理屈っぽさが気になる 上橋菜穂子「精霊の守り人」「闇の守り人」

ネット上で大評判の上橋菜穂子の「守り人シリーズ」。 ファンタジーに興味がないのに、なんとなく気になって最初の「精霊の守り人」を読んだのは昨年の夏のこと。 父の入院騒ぎで感想を書かないまま、12月に「精霊の~」よりもさらに評判のいい「闇の守り人」も読了。 でも、今度は自分が体調不良でまた感想が書けないまま…。 なんで、こんなに放置したかというと、実は世間の評価とは正反対にワタシ個人の好みに合わなかったというか、あんまりピンとこなかったからです。 「守り人シリーズが大好きで、批判なんて読みたくないッ!」という方は、これより下はお読みにならないように。

9.14精霊の守り人 1.13闇の守り人


シリーズを通じての主人公バルサ(30歳)は、類いまれなる槍の使い手で、修羅の道を歩かざるをえなかった宿命を背負って一人で生きる女用心棒。 「精霊の守り人」では、たまたまある国の王子チャグムを助けますが、チャグムは水を守る精霊の卵を産みつけられ、そのことで父王からも命を狙われる立場になっていました。 妃からチャグムを託されたバルサは、チャグムを連れて命がけの逃避行に…。 「闇の守り人」はその続編とはいっても、チャグムのエピソードとは関係がなく、バルサが自らの忌まわしい宿命と向き合うために故国へと旅立ちます。 しかし、伝統の秘儀の場でバルサを待っていたのは、思いもかけない対決だった…。

起伏のあるストーリーで結末が気になるので、それなりにおもしろく一気に読めました。 ハイ…おもしろくなかったわけではありません(←ややこしい言い方ですけど)。 でもねえ、何か喉に刺さった小骨のような違和感が、読んでいる間中つきまとったのです。 このシリーズの世界観がピンとこなかった原因のように思えます。

日本人が書いているファンタジーが、架空の国や人名をカタカナで表記することへのかすかな違和感というか…舞台背景は日本や韓国・中国を思わせるアジアっぽい風土でありながら、そのどれでもないことのモヤモヤした感じ(架空の国という設定なのだから当たり前なんだけれど)。 そして、著者が文化人類学者(たぶん)だから、さまざまな歴史的・文化人類学的なエッセンスを元にして物語を構築している点が、物語世界に無心で入りこむことを邪魔していました。 「精霊の守り人」を読んでいると、縄文人と弥生人、あるいは倭人とアイヌ人のせめぎ合いとか、統治者の都合にいいように歪曲される神話(どことなく日本書紀を思い起こさせる)や伝承といったことが、架空のはずの物語の裾からチラチラ見える下着みたいで(へんな比喩ですけど)気になって気になって(笑)。 「闇の守り人」になると、ほのかにギリシア神話の香りまでしてきて…(ワタシの気のせいかもしれないけれど)。 それに加えて、「絶対的な悪」と「絶対的な善」を分けないように書こう、という配慮が、小説のラフスケッチそのものを目の前に広げたように、行間からありありと読めてしまったのです。 全体的にとても「人工的な」感じが漂っているんです。 この感覚が「作り話」であることを忘れさせてくれなかったのではないかと思います。

とはいえ、ネットで大評判の「風の影」もあまり気に入らなかったし、ワタシの感覚が世間一般からずれているのかもしれません。 読んで損をした!と思うような本ではないので、気になる方は読んでみてください。
 
1.13オキザリス

昨夜は、後輩のお通夜で再会した懐かしいメンバーで夜遅くまで話しこんで、あやうく終電を逃しそうになりました(汗)。 奥さんや中学・高校生子どもさんが泣いている姿を見るのは辛かったですが、こういうことでもなければ決して会えない懐かしい顔が揃って、亡くなった彼がみんなの縁をつないでくれたのだと思いました。 ありがとう。

夜が遅かったわりに今朝は目覚め爽やかで、散歩がてら図書館まで徒歩で往復。 すたすた早歩きで70分、おまけに帰りはずっとダラダラ上り&借りた本でずしりと重いかばんを持って。 冷たい冬の空気が心地いい散歩でした。 女子駅伝の中継点近くの裏道を歩いていると、まだ1時間半ほどあるのに、ウォーミングアップしている選手があちこちの角から姿を現して、あっという間に軽やかに駆け抜けていきました。 あんなに軽く走れたら、どんなに気持ちいいだろう。

コメント

わかる気もします

 こんばんは、vogelさん。
「守り人シリーズ」イマイチだったみたいですね。私はとっても好きなので残念ですが、おっしゃることわかる気がします。まあ「あざとい」ってことでしょうかね?そういわれればそういう気もします。確かに。
私は結構理屈っぽいものが好きで、なんとな~く書いてる小説が苦手なんです。(空想的ならとことん空想的な方がいい)ので、vogelさんの気になったところが好きなのかも。ミステリみたいに謎解きがあるのも好きだし。でもこれもファンタジーっぽくはないかもですね。

2008/01/15 (Tue) 21:47 | ぎんこ #emXmKJzE | URL | 編集

ぎんこさん、こんばんは。
さっきホームページを拝見したら、な、なんと!!
ぎんこさんの2007年ベスト本を…ワタシったらこんなにあけすけに…失礼しました。
外国のファンタジーだって、たぶんアーサー王伝説などを下敷きにしているんでしょうけれど、自分にそういう知識がなければ全然気にならないと思います。 なまじっか知識が少しだけあるから、ひねた読み方をしてしまったのかもしれません。

ぎんこさんとは真反対に、「なんとな~く書いてる」ような、曖昧な部分のある小説がワタシは好きなんですね、きっと。
でも、ぎんこさんの読まれる本にはいつも刺激を受けているので、これからもホームページで紹介される本を楽しみにしています! まずは「ベルリン三部作」を読んでみたいです。

2008/01/16 (Wed) 00:30 | vogel #9JN9NMwM | URL | 編集
気にしないでくださいね

 vogelさん、ぜんぜん失礼じゃないですよー。
本なんて所詮好みの世界ですから。完全に趣向が合う人なんていませんしね。
「ベルリン三部作」は、面白かったですよ。vogelさんはドイツ方面がお好きだし、いろいろとまた感じるところが違うかもしれません。ぜひ「1919」からお読みください。ドイツ革命について書かれていますが、ここから読むとドイツがなぜそうなったのか、よくわかると思います。

2008/01/16 (Wed) 23:07 | ぎんこ #emXmKJzE | URL | 編集

ぎんこさんにかえって気をつかわせてしまって…恐縮です。
「ベルリン三部作」はそんな本があることすら知らなかったんですが、読み物としておもしろそうだし、ドイツ近現代史の勉強にもなりそうだし(実はドイツ文学もドイツ史も疎いので)、ぎんこさんの感想を拝見して「これは読まねば!」と今年の課題図書入りしています。

2008/01/17 (Thu) 00:17 | vogel #9JN9NMwM | URL | 編集
わたしも上橋さんの作品は……

こんにちは。
はじめまして。

わたしも上橋さんの作品は頭でこねくりまわしたお話であまり好きではありません。
でもネット上では、批判することは許さない、という空気が流れていて、すごく嫌です。

新作の鹿の王もウィルスに興味があるなら論文書けばいいのにー。と思ったり
不妊の女との会話も、子孫繁栄でかたづけられちゃって。いやいや、子どもが欲しいって、言葉ではいいあらわせない欲求なんですけどって思ったり。

こうして、ちゃんと文章にしてかいてくれてありがたかったです!

2016/09/13 (Tue) 08:23 | かなごん #- | URL | 編集
感じ方は人それぞれですよね

かなごんさん、はじめまして!

昔の本の感想にもコメントいただけてウレシイです。
かなごんさんもなんとなく肌に合わなかったのですね。

小説の感想なんて人それぞれですよね。

この小説世界が大好き!という人がいるのはまったく不思議ではないのですが、なぜこれほどまでに大ヒットしたのか、私にとっては「?」です。

先日、3人で雑談していたときに「このシリーズが大好き」という人が1人いて、私ともう1人は「あまり合わなかった」という話にたまたまなりました。 児童文学に詳しい方の「予備知識なしのまっさらな状態で読む子どもにとっては、とっても楽しくて夢中になると思うよ」という言葉になるほどと思いました。

いろいろ文句つけつつも、NHKで映像化されたドラマは森や山の風景のロケ撮影がとても美しく、かつ綾瀬はるか狙いで(笑)楽しくみました。

かなごんさんはどんな本がお好きなのかな?
また、おすすめの本があったら教えてくださいね。

2016/09/13 (Tue) 23:10 | vogel #9JN9NMwM | URL | 編集

なんとなく検索したらここのブログに行き当たって、「なるほど」と思いました。
ファンタジーは好きだし、神話や伝承になぞらえるのも露骨でなければアリだと思います。
私が引っかかるのは東洋ファンタジーっぽい感じですがカタカナだらけで、どうにも売れ行き的な意図を感じてもやもやします。
あと家族関係や倫理観のアピールみたいな部分がちょっと過剰だし苦手でした。
そういう所を挙げていくと、古風さ、西洋との異質な世界の描き方があなたの仰った『人工的』に繋がるのかなと思いました。
色々な世界をごちゃ混ぜにしていて、それでかなり古典的な王道ファンタジーなので、もうちょっと観念に囚われないものを読みたいなと感じます。色々な意味で大人向けかなと思いました。

2017/09/19 (Tue) 18:40 | りん #- | URL | 編集
りんさんへ

りんさん、はじめまして!

お返事がとっても遅くなって本当にごめんなさい。
コメントいただけてうれしいです。

このファンタジー、モヤモヤしますよねえ。
りんさんにまったく同感で、普通は神話になぞらえていても気にならないんですけど、これはなんだか違和感があって、小説世界に全然入りこめませんでした。
でも、ネットでは大絶賛の嵐で、自分の感覚がおかしいのか?と思ったりして。
共感してくださる方がいて、ちょっとホッとしました。

確かに「観念的」なんですよね。 この著者の本はもう読まないと思います。

りんさんはどんな本がお好きなのでしょう?
また、おすすめの本があれば教えてくださいね。

2017/09/27 (Wed) 00:06 | vogel #9JN9NMwM | URL | 編集

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