映画へのオマージュ ポール・オースター「幻影の書」

いろいろあって集中して読書できない状態でずいぶん時間がかかりましたが、ポール・オースター「幻影の書」をようやく読み終えました。

4.4幻影の書

ある事件をきっかけに生きる気力を失っていたデイヴィッド。 他人との接点を失い内にこもっていた男は、ふと目にした無声の喜劇映画に救われます。 ひさしぶりの笑い…自分はまだ笑えたのか? そこから、映画に主演していた俳優ヘクターの足跡をたどる長い旅が始まります。 無声時代が終わると同時に、神隠しのように関係者の前から忽然と消えたヘクター。 彼はなぜ消えたのか? 彼は死んだのか?…

オースターらしく入れ子式の構成で、デイヴィッドの人生と、忘れ去れた映画スターの人生とが交差していくストーリー展開がとても巧みです。 そして作中に登場する映画について詳細に描写されているところに、オースターの映画への愛を感じさせます。 そのため、映画にまったく興味がないと、映画について延々と語られる場面は退屈かもしれません。 昔よりもいろんな映画をみるようになって、つくづく映画と小説は似ているなあと思っています。 説明的な台詞ではなく、さりげないエピソードやシーンで感じさせる手法は同じですよね。

4.4苔の花

オースターはやっぱりおもしろい。 最近のオースターはより洗練されて、より普通の小説っぽくなってきていますね。 そのことでぐっと読みやすくなったようで、(贅沢をいってもいいなら)ほんの少し物足りないようにも感じられましたが。 ずっと昔に何気なく手にとった「孤独の発明」に比べると、切実さがないというか…。 「孤独の発明」はまだ小説としてはまとまりがなかったけれど、書かずにいられない切実さや、キリキリと心に刺さるような孤独感(だらだら涙を流した記憶が)、そして他のどの小説とも似ていない独特さが衝撃的でしたから。  今回は読むときの自分のコンディションがよくなかったから、小説世界にのめり込めなかったのかもしれません。 読後感がいい小説でよかった…。


今日は午前中から雨で、薄暗い日でした。 こういう日を「春陰」というのかな?(今日のNHK-BS「俳句王国」のお題の季語になってました) ずっと肌寒い日が続いていましたが、明日からは暖かくなるとか。 そうなると染井吉野もいっせいに満開になりそう。 

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