若さゆえのきらめきと傲慢と 映画「イントゥ・ザ・ワイルド」

昨年、劇場公開されたときに「みにいこう」と思っていたのに、あっというまに打ち切りになってしまった映画「イントゥ・ザ・ワイルド」。 この映画の監督ショーン・ペンが主演した「ミルク」がアカデミー賞をとったのにともなってリバイバル上映され、ようやくみることができました。 こういう広大な自然を舞台にした映画は、やっぱり劇場の大きなスクリーンでみたいので。

4.19イントゥ・ザ・ワイルド

みたいようで、ためらう気持ちが強かったのは、放浪の旅の末、アラスカの荒野で孤独な最期を迎えた青年の実話を映画化した作品だと聞いていたから。 ハッピーエンドじゃないことが最初からわかっていて2時間30分もの長い上映時間に耐えるような内容なのか?という疑問があったんです。 しかし、みはじめたら全然「長い」と感じさせない映画でした。 とはいえ正直にいえば、冒頭のアラスカのシーンで「ひょっとして、このバカな青年の無謀さに2時間半もつきあわされるのか」とうんざりしかかったのですが。 主人公の無謀すぎる装備をみた時点で、かつて登山にはまっていたワタシは「ありえない!」と胸の中でつぶやいてました。 この主人公の足跡を追ったノンフィクション本がアメリカでベストセラーになっても、アラスカの人たちにはとても評判が悪かったそうですが、それはそうだろうなあと納得。 地元の人にとっては「自然をなめている」としか言えないでしょう。 その死でアラスカの大地を汚したと感じた人もいただろうと想像できます。

それでも自然の描写がすばらしく、放浪の中でさまざまな人たちと出会っていくエピソードがとても温かく描かれていて、映画としてはすばらしい出来だと感じました。 主人公が日記に書きこんでいる字をスクリーンにだぶらせたり、妹が兄を回想するナレーションで家出の背景を説明させたり、主人公が自分で考えた新たな名前を鏡に口紅で書くシーンなど、演出がとてもセンスがあっていいなあと、一番心に残ったのは監督としてのショーン・ペンの手腕だったかも。 ラストは辛い現実なんですが重苦しさはなく、不思議な余韻を残す映画でした。 ただ、「放浪の旅なんてまったく憧れたことない」という方はまったく理解不能でしょうから、みなくていいですよ。

4.20稚児百合

とても好きか?と問われると、う~んと考えこんでしまうのですが、みてよかったと思いました。 繊細な魂の彷徨がいきついた結末がねぇ、やりきれなくて…若くてキラキラしていて、理屈ばっかりが先行して愚かだなあ、と中年と呼ばれる年齢になっているワタシは理性的に思いながらも、キラキラがまぶしくもあったりして。 主人公が傍目には何不自由ない裕福な家庭に育ちながら、名前もお金も、そして輝かしい未来へと続くハーバードの法科大学院への進学も含めて、両親から受け取ったすべてを捨て去りたいと感じた理由が劇中で明らかになってくると、主人公の選んだ道に共感はできなくても(物質社会への反発はよーくわかりますが)、「繊細だったから深く傷ついたのだろうなあ」と理解することはできました。 エンディング間近にあったように、本当は両親からの偽りのない愛情を一番求めていたんだろうなあ。

みた人の年齢によると思うのですが、ワタシは主人公の孤独な最期よりも、知り合ったヒッピーカップルの女性が音信不通の息子を重ね合わせて涙する別離のシーン、道路で呆けたように涙するお父さんの姿が目に焼きつきました。 戻ってくることはできなかったけれど、彼が最後にたどりついた英知=生きる意味のひとことは、ほんとうにその通り。 ショーン・ペン監督は若者にそういうメッセージを送りたかったのだろうな(演出が違っていたら、この青年はただのバカにしか見えません、たぶん)。
Category: 映画

コメント

観たいような観たくないような

v-535おはようございます。
主人公役の彼が好きなので、観てみたいなぁと思っているのですが、結末が結末なので躊躇しています。
彼、「ミルク」にも出ているので、ショーン・ペンに気に入られたのかな?と勝手に想像。
(あ、「ミルク」の監督はガス・ヴァン・サントです。辛い結末が嫌いな私なのにすっごく好きな「エレファント」の監督さんです。)

2009/04/21 (Tue) 07:12 | とりほ #t50BOgd. | URL | 編集

とりほさん、ご指摘ありがとうございます。
「ミルク」の監督を思い違いしてました(汗)。 直しておきます。

主人公を演じたカレがお好きなら、ぜひみてください。
いい感じでしたよ、カレ。
まじめで、でも繊細すぎない素朴なかわいげがある青年を好演していました。
なんか不思議なんですけどね、この映画は暗くないんですよ。
とりほさんと同じように「結末がなあ…」と迷ったんですが、雄大な自然が美しいロードムービーで、後味は悪くなかったです。

2009/04/22 (Wed) 00:27 | vogel #9JN9NMwM | URL | 編集

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する