おとなになって気づくこと 恩田陸「黒と茶の幻想」

リンクさせていただいている「P&M Blog」のpiaaさんが書かれたレビューに興味をひかれて、恩田陸「黒と茶の幻想」を手にしました。 ワタシにとっては初・恩田陸です。 恩田陸は人気作家過ぎて気後れしてしまい、今まで読まずにいたので、いい機会になりました。 おもしろく読みましたが、感想の書きにくい作品です。 

11.11黒と茶の幻想

大学時代の友人である男女4人が、30代後半になって一緒に屋久島の縄文杉を訪ねる旅を描いた小説です。 全編に小さな謎が散りばめられてはいるものの、ミステリではありません。 4日間にわたって深い濃密な森を歩き、だらだらと4人のおしゃべりが続くばかり。 それでも、ちゃんと読ませてしまう筆力はなかなかなものです。 他愛ないおしゃべりの断片、息苦しいほどの緑に囲まれて歩き続ける身体感覚、圧倒するほどの屋久島の自然…読みながら、主人公たちと同じように、いつのまにか自分まで心の奥底、記憶の闇の中をのぞきこんでしまうようで、ワタシは読むのに結構時間がかかりました。

小説は4部構成で、旅のメンバーひとりずつが語り手になりつつ、旅を時系列で追うという凝った作りです。 かなり大きなウェイトを占めていた謎は第3章で説明されてしまい(それが真相かどうかはまた別のこと)、最も客観的な立場にいた節子が語り手になった第4章を迎えます。 どんな終わらせ方になるのか?と思っていましたが、最後が節子になったことで、読後感がとてもよくなっていました。 過去の恋愛感情をそれぞれ胸に秘めつつ、おとなとして相対する距離感は、誰でもどこかで体験しているもの。 ほろ苦さ、腹立たしさ…生々しく追体験するような感覚になる部分もありました。 おとなになることで失ったものもあるけれど、おとなになったからこそ気づくこともある。 おとなになることに否定的でないスタンスがよかったです。 旅の終わりは、意味もなくみんなで大騒ぎしながら飲んで、そのまま24時間営業のコーヒーショップで朝を迎えた学生の頃をふと思い出したりしました。

ただ、全編にウンチクというか雑学の数々を盛り込んでいるのは、個人的にあまり好きではありませんし、自然の情景描写もあまりにも書きこみすぎて冗漫になっている気がしました。 屋久島を「Y島」、縄文杉を「J杉」と表記している意図も??(素直にそのまま書けばいいと思うのですが)。 piaaさんも書かれているように、第2章はちょっと違和感がありました。 無理やり「謎解き」にしようとしすぎたような。 結局、この作品は気に入ったとも気に入ってないともいえず…なんだか微妙。 恩田陸と同じ1964年生まれ前後の人なら、「懐かしいあの頃のメンバーで旅をしたら…」という疑似体験ができそうです。

11.11クチナシの実

庭ではクチナシの実が色づいてきました。 今年は石榴も花梨も柿もクチナシも大豊作です。 毎朝、ヒヨドリとメジロが柿の食べ頃チェックにやってきますが、突っついて食べたのは1個だけ。 まだ収穫期ではないようです。

コメント

そうそう、確かに非常にうまく書かれていますし面白かったけど、傑作だ、大好きという感じの作品ではないですよね。

この小説のような旅行は、一般的にはありえないと思います。ましてグループとはいえ元カレ、元カノが混じっているなんて。今では本当になんとも思ってなくても敬遠するでしょう、普通。ですからこの作品、設定自体がファンタジーなんですよね、ある意味。

Y島、J杉と地名などを伏せたのは、実在のものの中に「三顧の桜」という架空のものが混じるのを懸念しての事ではないかと考えました。

2007/11/12 (Mon) 23:59 | piaa #- | URL | 編集

piaaさん、目からウロコのコメントをありがとうございます。
この小説は確かにファンタジーです!
Y島、J杉の表記についても、piaaさんの指摘されるとおりですね。 なるほど~と深く納得してスッとしました。

おもしろいけど大好きという感じじゃない…こんな不思議な読後感を残す本も珍しいですね。 読まず嫌いしていた恩田陸の小説に触れられてよかったです。 ありがとうございました!

この小説はとても映像的なんだけれど、映画というよりは舞台劇みたいな感じを意識して書いたのかも…と、ふと思いました。 4人が饒舌すぎるから、そう感じたのかな?

2007/11/13 (Tue) 00:20 | vogel #9JN9NMwM | URL | 編集

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