同時代を生きる作家だから 角田光代「薄闇シルエット」

またまた角田光代の小説です。 図書館でフェルトの技法書を借りるついでに予約しました。 ずっと前から気になっていたんだけれど、なかなか文庫化されないもので。 先日読んだ「Presents」ほど直球勝負ではないけれど、なかなかよかったです。

1.20薄闇シルエット

下北沢で古着屋を友人と共同経営する37歳のハナが主人公。 楽しんでできる仕事は順調、稼ぎも同い年のOLよりはいいハナ。 現状に満足していたのに、恋人から「結婚してやる」と言われたことに違和感を覚え、自分の現状を客観的に見つめ直すうちに…。

親しい友人が結婚をしたときに味わった、たったひとりで取り残されたような寂寥感。 満足しているはずの自分の仕事が急にやけに小さく思えた瞬間。 突然気づいた、自分の未来が狭まっていくような焦燥感。 仕事で成功していく友だちに感じるかすかな嫉妬。 圧倒的な創造力を持った人物を前にして感じる憧れと敗北感。 いままで「自分の力でやってきた」と思っていたのに、よく考えてみると行動力のある友人に引っぱってもらっていただけであることを認識して呆然とする感覚。 豊かな母性を盾に娘をコントロールしているかのような母に対する複雑な気持ち。

読んでいる間ずっと、女性なら誰でもが知っているであろうリアルな感覚を味わいつつ、ハナと一緒に立ち止まり、これからの人生に惑いました。 壮大な物語ではありません。 どこにでもいるような女性が「自分のこれから」を前に右往左往する平凡でささやかな物語です。 読んだからといって、惑っている自分が出口をみつけられるわけでもありません。 具体的な解決があるわけではないけれど、最後はハナと一緒に「自分で自分の人生を歩んでいくしかない」と納得できました。 ハナがたどり着いた心境は数年前のワタシが思ったこととまったく同じでした。 ああ、しかし。 アラフィフ(近頃は「アラハン」というらしいけれど)になっても、やっぱり何もつかんでいないワタシはどうすればいいのやら…。

この本の後に読んでいる「刺繍」という小説がすごく胸に迫るものがあって、それに比べると小説としては小さく感じられて、めちゃくちゃおすすめ!とまでは言えません。 それでも、アラフォーで独身で仕事をしている人だったら、たぶんものすごく共感するところがたくさんあると思います。

でも、カクタさんのマイベストはやっぱり「八日目の蝉」です。 母に先日貸したところ、病院の待合室で読み始めて止まらなくなって、そのまま一気読み。 80歳の母も鼻をぐじゅぐじゅいわせながらむさぼるように読んで「おもしろかった~」と余韻に浸っております。 「角田光代なんて知らない」という方は、ぜひ「八日目の蝉」を読んでみてください。
Category: 角田光代

コメント

Vogel さん、こんばんは^^先日は訪問ありがとうございました。コメントとても嬉しかったですぅ♪わたし角田さんの本読みたい読みたいと思いながらも未だ一冊も読んでいないのです;今日も本屋さんでウロウロ。でも今決めました。「八日目の蝉」読みます(笑)

2009/01/31 (Sat) 20:04 | 天然うらら #- | URL | 編集

天然うららさん、こんばんは。
うららさんが再開されたブログを読んで「みんな、それぞれにたいへんなんだなあ」と、夜更けにひとりしみじみしました。
あんまりがんばりすぎず、自分をいたわる時間も持ってくださいね。 陰ながら応援しています。

カクタさんは読む小説を間違える(?)と、読後にドヨーンと重くて苦いものを抱えこんだ気分になることがあるので(駄作という意味ではなくて)、そのときのコンディションに合わせて慎重に選ばないとダメなんですよ。
その点、「八日目の蝉」なら大丈夫。
ぜひぜひ読んでみてください!
カクタさんの中ではちょっと異色作なんですけどね。

2009/02/01 (Sun) 00:04 | vogel #9JN9NMwM | URL | 編集

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する