お父さんの手の温もり 角田光代「キッドナップ・ツアー」

角田光代の小説はときどき読んでいますが、「キッドナップ・ツアー」はまったくノーマークでした。 ところが、「P&M Blog」のpiaaさんに角田光代をおすすめしたら、この小説を読まれて焦りました。 すすめておきながら、読んでないし。 以前は児童文学ということであんまり興味をひかれなかったんですが、表紙を見たらなかなかいい感じ。

11.18キッドナップツアー

夏休みの初日、いつのまにか家に帰ってこなくなっていたお父さんに「ユウカイ」された小学校5年生の女の子ハル。 両親の間に何があったのか分からないまま、お父さんに連れられてあちこちを転々とするうちに、少しずつお父さんとの距離が縮まっていき…ハルのひと夏の冒険をみずみずしく描いています。

全編を通してハルの視点だけで語られているので、表現はとても平明で読後感がいいです。 でも、ところどころ、家族という単位の不確かさなど、深いことにさりげなく触れているのは、やはり角田さんらしい。 これだけ簡単な言葉で深いことを表現できるのはすごいなあ。 それに、ハルの感覚がとてもリアル。 ああ、子どもの頃ってこんなこと考えてたなあ、と懐かしく思い出したりしました。 どうしようもなくダメなお父さんなんだけど憎めない。 ハルと手をつなぐシーンが何度も出てきて、読んだ後も心の中に、お父さんの手の温かさが残っているように感じられました。 解説の重松清自身が書いているように、お父さんが最後までかっこよくならず、教訓を垂れたりしないところが角田さんですね。 この小説は児童向きというよりも、実は「娘を持っているお父さん」向きかも。 近頃、あんまり娘が口をきいてくれないなと寂しく感じている世のお父さんにおすすめの1冊です。

角田光代の作品は苦い読後感を残すことが多いのですが、これは落ちこんだときに読んでも大丈夫。 いまのところ、角田さん作品のマイベストは「八日目の蝉」ですが、この本も悪くなかったです。

11.19ヤツデ

今日はホントに急に寒くなりました。 いきなり冬…ぶるぶる。
Category: 角田光代

コメント

そうそう、ハルの語りの、妙なクールさがリアルに子供っぽくていいですよね。
子供って子供騙しな物はよく分かっていて、それを嫌悪したり、でも違う時にはそれを甘んじて受けてあえて子供を演じたりします。そういう感じが、ハルの語りにはしっかり表現されていてすごいと思いました。

2008/11/21 (Fri) 00:11 | piaa #- | URL | 編集

そうなんですよね、piaaさん。
よく子どもの心の動きをこんなにリアルに描けたなあと感心します(角田さんは子どもがいないのに)。 そういえば子どものときって、大人とは違った感覚でこんな風に周囲のことをとらえていたなあ…と、この本を読んで思い出したことがいろいろありました。

2008/11/21 (Fri) 16:04 | vogel #9JN9NMwM | URL | 編集

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