に出てくる「ある事件」がどういう風に感じられるのかな?

それにしても著者の「文庫本あとがき」は書かなきゃよかったのになあ…。 姫野サンは「ツ、イ、ラ、ク」で直木賞がとれなかったのがそんなに悔しかったのかぁ。 自嘲気味に「権威とは無縁の、功成らず名も遂げず三十年を過ごした小説家なわけです」と書いてあるのを読むと、10数年前には姫野サンの熱心な読者だったワタシは「そんなにいじけなくても」と言いたくなりました。 確かに、姫野カオルコがなんの賞ももらっていないのは意外な気がしました。 もっとつまんない小説で直木賞をもらってる人もいますからね。 ふてくされずに独特の毒をもった小説をこれからも書いていって欲しいです。 恋愛小説があまり心に響かなくなってしまったワタシは読まないかもしれないけど(ゴメン)。

10.1ハート茸

雨上がりの庭で蚊と戦いながら撮った1枚。 薄暗いところにハート型みたいなキノコが生えていました。 前夜の雨がたまっていてかわいい。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する