「上野伊三郎+リチ コレクション展」@京都国立近代美術館

信じられないほど過酷な日程の仕事が終わって、やれやれです。 終わってしまえば「喉元過ぎれば熱さを忘れる」のことわざ通り、しんどいこともケロッと忘れてしまえます。 無駄にダラダラと時間をかけるよりは仕事効率がよくて割のいい仕事だったのかも。 完成度にこだわりすぎると、自分を追い詰めるだけなので、近頃は割り切るようにしています。 やっとワタシも大人になったのか、ただのおばさんの感覚になったのか。

沸騰した脳みそを冷ましたくて、ぶらっと思いつきで美術展に行ってきました。 今日はストーリーのある映画よりも、美術館でキレイなものをぼんやり眺めたい気分だったのです。 あまり期待もせず、京都国立近代美術館の「上野伊三郎+リチ コレクション展」へ。 だって、上野伊三郎って誰?というくらい未知の人。 でも、予想よりずっと楽しめました!

2.6上野リチ展

上野夫妻のことは名前も聞いたことがなかったんですが、大正から昭和にかけて京都にこんな国際的なカップルがいたなんて驚きました。 上野伊三郎は京都の宮大工の家に生まれ、早稲田大学を出た後にベルリンやウィーンでさらに勉強を続けた建築家。 奥さんとなる工芸デザイン家リチさんとは、ウィーンで在籍していた建築事務所で知り合ったそうです。 結婚を機に京都へ帰ってきて、ご主人が設計した建築の内装を奥さんが担当したり、2人揃って京都市立芸大で工芸デザインの講師を務めたりしたとのこと。 昭和の初めにウィーンからやってきた女性という経歴だけで、想像力を刺激されました。 当時、ウィーンから京都へ来たら、どんな感じがしたんでしょう? でも、意外に違和感がなかったかもしれません。 ウィーンと京都、どちらも美術工芸が盛んな古都ですし。

上のチラシはリチのデザインした壁紙(たぶん)。 大好きっていうのともちがうんだけど、ワタシの中にはなかったデザインと色彩感覚ですごく気になる。 現代でも十分通用するセンスです。 こんな包装紙を売っていたら、即買ってしまうワ、きっと。 復刻したらいいのになあ。 今回の展覧会は異様に分厚い図録しかなくて、葉書もナシ。 がっかり。 図録がものすごく欲しかったんだけど、厚すぎ! 置くところがない(涙)。

2.6上野リチ展2

リチは壁紙だけでなく、テキスタイルや七宝のデザインも手がけていました。 上の写真は自分で作ったもののようでした。 女の子がカワイイ。 アクセサリーのデザイン画もかわいかったです。 展覧会全体は伊三郎の建築そのものが何も残っていないため、わずかに竣工当時のモノクロ写真と図面があるだけで、奥さんのリチの作品がメインでした。 リチの作品はどれも、ウィーンの19世紀末ユーゲント・シュティール(アール・ヌーヴォーとほぼ同じ美術スタイルだけれど、ワタシの個人的な印象では植物を多用しながらも、アール・ヌーヴォーよりはもう少し幾何学的なアレンジをしている気がします)をベースに、京都に住んだことで和の色合いも加わっているように見えました。 リチだけの作品集があったら買いたいなあ。

2.6上野リチ展3

伊三郎の設計した家。 1929年にこんな家を京都で建てたの! バウハウス的なモダンな家ですよねえ。 父親にパンフレットのこの写真を見せながら「こんな家、どこに建ってたのかなあ」と言ったら、「へえ、その家はすぐそこに建ってたよ」ですって。 ビックリ。 母がのぞきこんで「あ、その建物、あんたが生まれた病院の本館じゃない?」 えっ、さらにビックリ!! 個人の住宅だったものが、戦後直後は進駐軍に接収されて(すごい歴史だ)、その後はアメリカ系の病院になったんだそうです。 写真をジーッと見ると、なるほどワタシが嫌ほど小児科に通った頃の建物の面影が。 最近になって、この建物は完全につぶして新館が建ってしまったんですけど。 意外なところで再会して本当に驚きました。

伊三郎の建築は当時としては超モダンですが、内部はリチの有機的な壁紙などを使って、バウハウス建築とは違った方向性を持っていたそうです。 2人の合作だった「スター・バー」は、現在みてもカッコいい。 モノクロ写真なのが残念でした。


展覧会は2月8日(日)までです。 上野伊三郎って誰?という人でも、気軽に楽しめる展覧会ですよ。 迷っている方はぜひ行ってみてください。 春には東京へ巡回するようです。
Category: 展覧会

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する