古き良きアメリカへの郷愁 ボブ・グリーン「ABCDJ」

5歳の時に出会った生涯の親友が、57歳で癌宣告を受けた―――ボブ・グリーン「ABCDJ」は、かけがえのない友人が亡くなるまでの1年足らずの日々を、名コラムニストが愛惜をこめて刻んだノンフィクションです。

11.24ABCDJ


400ページを越える長編は、少しずつ状態が悪くなっていく友人を見舞って語り合う現在と、子ども時代のエピソードで埋め尽くされています。 死を宣告された親友と過ごす時間を記録したものですが、グリーンの語り口はワタシがかつて読んだコラムよりもずっとサラリとしていて、悲しいながらも絶望的な暗さはまったくありませんでした。 子ども時代をともに過ごした故郷の小さな町を並んで歩きながら、目に留まる街角の店の1軒1軒、足元の枯れ葉1枚、窓から見える風景…ごくささやかなものにも、小さな思い出を共有しているボブとジャック。 お互いをとことん知っている二人だからこそ、つまらない励ましの言葉など口にせず、ただ少しでも多くの時間を一緒に過ごそうとするボブ。 冷静な文章がかえって内面の辛さを伝えて心を打ちます。

それにしても、この本は読むのにものすごく時間がかかりました。 非常に辛いことがテーマなので、ある程度は覚悟していましたが。 危惧したほど暗い気持ちにはなりませんでしが、一気読みするような内容ではありませんし、またこの本に書かれた過去の情景はアメリカ人にとってはたぶん胸を締めつけられるような郷愁を誘うのでしょうが、日本人にはそこまで感情移入できないエピソードがとても多くて。 子ども時代のいたずら、幼稚園の優しい先生の記憶、お母さんが焼いてくれたクッキーの匂い、子どもにとっては英雄だったスポーツのスター選手が平凡な店員になっている姿をみて感じたショック、禁止されているからこそ興味をかき立てられたアルコールやピンク映画、別々の大学に進んだことでそれまでの一体感が変質したことに気づく寂しさ…普遍的な友情のあり方もたくさん描かれていますから、不満というほどではないのですけれど。 でも、400ページはやっぱり長すぎるかも…読んでいて、途中でだれました。

ボグ・グリーンはコラムニストですから、短い文章の中でこそキラリと光るセンスが感じられる気がしました。 最近すっかりご無沙汰しているうちに、グリーンはコラムよりも長編が主体になっていたのですね。 今回この本を読んでみて、グリーンらしさが発揮できるコラムの方がやっぱりいいと感じました。 むかし、何度も読んだコラム集「チーズバーガーズ」を再読してみようかな。 ささやかな人生のたったひとこまを切りとって、そこに温かな光を当てるグリーンのコラムはとてもステキでしたよ。

そうそう、この本を読んで一番すばらしいと思ったのは、実は駒沢敏器さんの翻訳! 硬すぎず崩れすぎず、コラムニストとしてのグリーンの個性を巧みに日本語に置き換えてある文章は、翻訳とは思えないほど自然で、すごくよかったです。

11.24小菊

野紺菊が盛りを過ぎて、だんだん寂しくなってきた庭では小菊がポツポツ咲いています。

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